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異世界に黒ポメ立つ!!  作者: 式玉
2/3

狩人〈シンバ〉

2話目です。


宜しくお願いします。

「ここが異世界か・・・。」


目の前に広がるのは美しい湖。畔には草花と水鳥達が佇み、深緑の木々が周りを囲んでいた。振り返れば真っ白な祠があり、聞かされていた通りの場所へ転移したようである。

先ずは〈ガンマ〉と連絡が本当にとれるのか確認してみる。空間庫と念じてみると頭のなかに空間庫内のものが浮かんでくる。取り出したいものを指定すると任意の場所に現れる様だ。

スマートフォンを右手に取り出し、電話帳の中に〈ガンマ〉と登録されていた。


『どうなさいましたか?』


電話をかけると呼び出し音も鳴らずに〈ガンマ〉が応えた。


「とりあえず、本当に通じてるかの確認をしたかっただけ。それと・・・苦情を一件入れたい。」

『苦情とは?』

指示(コマンド)を入れなければ〈トルテ〉のスキルは発動しないって聞いた筈だよな?」

『ハイ、その通りです。』

「・・・じゃあ、何で指示(コマンド)を入れていないのに巨大化してるんだ?」


首輪とハーネスを引きちぎり、湖の畔を楽しそうに走る巨大化した〈トルテ〉。体長2mくらいのポメラニアンに追いかけられて、水鳥達が慌てて逃げている。


『ワキャ~~~~~、楽しい~~~、ここどこだろ~~?』


〈トルテ〉のスキルにあった意思疎通のお陰で念話のように感情が伝わってくる。飼い主としては夢にまで見た愛犬との会話なのだが、状況が状況なので素直に喜べない。よく見るとからだの回りにパチパチとスパークが起きていた。そういえば雷属性の能力もあったな。

『・・・申し訳ありません。〈ラムダナトゥ〉様に直ぐに伺ってきます。後程連絡致しますので、お待ち下さい。』

「・・・了解。」


さて、どうしたものだろうか?うちの愛犬は馬鹿じゃあ無いのだが、こうも興奮してると呼んでも気が付かないアホの子だし。


「ステータス。」


《ステータス》


LV 1

HP 100/100

MP 100/100

SP 10/10


《スキル》

全属性魔法 L1

弓技 L2

剣技 L1

調理 L5

精神耐性 L1

物理耐性 L1

毒耐性 L1

身体能力向上 L1

魔力操作 L1

魔法適正 MAX

眷属使役 L3

《ユニークスキル》

言語理解 空間庫 成長促進


《眷属》


トルテ(ポメラニアン)雌

LV 1

HP 80/80

MP 52/80

SP 10/10


《スキル》

身体能力向上

身体強化

巨大化

雷/闇 属性

意思疎通


うん?スキル使用でMPが減るのか。じゃあSPは何をしたら減るのだろう?。まぁ、あとで〈ガンマ〉に聞けば良いか。とりあえず今は〈トルテ〉を止めないとね。


「トルテ~オヤツ‼」

「!?ワンッ‼『オヤツ』」


・・・瞬間移動ですか?一瞬で俺の足元に、元のサイズで戻って来ていた。


「良し。」

『オヤツ~チーズ~美味しいでし~♪』


なんか、語尾がオカシイ・・・。


「トルテ、それ食べ終わったら伏せして待っててな。」

『分かったでし!』


〈トルテ〉が伏せたのを確認し、これからのことを考える。まずは村へ向かおう。ここは村から西に2km程の場所だと言っていたのを思い出す。とりあえず森がどのくらいの広さかが分からないが、森さえ抜けてしまえばそれほど時間の掛かる距離でもないだろう。


「おいでトルテ。」


千切れた首輪とハーネスは空間庫へ放り込み、〈トルテ〉を胸に抱き上げる。端から見たら黒い毛玉を抱えたオッサン・・・村で変な目で見られそうだなぁ。


「トルテ、さっきの巨大化と雷属性能力は覚えてる?」

『?』


〈トルテ〉は何の事か分からなそうに首を傾げる。


「え~と、さっき楽しかったんだよね?」

『うんっ!』

「その時、いつもより見えてる高さが違ったでしょ?」

『・・・う~ん、わかんないっ!』

「そうか。」


無意識に能力を発動させていたか・・・いや、まぁ、そうだろうとは思っていたけど、ちょっとだけ期待したかったんだよ。うちの愛犬凄いんですって言いたかったんだよ!!


ブィ~~~ブィ~~~


マナーモードのスマートフォンが鳴った。〈ガンマ〉からである。


「もしもし。」

『御待たせ致しました。〈ラムダナトゥ〉様からの返答です。どうやら〈ラムダナトゥ〉様の神力で掛けた眷属システムを、`一部取り込んでしまった´との事です。』

「は?」

『〈ラムダナトゥ〉様曰く、「いや~まさか魔法の無い世界の生き物に僕の神力が、一部とはいえ負けるなんてね~・・・どうしよ。」と。』


いやいや、うちの愛犬(トルテ)何者よっ!?何、それって神力喰っちゃったとか、そういう話っ!?


