001 店長と私、あとサイズ。
「んん~...はぁ...。今日はこれで終わり、と。てんちょー、先に上がりますねー」
「もうそんな時間か。おつかれ、今日の夜もまたよろしくな」
「はい。よろしくされます」
びしっ、と敬礼っぽいポーズをして私は店長にお辞儀をしてから、お店から出る。
うぃーんという機械音と共に、自動で扉が開き、冷たい風が私をお店から出させまいと、襲い掛かってくる。冷たいー。
「くぅ..私はこれしきのことでは..負けない!」
「ふざけてないでさっさと帰れー」
「店長ノリが悪いですよー。だから女の人にしかモテないんですよー」
「それとこれとは関係ない!それ以上言うなら、そのデカ乳もぐぞ!というか渡せ!」
「いや渡せませんよ。てか良いじゃないですか、女の人にだけモテても。それはそれで楽しいですよ、きっと。店内の人気店員ランキングで、店長なのにぶっちぎりで女性層、主に十代の人から人気じゃないですか」
「男女問わず人気のお前にだけは言われたくない!!」
店長(身長百八十センチぐらい)が私(身長百七十センチ)に飛びかかるというか、ほぼ抱き付いてくる形で、突進して襲い掛かってくる。
むぎゅ..と店長の突進が、私の胸に当たり威力が軽減し、クッションのような役割を果たしてくれた。
「よしよし」
「よしよしじゃない!!くそ~お前、私より年下なのに包容力ありすぎないか?!それに加えて、このデカ乳!!いまサイズなんだ?!」
「店長、それセクハラじゃないですかね」
「うるさい!!同性同士だからセーフだ、セーフ。それよりサイズは?!」
若干問い詰めるようにして聞いてくる店長。その間も、私の胸を顔枕みたいな使い方で、モゾモゾとしている。くすぐったいけど、なんだか小動物みたいでカワイイ。
えーと、サイズか。最後にはかったの一年前なんだよなー。どうしよ。店長のことだから、ちゃんとしたデータないと怒るだろうし..あ、なんならここではかっちゃおうか。
「店長。あの、メジャーみたいなのって持ってます?」
「メジャー?....もしかして、今ここではかるのか?」
「はい。最後にはかったの、一年前なんで。良い機会なんでここではかっちゃおうかなーって。梓さんと斎藤さんも、もう上がりましたよね?」
梓さんと斎藤さんは私の先輩で、ここで働く店員の一人。あ、いや違う違う。二人か。日本語って難しい。
この二人はまた今度紹介するとして..それで、結局二人は上がっていたっけ?自分で言ってて不安になってきた。
「あ、上がったが..ホントにはかるのか?」
あ、良かった。やっぱり二人とも上がっていたよね。流石に二人の前で着替えるのは..ちょっと。
そしてそれを答えながら、オズオズといった形でそう聞いてくる店長。それでも私の胸に顔を埋めたまま。話すときだけ顔を離すんじゃなくて、もう離して欲しいんですけどー。そこは店長の帰る家じゃありませんよー、そこは私のですよーなんて。
「店長が先に私のバストについて聞いてきたんじゃないですか。それともなんですか?怖じ気づいたんですか?」
「....お前、たまーにSなるときがあるよな」
「じゃあ私帰りますね」
店長を私の胸から引き剥がし、そのまま荷物を手に取って、お店から出ようとする。すると店長が私の手を掴んで、引き留めにかかる。
「ちょちょちょちょっと待て!!いや待たなくてもいいが、その..」
「その..で、なんですか?」
「..私は一応お前より年上なんだぞ?少しはそのSっぽいのを抑えてはくれないのか..?」
「では」
「うぅ~!!悪い、悪かった!!正直に言うから!!」
「それでなんですか?」
両手の人差し指を、ちょん、ちょんと何回も当て、モジモジしながら、ようやく店長はその内容を口にした。
話す内容は分かってはいるけど、年上だからといって..ねぇ?やっていいことと、やってはダメなことぐらい分かっているだろうし。
調子に乗った店長を抑えるためには、時にSにならなくてはいけない時もあるのです。
文句は誰にも言わせません。それに店長が嫌いという訳でもないしね。
「そ、その..お、お前の..バ、バストを..教えて..ほ、欲しいのだが..」
「人になにかを聞くときは、のだが?じゃなくて」
「お、教えて..く、くだひゃい..」
「最初っからそう言えば、私は優しく教えますよ?今度からはちゃんとした姿勢で、ちゃんとした聞き方で聞いてください。親しき仲にも礼儀あり、ですから」
「...ごめんなさい」
しょぼんと落ち込みながら謝ってくる店長。
私って、そんなに怖いかなぁ?もしかして、店長から見る私って鬼だったり..は、しないよね。もしそうだったら、話し掛けてきたりしないだろうし、こうして私のバストを聞いてきたりもしない。..これだけ聞くと、若干店長が変態みたいに聞こえてくる。違いますよー。店長はカワイイですよー。
「はい、許しました。それで店長。メジャーって持ってますか?」
「た、多分。倉庫の中を探せば、一つくらいはある..と思う」
まだ少しテンション低めの店長に、私は苦笑いを溢しながら、やり過ぎたかな、流石に。
そう思い、私は倉庫へと向かう店長の肩を叩き、こちらに体を向かせる。
そして。
「どうした..って、な、なんだ?!どうした?!」
「そんなに落ち込まないで下さい。もう怒ってませんし、それ以上へこまれたら、こっちだってへこんじゃうじゃらないですか。ですから、店長の好きなこの胸を貸してあげますから。ね?」
「...うぅ~。ありがどー!つゆりー!!」
いま出てきた名字は私ので、栗花落 美織という。ちなみに、店長は安多栄 結と言って、名前と言動から男だと間違われやすいけど、歴とした女性。
店長と呼んでいるのは、こちらの呼び方の方に慣れてしまい、そのままこれで定着してしまったのと、単純に他の人達も店長と呼んでいたからだ。
「ああ、もう店長。鼻水出てます。ほら、鼻かんでください。ティッシュ渡しますから」
「ん..ありがど」
渡したティッシュをもらい、チーン!と盛大に音を立てながら、鼻をかむ。こういう所が男っぽいって言われるんですよー。でもいまこんな事言ったら、さらにへこむからなぁ...。また今度にそれとなく伝えとこう。
「あ、ちょっと店長。鼻水が服についたんですけど。..はぁ、もう今日だけですからね、許すのは」
「ありがどー、ありがどー」
店長もしかしてお酒でも飲んだ?いや、仕事中は絶対に飲まない人だから、ないとは思うんだけど..。
私の胸の中で泣き続ける店長をあやしながら、いまのこの状態で私、今日の講義出れるかなー?と若干不安になるのであった。
そのまま見終わって帰られる方。少し待ってください。
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