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81話 僕は動き出す

 半年以内に金貨十万枚という途方も無い目標に向けて動き出した僕達ですが、まずは計画を立てなければいけないでしょう。

 ミントさんとラシアさんの強い主張もあり、なぜかディータランドという名前になってしまった我等がテーマパーク。

 これの売り上げ目標から考えていきます。


 参考になるのはやはり東京ファンタジーランドですが、あそこの売上までは調べていません。

 けれど予想は出来ます。

 園内に「本日の入場者数」が表示されていたのを、僕は覚えていたのです。

 もちろん季節や曜日。それにイベントなどで前後する筈ですが、あの日の入場者数は32,734人。

 入園料が大人七千円、子供五千円となっていて、割り合いを七対三くらいとすると合計で約二億一千万円の売上です。

 これだけで金貨換算で一万枚。わずか十日で達成出来てしまいますね。


 当然ですがこんなに上手くいくわけはありません。

 特にこちらの世界では交通の便が異界とは雲泥の差なので、一日五千人も来ることが出来れば良いほうでしょう。

 それに物価も違いますから、一人辺りの入園料も下げなければなりません。

 大人で銀貨一枚、子供で銅貨二枚といったところでしょうか。


 大人と子供の比率をそのままで計算しますと、一日の売上は銀貨三千五百枚。銅貨三千枚。

 これを金貨に換算し直すと、約七百七十五枚程度になります。

 金貨十万枚を達成するには、約百三十日ほどかかる計算ですね。

 つまり四ヶ月ちょっとです。


 しかし当然ながら、運営するには多くの人手が必要になってきます。

 各アトラクションを動かしたり担当する方。

 ニャー太君の中の人達。

 園内を掃除する方々。

 他にも資材搬入や裏方さんを数えたら途方もない人数が必要でしょう。

 彼等を無償で働かせることなど出来ないのですから、その人件費も莫大になるはずです。


 このあたりの細かい計算、調整については、申し訳ないですがマルグリッタさんに丸投げしました。

 僕では確実に不備が出ますし、なにより彼女がやる気になってくれているので。


『こんなに面白そうな計画なら、私にも是非手伝わせて欲しいわ!』


 土地のこともそうですが、マルグリッタさんにはお世話になりっぱなしですね。

 ミントさん曰く『商売人の血が騒いだんだろう。いいようにこき使ってやれ』とのことですが、いずれ何かでお返しする所存。

 今は精一杯ご厚意に甘えましょう。


 なので差し当たって僕がしなければならないのは、なにはともあれ箱の製作。

 ようするに、施設を作り上げることです。

 本来であれば途方も無い人数と時間を要するこの作業ですが、僕にはあてがありました。

 土木作業が神がかり的に得意な方のあてが。


 ロコロルの港から再び船に乗った僕は、ミントさんを連れてペンディルア島にあるポーシーの町へと向かったのです。

 ちなみにラシアさんとシフォンはお留守番。

 施設完成を待たず、先に人を集めにいってもらいました。

 ゆくゆくはディータランドのスタッフとなる方々ですね。

 どのくらいの人数が必要なのかは、マルグリッタさんと相談しながら決めていくそうです。


「到着しましたよ」


「うぇ……。つ、着いたか……っぷ」


 ミントさんにとっては、約六十年ぶりに帰ってきたペンディルア島。

 本当ならダークエルフのままで帰って来るつもりはなかったのでしょうけど、無理を押して僕の頼みを聞いてくれたのです。


「構わん……うっぷ……気に……するな………うぇぉ……」


 気になります。

 胃の中からカムバックしたお昼ご飯が口端から覗いていて、すごく気になってしまいます。

 ミントさんは、一向に船旅に慣れる様子がありません。


「ポーシーの町では一応フードを被っておきましょう。あえて晒す必要はないのですから」


「そうする……」


 申し訳ないと思いつつ顔を隠し、僕はミントさんに肩を貸しながらポーシーへと辿り着きました。


 以前あった黒くて分厚い雲がなくなり、どことなく明るい雰囲気になっているポーシーの町。

 田畑の開墾は順調のようで、人々からは活気を感じます。

 町のあちこちにある邪神像が景観を壊していますけど。

 でも崇めている人もいらっしゃるようで、エリーシェ像の下には花などが供えられているのでした。


 そんなポーシーの町を歩いていると、不意に後ろから呼び止められました。


「あら? ディータさんではありませんの?」


 振り返ると、そこに居たのは緑色の髪をなびかせたニルヴィーさん。

 お付の聖堂騎士達を従えて、高笑いしながら近付いてきたのです。


「おーほっほ。どうなさいましたの? 私に会いに来たのかしら?」


「いえまったく。ニルヴィーさんがいらっしゃること自体忘れてました」


「そ、そこは嘘でも「そうです」という場面ですわよ?」


