000 野生少女は森林を駆ける。
「うう..!!」
深夜、月の光のみで照らされた森林を少女が駆ける。
口から嗚咽が混じった唸り声のような物を漏らし、狼のような走り方で、衣服を一切着ず。およそ人間が出せるであろうスピードを、悠々と越えながら駆ける。
時折目から涙をポロポロと流し、何か気がかりでもあるのだろうか。顔を歪めながら、後ろを振り返る。
それでもその少女は手足を止めない。
「あうあ..!!うぅ..!!」
駆ける。
駆ける。
駆ける。
辺り一面が自然で溢れ、生物が豊かに暮らし、全ての動物がその生を謳歌している。ここは地球で、そして別段どこか遠くの国の話という訳ではない。日本である。
ただし、数世紀以上前のだが。
現代にはいない絶滅危惧種も生きており、自分達で集団を作り、獲物を狩って、それを食べる。弱肉強食の世界で今日という日を生きていた。
人間も人間で、現代のように機械などには頼らず、己の力、もしくは同じく集団の力だけで他の生物を殺し、それを糧として一日を生き抜く。
本来の生物の理がそこにはあった。
その中で少女が涙を流しながら、森林を駆けている。大方、両親とかを殺されたとかだろう。それで自分も殺されそうになったから、やむを得ず逃げるの一手に出た、そんな感じの状況。
詳しいことは分からないが、要するに命が狙われているのだろう。
少女の駆けるスピードは凄まじい。現代なら、一躍有名人にもなれただろう。しかし、ここは現代ではない。命を狙い、狙われる時代。それに所詮は人間の力。どんなに頑張っても越えられない壁というのは存在してしまうものだ。
追ってきてるのは狩る、という部類に尖ったもの達だ。勝機など万の一にもない。集団で一匹を狩りに行ってやっとなのに、一人などもっての他。この少女はカップラーメンが出来る時間よりも早く殺されてしまうだろう。長くて五分、短くて三分。例えが分かりづらいようなら簡潔に言おう。
もう助からない、とでも言えば最も分かりやすいのではないだろうか。
なんと勿体無い。現代に生きていれば、この少女はその美貌、スタイルで人生を楽しく生きていたというのに。その脚力でアスリートにでもなれていたというのに。両親も殺されずに済んだというのに、嗚呼、なんと勿体無い...。
では問題。
Q.この少女を助け、尚且つ、その後も泣いている理由すら払拭するにはどうしたらいいのだろうか?
A.神にでも頼んで現代に持ってくる他ない。
しかし、そうホイホイと神が一人の人間を助けたりなんてするのだろうか。機嫌が良かったらしてくれるかもだが、神だって決まり位はおそらくある。
ま、何でもいい。もう少女は助からないだろう。あぁ、残念...。私たちはこの少女が死ぬのを、ただただ見ることしか出来ないなんて..。
残り一メートル。飛び付かれたりでもされたら、一貫の終わり。それでもトドメをさしにかからないのは、ギリギリまで自分の身の安全を最大限高めたいから?それともいたぶる趣味でもあるのか。
五十センチ...四十センチ、三十センチ....十センチ........ガブリ。
追いかけていたもの達は、森の至るところから飛び付き、少女を食いにかかる。鋭く尖ったその牙で、骨すら粉々に砕くその顎で、食べられる側の反射神経すら凌駕したその速さで、少女は瞬く間に逃げる側から、食料へと早変わりを遂げーーなかった。
ガチン!!と甲高い音がその少女を中心に鳴る。音の原因は牙が空振り、自分の歯と歯をぶつけた、擦れた音だった。
少女がいなくなった森林の中では、獲物がいなくなり戸惑いながら遠吠えをする、捕食者達の姿があったのだった。
そのまま見終わって帰られる方。少し待ってください。
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