第6話 驚愕!ミカンのスキル
いつも読んで頂きありがとうございます。
街を出てから約15分。
「あとチョッとでゴブリンの溜まり場に着くぞ!」
「作戦は?お兄さん?」
「言い直さないんだ…」
「もう、面倒だからお兄さんのままでいいかなって」
「ま、好きに呼んでくれ!」
「それで?作戦はないの?」
「作戦かぁ…作戦ならあるぞ」
「どんな?」
作戦など無かったのだがミカが気になる様だったので、適当に答えてやった。
「ミカちゃんが突っ込んでゴブリンの気を引く!そして俺が弓で射貫く!最後にダメ押しで咲耶ちゃんの魔法でズドーンって作戦だ」
「それだけっ?」
「あぁ、それだけ」
「あたしの使えるスキルは隠蔽だよ?」
「へ?」
「だから、隠蔽!敵に気付かれずに近づいて抹殺するやつ!」
「確殺が条件じゃねぇか…」
「じゃ投擲すればいい?命中率メッチャ悪いけど」
「私が魔法で注意を引きますか?」
「いや、それだとミカちゃんやる事無くなるから…とりま、投擲でも隠蔽でも何でも良いからゴブリンの気を引いてくれればいいよ」
ま、的となるゴブリンはラビットマウスよりはデカいから投擲でもソコソコ当たるだろうと思ったのは大間違いだった。
「早速ゴブリンのお出ましだぞ!んじゃ頼むなミカちゃん」
ミカはアイテムバッグから投擲用のナイフを2本取り出しゴブリン目掛け投げた……はずだった。
「……えっとー、ミカちゃん…」
「だからメチャクチャ命中率悪いって言ったじゃん」
「いや、それ以前に見当違いな方向にナイフ飛んでってますけど?」
ミカが投げたナイフはゴブリンではなく右の林に飛んで行ったのだ。
だが、功を奏した事に林に飛んでいったナイフの音でゴブリンの意識がそちらに向いていた。
「取り敢えずゴブリンの気は引けたし良しとしとこう」
俺は弓を構えアローと念じ矢を放った。
「ギッ!ギィギァアアアー」
「咲耶ちゃん今だ!」
「はい!ファイアボム!」
火の玉が弧を描きながらゴブリンの頭上に落ち〝ボンっ〝と言う音と共に爆発した。
ゴブリンは上半身が黒焦げになって眩暈を起こしていたが倒しきれて居なかった。
俺は再び弓を構え追撃の矢をゴブリンの土手っ腹に撃ち込んだ。
「私の魔法じゃ倒せなかったですね…」
「初級魔法だし仕方ないよ」
「あたしは要らない子だねっ!」
「いや、ミカちゃんの投擲でゴブリンの意識を俺達から外せたのは大きいよ」
一応フォローしといた。
「そお?じゃ次もナイフ投げるねっ!」
「ナイフ勿体ないから、その辺に落ちてる石でいいよ」
「うん分かった、そうするっ!」
「ってか、ナイフどんだけ持ってるの?」
「んとっ、30本!あっ、でも今ので2本減ったから28本かなっ…最初は36本あったんだけどねっ!」
「ミカちゃんは命中率上げる訓練した方がいいよ」
「このゲームってさぁHPMPは分かっても、それ以外のステが見れないじゃん?」
ミカが言う様に、このNever End WorldではVITやINTなどのステータス表記が確認出来ない。
恐らくだが、より現実に近い能力成長を器用していると考えた方が良いだろう。
「数値で左右させない為だと思うぞ」
「どゆことっ?」
「私も気になる!」
「簡単に言えば…より現実に近づけてるってこと」
「うーん、よく分かんないんだけどっ?」
「従来のゲームだとキャラの強さを数値で変えられただろ!」
「うん」
「盾ならVIT上げたり、マジシャンならINT上げたりって感じで」
「そういうのが多いねっ!」
「そこを省いたらどうなると思う?」
「んー、農民っ!」
「な、なんで農民って答えになんだよ…そこは一般人でいいだろ」
「あー、そういう事ねっ!能力に差がないって事でしょ?」
〝ガサッ〝
俺達が話し込んでいた時、林から物音がした。
「ゴブリンか?」
俺は弓を構え咲耶は杖を構えた。
ミカは…何やら考え込んでいた。
「ギッ!」
[モンスターとエンカウントしました]
ゴブリンが棍棒を振り上げこちらに走り出した。
俺は向かってくるゴブリンに1発放った。
ゴブリンは一時立ち止まり矢を回避した。
「ほー、避けるか」
「ブリザード!」
直後、咲耶が氷魔法を発動させていた。
吹雪の様な攻撃がゴブリンに襲い掛かった為、ゴブリンの注意が逸れた。
俺はこの機を逃さず連射スキルを使い2本の矢を連続で放った。