 なんだかショックを受けられているようなので、ここは素直に頭を下げておきましょう。

 というか意外な再会だったので、ちょっとビックリしてしまったのですよ。

 そういえば魔神の動向調査の為に、ニルヴィーさんが派遣されたという話を聞いた気がしますね。

 今もこうして調査中なのかもしれません。


「立ち話もなんですからお食事でもご一緒にいかがかしら? お連れの方も少し休まれたほうが良さそうですし」


「ラギュット亭ですか? いいですね。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」


 本当は町長さんに話を伺いに行くつもりでしたけど、ニルヴィーさんに出会えたのは渡りに船かもしれません。

 せっかくなのでお誘いに乗り、僕達はラギュット亭へ向かうことになりました。


 到着するとすぐに料理が運ばれてきて、僕は驚きます。

 以前も美味しい料理でしたけど、今回は見た目からも随分豪華になっているのです。


「だいぶ暮らし向きが豊かになってきていますからね。これもエルフ族との交流が再開したことや、楽に開墾が進んでいる恩恵ですわ」


「それは良いことですね」


 横で倒れているミントさんはフードで顔が見えませんが、少し微笑んだ気配がしました。

 エルフ族とポーシーの人々が良好な関係を築けていると聞き、嬉しかったのでしょう。


「ところでディータさん。貴方の推論ですが……当たりかもしれませんわ」


「僕の推論ですか?」


 聞き返すとニルヴィーさんは「忘れましたの?」と少し呆れ顔。

 何か言いましたっけ?


「神獣のことですわよ。あれがおかしくなったのは魔神派が何かしたのではないかと、貴方が言ったのでしょう?」


「あぁそういえば。何か証拠でも見つかりましたか?」


「いえそこまでは。けれどミリアシス様に再びお会いして聞くことが出来ましたわ」


 煎餅の話によると、神を守る者であり森と大地の神でもある神獣に何か出来るのは、同じく神の力を持つ者以外あり得ない。

 自分の従神がそのようなことをする筈がないから、まず間違いなく魔神派に属する神の仕業だろうと、そういうことらしいです。


「どうやら呪いの類みたいなのですが、今のお姿のミリアシス様では治すことが出来ないそうなのです。治すためには呪いを掛けた神に治させるか、倒してしまうか」


「神を倒すとはまた……随分無理難題ですね」


「あら、そうでもありませんわよ? 主神であるミリアシス様や魔神ならともかく、従神レベルであればいくつか逸話が残っておりますでしょう? 神殺しの」


 なくはないですけど、それは後に伝説として語られるような英雄譚。

 その中に遊び人なんて職業の人はいないでしょうし、今後も現れるとは思えません。


「怪しい者の目撃例もありますから、一度ミリアシスの総主教様にご報告した後、私達はその者の足取りを追うつもりです」


「神様を見た人がいるのですか?」


「それが神であったかどうかは分かりません。けれどポーシーの人々に焼畑農法を伝授した男と、それに付き添っていた薄着の女。これが怪しいと私達は睨んでおりますの」


 そう意気込むニルヴィーさんは、とても頼もしく見えます。

 ミリアシス様の頼みに応え、彼女は自分の役割をきっちりこなそうとしているのでしょう。

 僕も負けていられないなと気合を入れ、話を本題に移すことにしました。


「田畑の開墾はどうです? 神獣さんはちゃんとやって下さってますか?」


「えぇ。以前とは比べ物にならないほど進んでいると、町の方々も喜んでいますわよ。でも……」


「なにか問題が?」


「あらかた耕し終わってしまい、やることがなくなってきているんですの。最近は持て余した力で、エリーシェ像が増え始めてしまってますわ。試しに壊そうと試みたのですが、土で作ってある筈なのに鉄よりも固くて、叩きつけた剣の方が欠けてしまう始末。町のどこにいてもエリーシェさんに見られているようで、ノイローゼ気味ですわよ……」


「素晴らしいです!」


 願ったり叶ったりの状況じゃないですか!

 そう。僕がここを訪れたのは、まさに神獣さんの力を借りたかったからなのです。

 あの神業とも呼べる力なら数千人でやらなければならない工事も、驚くほど短期間で出来るのですから。


「なら神獣さんをお借りしても問題はなさそうですね?」


「え、えぇ。一応町長に確認をとってみますが、大丈夫だと思いますわ。……けれど、神獣なんて連れていってどうするつもりですの?」


「いずれお話……いえ、いずれご招待しますよ。ディータランドに」


 頭にクエスチョンマークを浮かべたままのニルヴィーさんと食事をし、僕とミントさんはそのまま森へ潜ることにしました。

 この島に来た理由は、神獣さんのことだけではありませんから。


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