003その子、この子。
どうも、クロジャです。
まずは謝罪を。
投稿、遅くなってすいません。書き直すのを何回もしていたら、遅くなりました。
次にお礼を。
今日、PVを見たら、何百ってあって驚きました。評価もつけて下さる方が何人もいて。
この調子で頑張るので、これからも是非。
あと、明日からの土日で、早めに。具体的には八時だいに出すか、複数投稿しますので、どちらかは分かりませんが、頑張ります。
長くなりましたが、これで終わりです。
では、どうぞ。
もういいや帰ろう、と思ったのはつい先程の話。
店長はあの後、三十分待ったのに帰ってこなかったし、時間も時間だったので、仕方なく帰ることにした。
服を着替え直し、荷物を背負い、お店を出る前に書き置きを残しておく。内容は「謝るまで許しません」の一行だけ。
再び。今度こそ、お店から出て、私は家路についていく。
空は完全なる闇。辺り一面真っ暗で街灯無かったら、多分私帰れなかったレベルの暗さ。時間も時間だし、仕方ないんどけどね。
夜道に一人だなんて久しぶりだなと思う。最近は雨倉さんに送ってもらっていたから、なんだか懐かしい気分。
私の家はお店からそんなに離れていない所にあって、歩いてニキロぐらい。だいたい私の足だと、二十五分ほど。
早く帰って早く寝たい。じゃないと、講義中に疲れて寝ちゃう。今日の先生は厳しい人だから、そんな所を見られたら、怒られた後に、今日の分を欠席にさせられてしまう..んだと思う。そこまでするかはわからないけど、少なくとも怒られることは確定してる。
早歩きから、ダッシュに変えようかとしたその時。
右の曲がり角から、女の子が凄い勢いで私の前を通り過ぎていく。しかし左には道がなく、そのまま壁に、ガーン!!と大きな音を立てながらぶつかり、その衝撃で壁からポロポロと崩れた破片みたいな物が落ちる。
壁から破片みたいなのが出てくるって、どれだけ速いスピードで走って当たったら、出てくるんだろう..。
って、そうじゃなくて!!
「だ、大丈夫?!ケガは..ないわけないよね。と、とりあえず、救急車を呼んだ方がいいのかな?!はぁ、はぁ、はぁ...。わ、私、落ち着け、落ち着くんだ..で、でででも早くしないといけないのは確かだし..一体どうすればいいの?!」
あたふたと携帯電話を出して、掛けるか掛けまいか、それとも私が連れていくべきか。それとも放っておいた方がいいのか。余計な事をしたと怒られたりはしないのか。
ぐるぐるぐるぐる、その場で回って、頭を悩ませていると、その子がゆっくり立ち上がる。
「....ぅ.......」
「え、えっと...だ、大丈夫?!」
「ーー!!うぁっ!!」
「ひゃっ!!」
声をかけて、その子の近くにまで行こうとすると、文字通り目の色を変えて、私目掛けて襲い掛かってくる。
反応が遅れて逃げることが出来ず、避けることも叶わず、無防備な状態。それでもなんとか咄嗟に、両手を交差させて身を守る準備は出来た。
「うあぁっ!!ーーぅぁ..」
「え?ーーわ!!ひゃあ?!」
私とその子は確かにぶつかった。でも、当たった場所がまた丁度良く胸に当たり、多少は痛いものの、衝撃が大分和らいだ。
なんか今日、私の胸を狙われすぎじゃない?なんか私、悪いことでもした?あと、なんで胸なの?
色々と疑問を頭に浮かべるも、ぶつかった衝撃が減速するわけもなく。当たった勢いで私は後ろに腰から倒れ、その子も当たった方向とは逆の方向に背中から倒れこむ。
「いたた......きゅ、急に人にぶつかっちゃダメだよ!!ってわぁ?!」
「ぅ...」
注意をしようと、立ち上がってその子の方に向かおうとしたけど、その子は倒れた直後。すぐにまた私に飛びかかる。でも今度は勢いよく、ではなくて、子供が親に甘える時のようにして、私の腰に両手を回して抱きつき、胸に顔を埋める。
......私の胸、なんか枕代わりにされてない?
