プロローグ
「真情君!」
高校の帰り道クラスメートの田中君に名前を呼ばれる。
息を切らしながら、とても真剣な表情をしている。
何か急ぎの用事でもあるのだろうか。
「どうかした?」
「ごめん、本当にごめん。」
何を謝っているのか分からない。
「うーん、何が?」
「何がって、僕のせいで真情くんがクラスのターゲットにされてるじゃないか!!
いじめられてた僕を助けて、代わりに真情君がいじめられてるじゃないか!!」
「・・・。そうなのか。」
「うん!そうだよ。」
考えてみれば、確かに机に落書きがあったし、誰に話しても返事もなかったな。
待てよ、焼きそばパンを落として踏まれたのもわざとなのか?いや、それはないな、そのあとすぐに「ごめん、わざとじゃないんだよ」と満面の笑みで言われたし。
うん。仮にいじめられてたとしても、別にたいしたことではない。
それは俺にとって、日常だから。
「別にたいしたことない。田中君が、謝ることもない。」
「でも、僕のせいで」
「いや、田中君のせいじゃないだろ。もしそれが、原因なら俺に話しかけない方が良い。別に俺も困ってないし。そっれじゃ。」
何か言いたそうな田中君を残して、帰路につく。
自分の家なのかも分からないあの家へ。
田中君と別れて、しばらくして。
人気のない帰り道で、ふっと誰かに呼ばれた気がした。
何だか懐かしいような、愛しいような声で。
振り返ると誰もいない。何だか視界がぼやけている。
「おかしいな、何で」
目元をこすろうとして、初めて自分が泣いてることに気付いた。
それは、9年ぶりの涙だった。
訳が分からず、目を瞑り手で顔を覆い涙を拭く。
目を開けると今までにない風景が広がった。
金髪、白髪、ピンク髪まで、様々な色の頭髪の人々。
恰好は、鎧から、民族衣装の様なも、ローブまで様々だ。
明らかなに日本ではない。
「さて、どうしたものか」
目の前の光景をみて、慌てるもなく、ただ冷静に呟いた。
真情始 高校2年 17歳
周りから『変わり者』と呼ばれている、彼の異世界でのスタートである。