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新 VARIATIONS*さくら*  作者: 大橋むつお
36/42

36・髑髏ものがたり・5

新 VARIATIONS*さくら*36(惣一)

≪髑髏ものがたり・5≫



 髑髏の身元判明への道は意外に早く開けた。


 窮したオレは艦長に直接メールを打った。5分とおかずに艦長本人から電話があった。

――ニューギニア戦線で、戦死された陸軍中尉さんなんだね?――

「はい、戦死後首を切られて……」

 全部を説明する前に艦長は的確な指示をくれた。


 そして、オレは防衛医科大の支倉教授を訪ねた。


「まずお骨を拝見しよう」


 支倉教授は、合掌した後骨箱から頭蓋骨を取り出した。

「……これは酷いね。動物の骨格標本を採る時のように煮沸されている。頭骨の形状からアジア東部。日本人だとしたら、関東から東北南部の特徴が顕著、歯の状態から二十代の男性と思われるね……右上顎の第二臼歯に治療痕。これは日本の歯科医師の治療だと思う」

「分かるんですか?」

「長年遺骨を見てきた。初見判断でもこれくらいは分かる。よし、直ぐにDNA鑑定と複顔をやってみよう」

 技官がやってきて、わずかに骨を削りDNA鑑定にかかった。

「DNAは時間がかかるんでしょうね」

「ダイレクトPCRでやるから、すぐに結果が出るよ。お顔は……」

 教授が、パソコンのキーボードをいくつか押すと、数分でモニターに複顔した顔が現れた。

「阿部寛に似てますね……」

「推定身長……175~8だな」

 複顔は一度骨に戻り、全身の骨格が付けられ、さらに肉付けされていった。日本人離れした偉丈夫に見えた。

「関東から東北には、ときたまいるんですよ。分かりやすく言うと縄文系の特質ですな」

 教授は細々とした数値や特徴を言ってくれたが、専門的すぎて良く分からなかった。

「いろいろ調べさせてるんで時間つぶしに説明したが、余計だったかな……おお、なにか分かったようだな」


 教授は、廊下の足音だけで朗報だと分かったようだ。


「防衛省の戦史資料室からファックスです」

 若い技官がプリントアウトしたものを手渡した。

「ラム河谷の戦闘は第79連隊か。中尉は28人……5人は復員しているから、23人から絞り込めばいいんだな」

 教授は、79連隊関連の資料を検索した。3個大隊の集合写真が出てきた。

「これは、検索が早いよ……」

 集合写真なので、どの将兵も階級章がはっきり見える、その中から中尉を絞り込めば……28人の中尉のバストアップがモニターにHD処理をされた鮮明な画像で出てきた。


「あ、これだ!」


 教授と自分の声が重なった。


 偶然なのだろうけど、阿部忠という陸軍中尉だった……。



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