「......」
「え、えーと....」
すりすりと顔を胸にすりつけて、時折「ぅぁ...」と小さく、甘えるような声音の声を漏らす。
ゆっくり、落ち着いて見てみると、壁に激突したその子は見た目八歳、九歳ぐらいにしか見えなくて、身長も百センチほどしかなかった。
何日入っていないのだろうと思うほど、体が土や泥で汚れ、肩よりも下まで伸びた長い髪はボサボサで、服も着ているんだけど、それも草とか葉みたいなので体を覆っているだけ。
それに先ほど壁に思いっきり激突したのにも関わらず、どこにも傷がなく、打撲の後すらもなく、痛がる様子もない。
さっきの出来事は、ひょっとして私の勘違いだったのかと思ってしまう。でも、確かにぶつかった壁は衝撃で壊れている。
私が本当にどうしたものかと悩んでいると、不意にその子が顔を上げ
「ーーっ」
ーー開かれた瞳の色は恐ろしいほど綺麗な碧色で、とても同じ人間の目とは思えなかった。それほどに美しくて、見ている者を不思議な世界に引き込む。
私は思わず見惚れてしまっていた。
じーっと見ているのを、不思議そうにその子が見てきたのだが、すぐに反応出来ず、代わりに口から「ぅえ...あ、ぇ...」と変な声が出てしまった。
「うぁ?あぁう?」
「え?あ、え、えーと、その...あ、あなたのお名前は?」
「?」
私がそう問うも、キョトンとした顔で、首を傾けるだけ。
それにしても、この子。さっきから日本語..それだけじゃなくて、言葉を使ってない。まるで動物が出す唸り声のような。
いや、人間も動物なんだけど、そうじゃなくて。
「えぇっと、それじゃ、どこから来たの?」
話しただけじゃ分からないだろうから、身ぶり手振りで言いたいことを伝える。
すると、傾けていた首を戻して、「う」と一文字だけ発すると、さっきその子が来た方向を見つめ始めた。
私もつられてそちらを向く。
「......え」
いつもの道。その筈なのに、そこには見たこともない、直径一メートルくらいの円形の穴が空いていた。そこだけ周りの景色とは一切違う。アマゾンのような場所で、穴からは狼のような生物が何匹もこちらに襲いかかろうとしていた。
「ーーっひ!」
私は生まれて初めて向けられた殺気に思わず、怖くて後ろにずりずりと下がろうとする。
その時「うぁ!」と叫んで、私の腕をその子が掴んできた。首をふるふると振って私の目を見つめる。まるで心配ないと私に伝えているかのようだった。
「....ホントだ。私達の方に来ない。いや、来れないのかな...?」
窓を叩くかのようにぶつかって、その円の穴から恨めしそうな目で見つめてくる狼のような生物。
しばらくすると、無駄だと分かったのか。ぞろぞろと一匹、また一匹と、どこかへ消えていった。
そしてそれと同時にその円の穴は縮んでいき、やがて消えた。
「.....はぁ...こ、怖かったぁ......」
緊張からの解放で、身体中の筋肉が弛緩していくのを感じる。数秒とはいえ、かなりの緊張感があったせいか、ドッと疲れが押し寄せる。バイトやら店長やらのやり取りも入ってるんだろうけど。
ホッと胸を撫で下ろした私は、安心するのも束の間。頭の中に一つの確信と一つの疑問が沸いた。それは、この子はあの穴の向こうから来たのだろうということ。そして、あの穴の向こうはなんなのだろうという疑問。
私はさっきの恐怖で体が震え、呼吸が荒くなり、脳から酸素がなくなって、上手く頭が回らなくなっていた。嫌な汗が流れ、全てが信じられなくなる感覚。この子も私を殺してくるんじゃないか、そんな考えが頭を過る。
....それに、そもそもこの子が人間だという証拠もなーー
「ーーあ!」
顔一杯に口を広げ、に!と笑う。満面の笑み。なんの歪みも見えない。屈託のない笑顔。どうしてこのタイミングで笑ったのかは分からない。でも、なんとなく分かるのは、その子は私の為に笑ってくれたんだろうということ。
「...そう、だよね。あなたが人間じゃない、なんてことはないよね。だって、こんなに私のことを励まそうとしてくれる子が、人間じゃないなんてありえないもん。うん、きっとそうだよ」
「う?....んゃ..」
