表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新 VARIATIONS*さくら*  作者: 大橋むつお
42/42

42・あたしのエヴァンゲリオン

新 VARIATIONS*さくら*42(さくら編)

≪あたしのエヴァンゲリオン≫



 前々から言ってるけど、勉強は好きじゃない。


 だから、二年の二学期の中間テストだっちゅうのに身が入らない。


 日本史のテストなんか、暗記したこと全部書いたら、見直しもしないでい眠ってしまう。そんで、蟻さんとお話しする夢なんか見てしまう。一昨日は、試験の後、家の近所まで帰りながら、公園に寄って、ガキンチョのころから乗り慣れたブランコに腰かけて二時間。アンニュイに身を任せながら、結論も出ない考え事をもてあそんでいた。


 来週残っている教科は、昨日すませた。ノートやプリント見て、出そうなところを熟読。一回ずつ紙に書いておしまい。印象に残ったのは国語。

 

 太宰治の『富岳百景』がメイン。


 漢字の読み、代名詞の「それ」とか「あれ」が何を指すか。読書力はあるから、一回読み直しておしまい。「富士には月見草がよく似合う」「棒状の素朴さ」「富士はなんの象徴か」「単一表現」とはなにか。プリントの答えを丸のまま頭に入れる。こういうことの答えを全部集めても、『富岳百景』は分からない。

 例えば「富士」というのは「軍国主義・封建主義・当時の文学などの権威」などと書けば正解。だけど、あたしは、これでは収まらない。権威の否定だけで納得できるほど人生は甘くない。太宰だって、そう思っている。それでも掴みきれない自分のいらだちが見えてこない。でも、そんなことを書いたって減点されるだけ。だから考えない。


 軍国主義への反対? 笑わせちゃいけない。太宰は、そこまで考えて書いていない。御坂峠の茶屋の母子に癒される……とんでもない。

 あの茶屋の主人は戦争に行って中国大陸で戦っている。もし、戦争というものの権威に反対するなら、太宰程の文才があれば、別の形で書いている。失礼だけど、教えてくれた国語の先生は、こんな事実も見落としたまま授業をしたんだ。あの先生の授業からは太宰の苦悩も、そこから出てくる命がけのユーモアも分からない。


 今日は録画したまま見てなかった『エヴァンゲリオン』を見た。


 なんで中学生が、ここまで苦しんでエヴァに乗り込んで、正体不明の「使徒」と戦わなければならないのか? 観ても読み込んでも出てこない。碇シンジが痛々しい。

 あたしの勝手な思い込みかもしれないけど、作者も「使徒」の意味よく分かってないんじゃないだろうか。分かっていないからこそ、面白いと思っちゃうんだろうな。太宰の「不安」と共通する曖昧さ、漠然さ。それが「青春なんだよ」と言われても、あたしは納得しない。


「あ、しまった!」


 お母さんが台所で叫んだ。どうやら生協に注文しておいた食材に、注文のし忘れがあったみたい。

「あたし、行ってくるよ」

 エヴァも最後まで観て「思わせぶり」を納得。当然消化不良。で買い物に行く。


 買い物は良い。メモしてもらったものを駅前のスーパーまで買いに行って、帰ってくる。お母さんが感謝してくれる。そして晩ご飯は滞りなく食卓に並ぶ。


 あたしは、こういう単純な問題と、問題解決が好き。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