32・ 髑髏ものがたり・1
新 VARIATIONS*さくら*32(さつき編)
≪ 髑髏ものがたり・1≫
二輪さんは、ひい祖母ちゃんの桜子と二言三言話したようだ。
「そうなの。その望みは叶うといいわね」
二輪さんはそれだけ言って、あたしたちには何も言わないでニコニコ。
「これは桜子さんとわたしの秘密。でも安心して、あなたたちに影響するようなことじゃないから。ま、なにかあったら電話。ね」
ということで終わってしまった。
桜の歌のアクセスは70万で頭打ちになった。その日の午後は5000件ほどのアクセスで終わった。
家に帰ると、二社ほどプロダクションから電話があったみたい。いずれもネットで検索すると怪しげと言っていい三流事務所。
「あたしが断りの電話しようか」
「そんなの、とっくに断ったわよ」と、お母さん。
「あら、雑誌の取材とか来てるじゃん」
「え、ポップティーンとか!?」
単純な妹は単純な連想をして喜んでいる。
「オッサン向けの週刊誌。あとラジオが一本」
「それは受けといた。パーソナリティーがお気に入りだから」
「あーあ、もう一本ぐらいテレビ出たいなあ」
「お姉ちゃんがマネジメントしたげるから。さくらも桜子さん(ここは小さな声で言った)も気のすむように」
お母さんのお祖母ちゃんが、いっしょにいるんだよ~……は言わないことにした。お母さんは、ドライに見えて、存外こういう話には弱い。
スマホにメールが入っていた。
ほら、スコットランドの独立騒ぎでおたついてたスコットランド人のトムことトーマス・ブレ-ク・グラバー。
「で、なによ、学校でしか話せないって話は? プロポーズしようってんのならお断り。NHKの『マッサン』の逆やるつもりはないから」
「それはないよ。さつきとはただの友達だ」
「そうあっさり言われても傷つくんだけど」
トムは日本語はうまいけど、人間的な情緒という点では小学生並だ。で、その小学生並は、いわくありげな古ぼけた木箱を取り出した。
「中身が婚約指輪だったらギネスものだったでしょうね」
「これ、寮の隣のアレクから預かったんだ」
「アレクって、ワシントンから留学に来てた?」
「ああ、あの全身アメリカンギャグでできてるような」
「じゃ、これビックリ箱かなあ?」
「あいつ、一昨日の便でワシントンに帰った。で、これを預けていったんだ……」
そう言いながらあっさりと箱の蓋をあけた。
「うわー、上手くできてるわね。もう少し大きけりゃ本物に見える」
「本物だよ。年数がたって少し縮んじゃってるけど」
「え……」
それは大学とは言え、キャフェテリアには全然似つかわしくない物だった。
なんたって本物の頭蓋骨だったから!




