何コレ
「まさか、な」
目の前にある、変な物体に思わず仰け反ってしまった。大きさは三十センチくらいで、赤色で丸っこい形をしている。表面はつるつるで、所々に黄色の点々がついており、正直気持ち悪い。
それに『赤いやつ』という名前をつけた。しゃがんで、じっくり観察してみる。
「う、動いてやがる」
赤いやつの表面にある黄色い点が、ゆっくりと移動しているのが確認できた。点と点がくっついたり、離れたりして、徐々にその大きさを変えている。一番大きい点は、五百円玉くらいある。水のしずくのようだと思った。しかし、しずくのように透明で立体的ではなく、赤いやつに黄色いシールを貼り付けたような平らなものだった。
「お」
変化が起きた。点が動きを止めたのだ。そのままじっとしていると思いきや、一瞬で二カ所に集まって、二つの点ができた。よく見ると、目のようである。赤いやつに黄色い目が二つ。
「ぬお!」
赤いやつは急に飛び跳ねた。ボールのように弾む。地面に着いているわりに、音が鳴らない。無音で何度か弾むと、やがてまた止まった。
「あ」
黄色い点がなくなっている。赤いやつは、すっきりと赤い色だけになった。つるつるした表面が、なんだか間抜けに見えた。