002 辱しめだけ、うけさせて。
私が働いているお店。通称『エニング』は基本何でも屋みたいな所があって、『エニング』っていう名前のモチーフも、何でもっていう意味のanythingから取っていたりする。
朝の10時から開店、夜の3時に閉店。その間に私含め四人の従業員が入れ替り、立ち替わりで仕事をこなす。店長は基本、事務の仕事だけなので、一日に数時間しか働いているところを見ない。別にいいんだけどね。
さっきも言ったように"何でも屋"なので、本当に何でもやる。飲み会もやってたし、カラオケもあったし、料理も和洋中なんでもござれといった様子。だからメニューを覚えるのが大変、大変。最初は詰め込みすぎて、それのせいで逆に一つも思い出せず、よく先輩方に助けてもらったっけ。
そんなお店だから、食べ物とかの消費量も半端ない。だから、近くに大きめの倉庫が用意されていて、こちらも基本。何でも入っている。何でもやって、何でもする。それが売りでこのお店はやっている、らしい。
そしてその倉庫にやって来ました。
「..よいしょ、っと。うぅ、中は寒いな..」
「それは私も一緒ですよ。ほら、さっさと探して戻りましょう?」
「もとより私もそのつもりだ。というか別についてこないで、店の中で待っていて良かったんだぞ?」
「今更ですよ。ここまで来たら、ついていきます。だからさっさと探して見つけて戻ってはかりましょう?」
「...なんか冷静になって考えてみたら、私がやっていることって、結構ヤバいことなんじゃ..」
店長、それいまさらです。気付くタイミングが遅すぎます。ついでに最初に私の胸に飛び込んできたのも、結構ヤバいことです。
そんなこと言ったら、またさらに落ち込んで泣きそうなので、止めておこう。これは私の胸の中にしまっておく。
「そんなこと言ってる暇があったら探してください。私、ここに来るのなんだかんだ言って数回しかないので、中の構造とかあまり分からないんです。それに寒いので早く」
「わ、わかった」
素直にコクりと頷いて、倉庫の中へと探索しに行ってくる。
これでも私より、何歳も年上なんだよなぁ..。でも、そこが店長の良いところというか、カワイイところというか。
どうして男の人にモテないんだろう。こんなにカワイイのに。
世の中の男の人は見る目がないなぁ。
「ーー見つけたぞー!!」
噂をすればと言わんばかりのタイミングで、倉庫の奥から発見の報告をしてくる店長の声が聞こえた。店長体力あるなー。入ってまだ一分もないのに見つけるだなんて..それとも分かりやすいところにでもあったのかな?
どっちでもいいか。見つかったんだし、早いことに越したことはない。
「じゃあ戻りますか」
「あ、あぁ..」
倉庫から出てきた店長は、声が強張っていて、なんだか緊張していた。
そんな店長の手を握りながら、私はお店へと走って戻る。
寒いから早く戻りたい。
「ーーぁ..」
短く声を漏らした店長は、しばし戸惑ったように固まる。が、すぐに気持ちをリセットするように、頭を何回か振り、私の手を握り返してくる。
ぎゅっ..と力を込めてきた店長の手は、寒さで少しばかり冷たくなっていた。私よりも手が大きくて、ちょっと筋肉質な店長の手。その手に握られていると、なんだか安心する。
無言で歩く店長。その姿がなんだか、いつもとは違う感じがする気がした。子供っぽいと思っていた私の店長像がみるみる崩れ、いまは凄く大人っぽく見える。
それでも、やっぱり店長は店長だと思ったのは、握り締めた直後。その手だけでなくて、顔も真っ赤になって、握る私の手を通して暖かくなったからなんだと思う。
こういうところで照れちゃうのが、店長らしい。
お店は走っていたから、すぐに着いてしまう。
私が手を離そうとすると名残惜しそうに、力を込めてきて、私の手をより一層強く握ってきた。でもすぐに「あ..ご、ごめん」と謝りながら、ゆっくりと、自分の手を剥がしてく。
「..化粧室入るのはめんどくさいので、外からは見えないあそこでやりましょうか」
「あそこって...あそこ?」
私が指をさしたのは、ちょうど窓からは見えない角度になっている、飲み会ルーム。角度によっては見えちゃうんだけど、まぁ、最悪カーテンを閉めればいい。
「ダメですか?」
「い、いや大丈夫だ」
「それじゃ..」
歩くともちろんすぐに着き、私は一息吐いてから、みんなからファッションセンスがないと言われるジャージと上を脱ぎ、下着を外していく。
「ーーぅわ..」
流石にブラを外した後は、見られるのは恥ずかしいので、片手で隠す。あと店長、ぅわって言ったの聞こえてますからね。初めてエッチな物を見た小学生みたいな反応しないで下さい。
メジャーを背中から当てて、前に持ってきてはかろうとしたいん..だけど。
「ん..と...ダメです。上手くいきません」
体が思った以上に固く、はかる事が出来なかった。
