第3話 桜そして君2
私は昔引っ込み思案でなかなか友達もできなかったの。だからね小学校が終わるとすぐに小学校の近くに住んでいるおばあちゃんの家に毎日のように行っていたんだ。そのおばあちゃんの家の庭にはね、大きな桜の木が一本生えていたの。その桜がきっかけで私は桜が好きになったんだ。どんな時もいつも私は桜の木にもたれかかって本を読んでいたの。流石に雨の時は家の中にいたけど、桜の木を見ながら本を読んでいた。なんかねその木は暖かくて私を包んでくれるようだったの。私はそれがとても幸せだった。でもね、小学校でね、クラスの人気者だった男の子が私のことを好きだって判明したの。その男の子、女の子から人気があったから、クラスの女子のグループに私は嫌がらせを受けるようになったの。よくある話だよね。女の子の嫉妬は怖いからね。それから学校に行くのが嫌になって引きこもるようになったの。でもたまに桜の木に会いたくなったからおばあちゃんの家にはよく行ったんだ。おばあちゃんの家は学校の近くにあるからクラスの女の子におばあちゃんの家に入る私のこと見られちゃったんだよね。それからおばあちゃんの家にまでいたずらされるようになったの。はじめはピンポンダッシュみたいなかるいイタズラだったんだけど徐々にエスカレートしてきて塀に落書きされたりするようになったの。最後の方はみんな、目的を忘れてただ楽しんでたみたいだったけど。最終的にあの家の桜の木を折った子がいたの私はたまたまそれを見ていてものすごく怒ったの。今でも忘れられないくらい。相手の子を殺しちゃいそうなくらい。その時おばあちゃんが出てきて止めてくれたんだけどそれ以来さらにおばあちゃんの家にイタズラする子が増えたの。人殺しの家だって。それ以来おばあちゃんは体を壊すようになったの。おばあちゃんは何も悪くないのに、私のせいなのに、おばあちゃんは私をかばって、あなたは何も悪くないよ守ってやれない私が悪いんだよって、一度も私をせめなかった。そしておばあちゃんはあっけなく死んじゃったの。それ以来桜が嫌いになったの。中学は小学校から遠い中学校に入ったの。そこでは、またああならないように必死に自分を偽って相手に嫌われないようにしていたの。
でもねどうしても辛かったから何もかも捨てて一人になろうかなって思った時に桜を思い出したの。おばあちゃんの家があった場所はもう壊されて無くなっていたんだけど、なんとなくそこに行ってみたの。そしたらねそこに小さな桜の木があったの、もう切られたって聞いていたけど、そこにね30㎝ほどの小さな桜の木が生えてたの。そしたらね、なんか涙がぼろぼろと出てきていろんな思い出が、おばあちゃんとの思い出や暖かくて私を包んでくれるようなあの桜の感触が思い出しちゃっていつまでもそこにいてくれたんだなって、見守ってくれてたんだなって。そう思えたの。今も、何も変わってないけどいつか変われると思って頑張れるんだ。あの桜のおかげで。
「そうか、じゃあさ変わらないといけないよな。居心地の悪いところからじゃなくて、いて楽しいような人たちのところに」
「そうだよね、でもやっぱり怖いんだ、私がまたああなってしまうんじゃないかって」
「そうならないようにしていたら一歩も前に進めないよ」
「そうだよね」
「よし!笠野、僕と友達になろう。なんの遠慮もしないでいいような。」
「え⁈」
「僕は笠野とだったらためらいなく話せるし居心地はいいよ、だからさ笠野、友達になろう」
「あはは、さすがだね田中くん、うん、ありがとう、こちらこそよろしくお願いします」
その日僕たちは友達となった。
少しだけ街は輝いていて僕たちのことを祝福してくれているみたいだった。
「でも田中くん、急だね」
「そうか?」
「そうだよ」
「いいじゃないか、友達はひょんなことからできるもんだよ。案外気の合わなさそうなやつと何年もつるんだりする人もいるしね。」