頭を優しく撫でながら、自分の体にくっつける。ぎゅ~っと抱き締めて、私は冷えていたその子の体を暖める。
その子は嫌がろうともせず、素直に抱き締められてくれる。
「..ごめんね。一瞬でもあなたを疑ってしまって。だから..私に出来ることで償わせて?」
「あぅ?」
私の胸の中で、その子が...うーん、その子が、とかこの子が、とかは失礼だし、こんなに可愛いのに可哀想。名前とかあったほうが、絶対可愛い。ひゃくぱーせんとかわいい。
「...ねぇ償う前に、あなたの名前を私がつけてもいい?」
「あぅ?...うぁ」
幼いながらにも空気の流れを理解したのか。かわいらしく何回も首を、こくこくと振るけど、多分分かってないんだろうなぁ...。うーん。まぁでも、いまは仕方ない。
名前、名前....何かいいのが....あ、あったあった。そうだった。さっき丁度いいのを見つめたんだった。
「そうだね。あなたの名前は...『碧』。あおいってどう?あなたのその目。碧からそのまま取って」
「う?ぅあ、い?」
舌足らずで上手く喋れていないけど、頑張って言おうと、自分の両手を口元に持っていく。あ、ちゃんと抱き締めるのは止めたよ?私の上に座らせてはいるけど。
地べただから、服は汚れちゃうけど気にしない。
「んー、ネーミングセンスが私には無いからなぁ..。あおい、あおいかぁ....」
どうしようかと悩んでいた時、チラリとその子の体に葉っぱがついているのが目に入り、ピかんと頭にランプが点ったように一つひらめく。
....いや、でも、これは流石に愚直過ぎ..かなぁ?
「ねぇねぇ」
「う?」
口を頑張って動かして、あおい、と言おうとしていたところを止めて、私の方を向く。たったそれだけなのに、自然と笑みが溢れそうになる。ゆるキャラとかで癒されるのって、こういうのがあるからなんだろうなぁ。
「『碧葉』。あおば、ってどう?」
「?...あうぉぶぁ?」
口をもごもごと、まるで咀嚼しているような動かしかたで、発音を試みようとする。動物みたいな声だったけど、この数分の間に人間らしい発音に成長しつつある。
あとちょっとで、言えそう。
「惜しい!碧葉だよ。あー、おー、ばー」
私も必死に言ってもらおうと、大袈裟に口を動かしてみる。
それを観察するみたいに何度も何度も私の口を見る。私も何度も何度も、あおば、あおばと言い続ける。
そしてしばらく見たのち、私の口から目線を外す。
やっぱり無理かなーと、諦めかけたとき、
「あ、おぅ、ば。あお、ば?」
と、まだおぼつかないし、おそるおそると言った感じではあるけど、でも確実にいま、私がつけたその名前を、碧葉ちゃんは言ってくれた。
「おお..本当に言えるとは思わなかった..。..あーえっと、どう?気に入ってくれた?」
「あう!」
今度は(どうしてかは分からないけど)私が言った意味を理解したのか、頭を勢いよく上下に振った後に、またあの満面の笑みをする。
どーして小さい子って、こんなにも清清しいほど、綺麗で、汚れのない笑顔が出来るんだろう。もう、私には、こんなにいい笑顔は出来ない。
「ふふっ...良かった。あ、そうそう。それでね?」
「う?」
『碧葉』ちゃん。会って間もないどころか、一時間も立っていない時間しか一緒にいない。会話もあまり出来ていない。なのにどうしてだろう。不思議と"初めて会った"と言ったよりも、"久しぶりに会った"と表現したらいいように思えてくる。
そんな碧葉ちゃんが困っているなら、是非とも助けたい。手を差し伸べたい。あの穴の向こうから来たなら、両親もいなくて大変だろうし。私もそう出来たらしたい。
私は碧葉に笑いかけながら、ある提案をした。
その日。一人の大学生が、少女をおんぶしながら、楽しく笑いあう姿が目撃されたそうだ。
まるで、姉妹、みたいな.....?
そのまま見終わって帰られる方。少し待ってください。
まず見てくださり、ありがとうございます。
次にお願いがあります。よかったら、評価、または感想をお願いします。評価は1.1でもいいですし、感想も批判等でも構いません。それらを参考にして、これからどうするかを決められるので。あと、レビューしてくれると、もっと嬉しいです。
次回もまた会えることを願っています。
では、また。