私は嘆息つきながら店長にそう言うも、店長は動かず、喋らず、人形のように固まり、反応を示してもこなかった。
..店長の目線。なんか一点に向いているような....あ。
「.....店長の変態」
「な、な、な...!!ち、違う!違う!そ、そのあまりにも綺麗で、思わず見惚れていただけなんだ!!」
「ちょっーー」
こ、この人は..なんて恥ずかしいことをペラペラと言ってくるの..?いつもはヘタレの象徴みたいな人なのに..。
「だ、だから私は別に、その、お前の、ち、ちーー」
「だー!もう分かりました!!分かりましたから!!そ、それよりも!!手伝って下さい!私一人じゃできないんです!!」
「て、てちゅだう?!」
「さ、寒いんで早くしてください!私を凍えさせる気ですか?!」
もうなるようになれ、と言った感じで店長にメジャーを渡して、私は背を向く。戸惑いを隠せず、あたふたと震えている店長の姿が、背を向く前に見えた。
....は、恥ずかしいぃ..。
「...分かった」
「じゃ、じゃあ..お願い、します」
髪を両手でまとめて上に上げる。上半身完全無防備な状態で私は店長がはかってくるのを、ただ待つ。
あっちも恥ずかしがって長くなるかと思いきや、早々に覚悟を決め、後ろから抱きつくようにしながら、両腕を私の左右からそれぞれ出して、メジャーを前に構えてくる。
「い、いくぞ..」
「はい...」
後方から、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。静かなこの部屋だと、あたりに響いて、それが逆に緊張感を底上げしてくる。
「ん...」
私の胸にメジャーを優しく押し当て、するするすると後ろに伸ばしていく。
その時に弱めの圧が、胸の先端部分を刺激する。痛くはないけど、どこかこそばゆい。
そのむず痒さに耐えながら、私は無言で終わるのを待つ。
一分ほど経過したとき、店長がメジャーを外して、終了の声が掛かる。
「......ふぅ..終わった、ぞ」
重々しい空気のなか。微妙に上擦った声で、店長はそう言ってくる。さっきのような緊張したせいで、とかではなくて、なんかこう...また別の理由でなっている気がする。それもなんか、やましい理由で。
そして何故か続く言葉はなく、そのまま沈黙が流れる。
...え、店長?私、なんのために恥ずかしい思いをしたんですか?辱しめだけ受けさせておいて、結果は言わないんですか..?
「え...と、店長?それで、サイズは?」
「......恥ずかしいから言わない」
「.......はい?」
「だ、だから!恥ずかしいから!言わない!」
顔を赤らめてそっぽを向いてしまう店長。その光景もなかなかにカワイイけど、いまはそれに構っている場合じゃない。
「店長?私にここまで恥ずかしい思いをさせておいて、言わない、なんて選択肢があると思ってるんですか?」
「い、言わない!!言わないったら言わない!!」
「ちょ、店長?!」
ダッ!と勢いよく走り出して、店長は逃げていく。
もちろん私も追いかけようとしたけど、上半身が裸なことを思い出して、すぐにしゃがみ込んで体を隠す。それと同時に、怒りと恥ずかしさが暴走する。
私は目に若干涙を溜めながら、店長が逃げていった方を見つめ、
「...店長ー!覚えておいてくださいよー!!」
と、誰もいなくなった店内で、恨みのこもった叫び声を出すのだった。
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【店長専用ルーム】
「はぁ..はぁ..はぁ....ふぅ..」
思わず走って逃げてしまったけど、あいつは私のことを恨んではないだろうか。
私の方が年上なのに、私はいつもあいつに迷惑をかけて、頼りっぱなしになってしまう。
だから、今日は強気で接していたのに..全部空回りに終わって.....終いには私のワガママでサイズをはかってもらわせたというのに、最後に恥ずかしくなって逃げるだなんて...はぁ...もうダメだ。私は終わった。
「.....でも」
あの時。あのメジャーに記されていた数字を思い返してしまうと、また顔が赤面してしまう。
「きゅ、九十五..なんて、初めてみた...。あ、あれに顔を埋めていたのか私は..!!」
年とかそういう物を越えて、私を癒して、包み込んでくれる。あの柔らかい感触。いままで感じたことのない気持ちよさ。
......って!!
「私はなんてことを考えているんだぁぁ!!」
ごろごろと部屋の中で、色々と後悔しながら、これもあれで忘れさせてくれないかな..と考えてしまうのだった。
そのまま見終わって帰られる方。少し待ってください。
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次回もまた会えることを願っています。
では、また。