1話
寝苦しい蒸し暑い夜に外で大きな物音がした
俺はまた自販機にいたずらされては大変だと、二階の窓から店の前を見た、しかし誰かがいたずらしている訳でもない、よく見ると自販機の光に照らされ女性が倒れてる居るのが見える。
俺は甚平すがたで急いで階段を駆け下り急いで倒れて人へ駆け寄った。
そこにはどこの民族衣装なのか変わった服を着た女性が倒れていた。
「大丈夫だすか、大丈夫ですか」
やばい反応が無い、どおしよう揺すって生きてるか確認したいけど、後でセクハラで訴えられないよな、緊急事態だしょうがないと言い訳して肩をゆすった。
するとゆっくり瞼が開いた。
「気が付きましたね、大丈夫ですか病院に行くために今直ぐ救急車を呼びますからね」
やば、スマホを忘れた、こんな時に限って誰も通らない。
「大丈夫です、病院は行けません救急車よばないで」
外国人だから健康保険持ってないからいやなのかな。
「でも、このままじゃ」
「休めば大丈夫です」
「良かったらうちで休んで行くかい、男の一人住まいだけど」
「よろしいのですか、見ず知らずの私なんか」
「困った時はお互い様だ」
「すみません」
「歩けるかい?」
「大丈夫です」
ゆっくりと立ち上がるが自販機に寄りかかり辛そうにしている。
「まだ辛そうだ、良かったら肩につかまって」
「すみません」
肩につかまりゆっくりと歩きだすが、もうろうとしていて今にも倒れそう。
「ごめん、抱えて行くけどいいかな?」
「はい?」
俺は外国人女性をお姫様抱っこして運んだ。
(これは人助けで下心は無い、アラサーオヤジが照れてどうする、しかし軽いなちゃんとご飯食べてるのかな)
いったんリビングのソファーに寝かせ、和室に来客用の布団を引き、声を掛けた。
「布団を引いたのでそこで休んでください」
「すみません、お水を一杯いただけませんか?」
「今持って来ますから待っててください」
付き合いで設置したウォーターサーバーからお水を汲み、彼女に手渡した。
「ありがとうございます」
よっぽど喉が渇いていたのか、お水を一気飲みした。
「もう一杯飲みますか?」
「大丈夫です、美味しいお水ですね」
「寝るとこ用意したから、また運ぶね」
「はい、ありがとうございます」
また、お姫様抱っこで抱え隣の和室に運んだ、布団に寝かせるとすぐに寝てしまった。
(しかし美人だ目茶目茶タイプ、いったい何人なんだろう、できれば日本に良い印象を持って欲しいな)
盗まれて困る物は金庫に入っているし、美人に騙されるなら本望だ、いつもキャバクラで騙されてるからな。
しかし、久しぶりだな家に誰かが泊まるの、3年前に両親が飛行機事故で亡くなってから、この広い家に一人だからな。
ほんとこの3年間は大変だったな、両親が死んで急に後を継がなきゃいけなくなって、従業員のみんなが居なければやって来れなかっただろうな、ほんと加藤さんと翔子さんには頭が上がらない。
翔子さん、明日出勤してきて彼女を見たらお節介ババア炸裂するだろうな、先に手を打っておかないとやばいな。
翌朝、気になってあまり眠れなかったが、朝7時には目が覚め彼女の為に朝食とばブラシやタオルを用意した、外人にはやっぱりパンだよな、サラダとベーコンエッグとインスタントだけどコーンスープにコーヒーで良いかな、起こしに行くけど大丈夫かな。
「おはようございます、大丈夫ですか?」
「おはようございます、だいぶ良くなりました」
「朝食食べられますか?」
「ありがとうございます、今起きます」
ふすまを開けて出てきた彼女はとても美しい女性で見とれてしまい。
「どうされました?」
「・・・・歯ブラシとタオルを用意したので使ってください」
それから、日本のトイレは外人にはわからないだろうと使い方教え、洗面所では蛇口からお湯が出ることに驚いていた。
(しかし、白人のようだがどんな田舎で育ったんだろう、お湯が出るくらいで驚いて、でもそこも可愛い)
朝食を取りながら自己紹介をしたが、発音が良すぎてエマなんちゃらかんちゃらで最終的にエマさんと呼ぶことにした、国もたぶんベラルーシと聞こえたけど発音が良くてわからない。
よくよく話を聞くとここがどこか分からないらしい、良ければ国に帰る手助けをしてあげると話すとできればもう少しだけ、お世話に成れないか聞いてきたので、俺は二つ返事でOKをだした。
それからテレビに興味深々だったので、俺は洗い物をすませ店を開ける準備をする。
そう俺は130年続く花園酒店の店主、花園右京なのだから。
下に降りるともう翔子さんが来ている、いつも早くきてコーヒーとタバコでいっぷくしてる。
「おはよう、翔子さん」
「店長おはよう、なに寝不足?商店街の連中とキャバクラいったの」
「ちょちょっと待って、行ってないからちょっと話を聞いて」
「なになに彼女でもできた?うちの娘なんか店長より年下なのに今度二人目が産まれるのよ」
「ほんと、ユキちゃんがねーおめでとう、じゃなくて話を聞いて」
それから昨日の夜の出来事と一晩泊めたことを話した。
「ねえ、美人?」
「すごい美人」
「ちょっとちょっとチャンスじゃない店長、チャンスを物にしなさいよ、たぶん無理やり連れてこられて繁華街辺りで無理やり働かされてたのかもね、変な連中が探してるかもしれないわね」
「え、どうしょう」
「あんた男でしょ、女の子の一人くらい守ってやりなさいよ、私も協力するから、さー忙しくなるわよ、今日は加藤さんにすべて任せて、そうと決まれば店長ちゃっちゃと店開ける」
(どっちが店長なんだかわからないよ)
店は出勤してきた加藤さんと山下くんたち配送の人に任せて、二階に上がる。
「でら可愛いでねーの」
(このおばはん、興奮する方言がでる)
「あらー日本語上手ね、もう大丈夫この翔子さんにませておけば大丈夫よ」
翔子さんかぶせて話すからエマさんの声聞こえないし、若干引いてる。
俺があっけに取られているといつの間にかエマの生活必需品を買いに行くことになった。
エマは頷くだけで、翔子さんに言い包められ、当分家で生活して落ち着いたら日本語も上手だし電話番の仕事をしてもらうことになった、いかし店主としてはこんな店に二人も電話番を雇う余裕はないのだけど翔子さんエマが電話番で注文取ったらあなたは何の仕事をするのですか疑問だ。
「ほら行くよ」
「当たり前だろ、あんたが行かないと誰がお金を払うんだ、それに変な奴がいたらあんたが盾になるんだよ」
「ええーーーー」
「男だろ良いとこ見せろ、くだらないことに使うお金が有ったら人の役に立つお金を使うんだよ、チャンスなんだから」
結局俺とエマはおばさんのパワーに負け、モールまで買い物に行くことにした。
お読みいただきありがとう御座います。
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