『そういう事ですので。又、何かありましたらご連絡下さい。』

「いや、待て!何も解決してない!!」


ツーーーツーーーツーーー


・・・切りやがった上に、かけ直しても出ない。

〈トルテ〉が不思議そうに俺の顔を見上げていた。






1時間程進んだ頃、何かの気配を感じ立ち止まる。〈トルテ〉も感じ取ったのか、気配の方向に耳を向け鼻をスピスピと鳴らす。

歩いていて気が付いたのだが、身体能力向上のスキルはパッシブスキルのようだ。運動不足の、40歳目前の身体なのに疲れが無いし、感覚も以前より鋭敏になっていた。


「人・・・かな?」


森の中を歩きながら感じていた違和感。森の中だし空気が濃いのかと思っていたが、どうも違う気がした。ひょっとしたら魔力なのかもしれないと認識を改めると、森の中の動物や虫などの動きが感じ取れる様になっていた。


『何か来るでし。』


耳がピクピクと忙しく動かし、〈トルテ〉が意思を伝えてくる。

大きく太い木々が光を遮るせいで、足元の植物達は膝に届かない程の高さのものでさえ少ない。視界を遮るものは乱立する木々くらいである。

気配は此方へ向かって来ている。隠れて様子を見るべきか(気付かれていないのが前提だが)、・・・いや、村の情報は欲しいな。


『オシッコしたいでし。』


〈トルテ〉が俺の顔を見上げていた。


「ハァ!?このタイミングで!」

『我慢出来ないでし。』


慌てて〈トルテ〉を地面に降ろす。クルクルと回って足場を固めると腰を降ろしてオシッコをしだす。


『ふ~~~~~~。』

「長いなっ!?」


どんだけ溜めてたんだ?って、ヤバい。完全にさっきの気配から意識を切ってしまった。急いで気配を探る。


「ここで何をしている。村の者ではないな?」


声にゆっくりと振り向く。正直、心臓バクバクだけど相手に悟られない様に構える。あっ、驚いたフリはしておく。


「すみません。森に迷いこんでしまいまして・・・近くに村があるのでしょうか?」


5~6m程離れた木の脇に立っていたのは豹の様な男だった。180cm位だろうか、皮の胸当てや脛当、丈夫そうな布の衣服の下からもしなやかに鍛え上げられた身体つきであろうことが窺える。銀色の髪と浅黒い肌のせいで年齢は測りづらいが、眼光は鋭い。手には直剣を持ち、剣先を此方に向けていた。


「迷い人・・・旅人か?ん?足元にいるのは何だ?」

「あっ、うちの愛犬です。」


足元で俺の顔を見上げていた〈トルテ〉を抱き上げてみせると、少し眼光が和らいで警戒度が下がった気がする。ん?哀れみの目ですか?


「随分と弱々しい眷属だな。」

「はぁ。」


ポメラニアンですから。

眷属って言葉が出てきたってことは、眷属連れは珍しいって訳でも無いとみていいのかな?


「まぁ良い。見たところ武器らしいものも持っていない様だし、村へ案内してやろう。俺は村の狩人〈シンバ〉という。眷属使い(ルーラー)はこの辺りでは見ないが、何処からきたのだ?」


〈シンバ〉と名乗った男は剣を鞘へ納め、警戒を少し抑えて近寄って来る。さて、なんと答えたものか?


「ありがとうございます・・・私の名は〈ロスト〉といいます。あるものを探して旅をしています。人に騙され帰る場所も無くし、天涯孤独の身なのです。」

「それは気の毒なことだ。」


相手の名前を聞く限り、日本人の名前なんて相手に違和感しか与えないだろうから適当に名乗ってみた。

村へ向かいながら〈シンバ〉に色々聞いてみたが、この森は村の隣に広がっているらしい。神の祠がある湖から発せられる神気が、この森に魔物を寄せ付けないのだとか。〈ラムダナトゥ〉は仕事してるんだなぁ。


「そういえば身分証は持っているか?」

「身分証?」

眷属使い(ルーラー)ならギルドカードで大丈夫な筈だ。」


・・・失念していた。この手の異世界転移物では鉄板ネタじゃあないか。冒険者だか探索者ギルドだかは分からないが。神の箱庭で聞いておくべきだった。

慌てて空間庫内のリストを頭の中に展開し検索すると、財布の中に〈ギルドカード〉とあった。いつの間に入っていたのだろう。手に取り出すと、免許証サイズの銀色のカードだった。特に文字も書かれて無い、黒いラインで縁取りがされている・・・?運転免許証が変化されちゃったのか!?


「ほぅ、見たことの無い色のカードだな。少し見せてくれ。・・・形式もギルドカードの物と同じだが・・・。」


〈シンバ〉は首を傾げながらカードを返してきた。何か違うのだろうか。不安しか湧かないんですけど。


「まぁ問題無いだろう。森を抜けるぞ。村の入り口へ回ろう。」


森を抜けると、そこには村があった。

胸の高さ位に作られた柵がグルリと村を囲んでいるのだろう。柵の向こうには夕焼けに照らされた木造の建物が並んでいる。村人の姿、子供達の声が明るい印象を与える。〈シンバ〉に着いて入り口へ歩いていった。


「ワフッ、ヒャン、ワフ~~~~『もう食べれないでし~~。』」


腕に抱えていた〈トルテ〉はいつの間にか寝ていた。うちの愛犬は図太いのかアホなのか・・・今は羨ましい限りである。




お読み頂きありがとうございました。

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