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傘は

作者: 時 とこね




午後の空模様は灰色の日色黄で

雨が降りそうだって思っていたのに

折り畳み傘を忘れて一つため息をついた

嗚呼、こんな日は君の声を思い出す



あの日君が貸してくれた傘は

流した涙で僕を濡らさない為

湿った風が突き付ける宣告ことば

「またここで、出会えたら、必ず返してね」



ひらりひらりと数が宙を舞い

精白の紙切れが君を突き刺した

ひらりひらりと訪れる情景に

蹲って泣き崩れる君が居る



夕焼け白い月は半分に欠けてしまって

重金属の雲が空を這っている

君の事を思い出して一つため息をついた

どうして僕は悩んでいるのだろう



あの日君が流していた涙は

崩れていく未来の欠片だった

冷たい風が突き付ける言葉

「何故だろう、どうして、僕だったのかな」



ぽつりぽつりと雫が垂れて

触れられない悲しみに嘆いた

ぽつりぽつりと頭を垂れて

それでも歩く、僕は何様だ



闇夜の月影は半分に欠けてしまって

重油の暗雲を貫き照らす

強い夜風が突き動かす背中

「何処だろう、今からでも、返さないと」



夕闇 春風 桜の蕾

それでも尚冷たい北風の中

儚く、淡く、脆い夢の糸

手繰り寄せて僕は走り出した



知っているけど、知ってはいるけど

ただ走るしか、それしか出来なくて

曇天、月はまた陰っていく

それでも消えてはいない


君と同じ


どうして?

どうしてもと

繰り返し


ここでも?

どこだろうと

答えなおす


いまでも?

いつだってと

開き直り


夢でも?

夢だろうと

はじめまして



向かった先には、夜風が先回り




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