距離感
いつも思うことがある。でも、それを言うとママが悲しむから、言わないようにしてること。
『ねぇ、ともちゃんのおっぱいのとこ、それなーに?』
プールの季節になるとよくお友達から聞かれていた。
『手術のあと···』
産まれてすぐ心臓に異変があるのが見つかったが、まだ手術に耐えられる程の力がなく1歳になるのを待ち、手術をした。5時間にも及ぶ手術だったらしいが、今はそう無理をしなければ生活が出来る。
幼稚園の時は、まだ良かったが、小学校に入ると体育の授業の度に見学をする私を友達は不審に思い始め、いつしか私は仲間外れにされる事が多かった。
それは、中学に入っても高校に入っても変わらない。自分から話しかけるのが苦手で、一人で本を読む時間が多かったし、それでいいと思ってた。
「また、見学?」
「はい。すみません···」学校には、ちゃんと事情は話してあるのに、この体育の先生は嫌そうな顔をして、皆の前で責めるように言う。
「じゃ、そこで見学してろ。ったく、しょうがない奴だ」
前の学校の時もそうだった。学校の先生は、理解してるようで、理解してはいなく···結果、転校を余儀なくされた。
「なぁに、泣きそうな顔してんだ、ばーか」
石川くんが、私にタオルを渡しながら話しかけてくる。
「うん」
(きっと、彼も私の身体の事を知ったら···)
「今日は、部活ないからさ。帰りにスタバでも行くか?新作出たらしいし···」
「うん。でも···甘いの···。あ、呼んでるよ?」
グランドの中で、先生がこっちを見ながら彼の名前を呼んでいた。他の子も遠巻きに眺めてるのがわかる。
「じゃ、あとでな!」そう言い、走り去る彼に、「うん」と短く返事をした。
(いいな。走れて···)
少し暑くなってきたから、木陰のあるベンチに座って、体育の授業を眺めていたのが、悪かったのか、気付いたら保健室にいて心配そうな顔の石川くんとママがいた···




