7・まるで 星に願いを……2
新 VARIATIONS*さくら*7(さくら編)
≪まるで 星に願いを……2≫
「……あたし、戸籍謄本を見てしまったの」
数分の沈黙のあと、米井さんが口にしたのは、理解不能な一言だった。
だけど、そのあと、また沈黙になってしまったので、訳が分からない。
「じゃ、先生が話すけど、いい?」
米井さんは黙って頷いた。口を開いたら自分が爆発してしまいそうで、何かを必死で堪えているのがわかる。
「去年、乃木坂の文化祭にいって、米井さんは佐伯君と付き合うようになったの。で、付き合いは順調に進んで、二人は、とてもいい友達になった……とても大事なね」
ここまでは、当たり前に理解できた。Tデパートで見かけた二人は、そのとても大事を通り越して、身内のようにお気楽になった状態で、こういう関係に、夢を重ねてしまうあたしたちには、つまらないものだった。
「念のため、この話は人には内緒だからね」
「「はい……」」
先生の念押しに、あたしたちは静かに頷く。感情を表に出したら、米井さん崩れてしまいそうだった。
「ところが、この春に、佐伯君は健康診断にひっかかり、精密検査である病気だってことが分かったの……命にかかわるような。そして、6月頃からは、ずっと入院生活。米井さんは、毎日お見舞いにいった。お互いに友達以上の気持ちに……なっていった」
「先生、もう大丈夫です。あとは自分で言います」
米井さんは、涙をこらえながら、でもしっかりあたしたちの方を向いて言った。
「去年、うちのお祖父ちゃんがが亡くなったんで、遺産相続のために、お父さん戸籍謄本を取り寄せてたの。それを、たまたまあたしが見つけて読んでしまった。そして分かったの。あたしは、ずっと弟と二人兄弟かと思っていた……あたしには、双子の兄がいた……そして、いろいろ調べているうちに分かったの……佐伯君は、あたしの双子の兄だった」
表面張力一杯の心から、涙が一筋流れていった。
「で、あたしは……彼も、兄妹の関係に戻そうとした。あの日は、兄妹の気持ちでTデパートに行ったの。そこを佐倉さんに見つかったってわけ。で、例のチェ-ンメール。もう、頭ぐちゃぐちゃ」
「そう……そうだったの」
そう言うのが精一杯だった。
「でも、訳わかんないけど、あなたたちじゃないことはよく分かった。先生の話でも半信半疑だったけど、今のあなたたちの顔を見ていたら分かった。わたし気が楽になった。今まで一人で胸にしまい込んで……でも、ここまで分かってくれる友達が五人もできた。ありがとう!」
あとは、六人で泣きの涙だった。先生はあたしたちを六人だけにしてくれ、次の授業は進路指導のための公欠あつかいにしてくれた。
この話は、これでは終わらないんだけど、こないだお姉ちゃんに夏休みの読書感想用にもらった『ノラ バーチャルからの旅立ち』の中に収録されていた『星に願いを』の話に通じるものがあった。
不思議な体験だった。こんな身に染みる読書感想。それも書いた後に、こんな感動がきたのは初めてだった……。