矢は頭部と腹部に刺さりゴブリンは消滅した。
[ミカンのレベルが上がりました]
[咲耶のレベルが上がりました]
2人のレベルが上がった。
「あれっ?あたし何もしてないけど…」
「私の時も、そんな感じで何もしてないけどレベルが上がっちゃいましたよ」
「ま、話はレベル上げの狩りが終わってからだな」
そう言って俺達はゴブリン狩りを淡々と続けた。
俺は矢を射ち、咲耶は魔法を交互に撃ち、ミカは石を拾っては投げていた。
10体目位からはミカの投擲もヒットし始めてた。
当たる度に「よっしゃー!」などとガッツポーズしていた。
結果として、ゴブリンを23体も狩り全員がレベルアップ出来た。
俺がレベル15、咲耶がレベル13、ミカがレベル12となった。
「2人もレベル10を超えたな」
「うん、ありがとっ!」
「今回は魔石も結構手に入ったと思うぞ」
戦闘中に何度もアイテム拾得の通知が鳴っていたからである。
「何回も鳴っていましたよね」
「あーあのピロンピロン鳴ってたやつ?…あれってお金入った時の音じゃないの?」
「通貨だけじゃなくアイテム全般の拾得音だな」
「へぇそうなんだっ」
「アイテムバッグ見れば分かるぞ」
それを聞いてミカはアイテムバッグを確認し始めた。
俺と咲耶もバッグを確認した。
※ ※ ※ ※ ※ ※
アイテムバッグ(小)
◇初心者ハンターの短剣
◇ゴブリンの魔石(極小)×17
※ ※ ※ ※ ※ ※
俺は17個の魔石と4650Gを手に入れていた。
因みに咲耶とミカはこんな感じだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※
アイテムバッグ(小)
◇低級MP回復ポーション×3
◇ゴブリンの魔石(極小)×11
※ ※ ※ ※ ※ ※
咲耶は11個の魔石と4230G
※ ※ ※ ※ ※ ※
アイテムバッグ(小)
◇投擲用ナイフ×28
◇ゴブリンの魔石(極小)×13
※ ※ ※ ※ ※ ※
ミカは13個の魔石と4350G
3人でウインドウを見比べていた。
「因みに魔石売れば更に通貨を得られるからな」
「こうやって見比べて見るとアイテムはランダム配布みたいだねっ」
「通貨も固定ドロップじゃないから完全にランダムだろうな…レア泥は分からないがな」
「レアまでランダムだと寄生が増えちゃうねっ!」
『レアドロップに関して……』
――『あー、言わなくていいからな!』
『情報提供を拒むんですか?』
――『楽しみが減るだろ!』
――またしゃしゃり出てきたよ…
「そこで提案なんだが…」
「ん?なにっ?」
「なんですか?」
「いやさっ、俺達3人はPTとして固定化しないか?」
「イイねっ!」
「私も大賛成です!」
「んじゃ決まりな、それぞれフレ登録よろしくな!」
そして俺はミカにフレンド申請した。
「咲耶ちゃんよろしくねっ!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「ところでPTって何人まで組めるの?お兄さん」
「それは俺も知らねえわ…チョッと聞いてみる」
「ん?誰に?」
「あぁ、ミカちゃんは知らなかったな」
「ちゃんは要らないよっ!ミカでOK」
「あっ、私も呼び捨てで大丈夫です」
「そか、分かった…で、誰に聞くって話だが、白い空間の主にだよ」
「えっ!お兄さん話せるの?」
「Lv10になれば話せる様になるよ」
「あたしらも話せるって事?」
「再ログインすれば解放されるから」
「そんな機能があったんだっ」
「他にもあるみたいだがな…まぁチョッと聞いてくるわ」
――『どうせ聞いてたんだろ?』
『はい聞いてましたよ』
――『で?何人まで可能なんだ?』
『通常PTの最大人数は5人で、レイドPTは15人まで組めます』
「PTは5人まで組めるって分かったぞ」
「便利だねっ、白い部屋の人と話が出来るのって」
「……ま、便利なんだがね…後で分かるよ」
「じゃあ後2人は入れられますね」
「そうなるな…入れるなら盾と回復を入れたいとこだよな」
「入れるならって、盾職と回復職は絶対必要でしょっ!」
「ミカの言う通りPTには必須だな」
「じゃあ、じゃあ、街で募集するっ?」
「それもありか…」
「じゃあ善は急げっと事でっ!」
俺達はPTメンバー募集の為、一目散に街へ帰還した。