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ばっちゃの家にて

さすがに1日で文字を覚えると非常に目立つため、その後も何日か村長の家に通いつめて、本を読んでもらったり村周辺の地図を見せて貰ったりと偽装工作を行なっておいた。


そうそう、地図を見せてもらって分かったんだけど、この村の周辺はほとんどが森と山に囲まれていて、僅かな盆地を利用して村を形成しているらしい。また山道もかなり狭いため2ヶ月に一度行商に来る馴染みの商人以外には滅多に人が来ないそうだ。

そりゃ他所の人を見ない訳だよなぁ、商人の方も注文分をまとめて運んでくるだけなので店を開くわけでもなく、いつの間にか来ていつの間にか帰って居るため俺もまだ見たことが無いし。




そして今俺は…………北のばっちゃの家に来ている!


例え教えてくれなくとも、ばっちゃの家には魔法関連の本とかあるかも知れないし、駄目もとで聞いてみるのはありじゃないか?と思い至ったわけだよ明智君………


突っ込みが居ないと、ボケても空しいだけだな。


そんなわけで

「ばっちゃー、魔法ってどうやって使うんだ!?教えておくれーーー」


扉を開けるなりそう叫んだ俺を見て、ばっちゃは磨り潰していた薬草を床にこぼしていた。


「ありゃりゃ、いきなり大きな声を出すんじゃないよ、びっくりするじゃないかい。あんたソイルんとこのガキだね。何でまた魔法なんぞに興味を持ったんだい?」


ばっちゃは、こちらをいぶかしむ目で見ると理由を聞いてきた。


「僕大きくなったら冒険者になるんだ!だから魔法のことが知りたいんだ!」


「なんだい、こないだ来た冒険者どもに憧れたくちかい?止めときな、あんないつ死ぬかも分からない職業に憧れんのは」


そう言って、出て行けとばっちゃは手を振るが、ここで帰ったら何しに来たのかわかりゃしねぇ。

まだまだ粘るぜ!


「ちがうよ!僕はもっと前から考えてたんだ、だって僕は男だし家を継げるわけじゃないから何時かは村を出ないといけないじゃないか。でも農家の子供がいきなり商人や兵士になれるわけないし、まずは冒険者になって色んな人を接するのが良いと思ったんだ」


「おやおや、ガキの癖に割りと考えてるんだねぇ。でもそれと魔法に何の関係があるってんだい?」


「冒険者って色んな仕事をするんでしょ?そしたら魔法を使う奴とかと戦うこともあると思うんだ、だから魔法にどんな事ができるかとか、どうやって使うのかとか知ったほうが良いと思ったんだ」


俺の言葉を聞いて、突然ばっちゃは笑い出した。


「ひーっひっひっひ、あーー面白いことを考えるガキだねぇ。良いよ、あたしは頼まれた仕事があるから直接は教えてやれないが、そこに置いてある本が読めるなら好きに読みな!」


よっしゃ!!直接の指導は無理だったが、知識が手に入ればなんとかなるはずだ!これでも中二病と高二病を併発した頃に、その手の小説を読み漁ってたからな。



■□■□■□■□■□■□■□


ばっちゃの家に入り浸って、早2週間置いてある本は大体読破した。

その結果非常に悲しい事実が判明した。


『地魔法』って超人気ねぇ!!ってことだ!!


そもそも魔法は基本的にはイメージによるところが大きいらしい。

なので初心者用に初級の魔法こそ用意されているが、あとは使い手の創意工夫で作り上げて行くものだそうだ。

だから自分で作った魔法を他人に教えることはほとんど無く、在るとすれば身内に同じ魔法の素質を持つものが生まれた時くらいらしい。

そう行った意味では、ばっちゃはかなり珍しく自分の技術を継承しようと思った人物なのだが、生憎と同じ属性の魔法の才能がある子供がこの村では生まれなかったわけだな。


それでだ、何で『地魔法』が人気無いかってことだけど、いくつか理由がある。

初級魔法として紹介されている魔法は4つあるんだが。


まずは唯一の攻撃魔法『ストーンバレット』これは、他の属性と比較して威力がショボイ、何せ大人が3センチくらいの石をぶつけたのと同じ程度だというからかなりのショボさだ、だったら魔力使わない分投げたほうがましかもしれねぇ。

炎属性なら『ファイアショット』と言って大きさは同じくらいだが、ぶつかった時に小爆発を起こし更に熱による火傷も狙えるという代物だ。何か差がひどいな。


次に防御魔法の『ストーンスキン』これは皮膚の上に石の膜を作って防御力を上げるものらしいが、如何せん薄い石の膜でしかないため剣や猛獣の爪相手では強度がぜんぜん足りないそうだ、しかも薄いとはいえ石を全身に纏うから体力の消耗も激しいらしい。


次は『クリエイト・クレイゴーレム』これを見て護衛キタ!と思ったら大間違いだ。記述によるとクレイゴーレムは動きも遅く、体も土くれで出来てるため防御もそれ程でもないらしい。実際ゴブリンと戦わせても持って30秒くらいだそうな。


つまりどの魔法も使い勝手が悪く、効果も低いため努力してまで極めようって輩もいなかったらしい。そのせいで更に存在がマイナーになって人気落ちるという悪循環、更に使った後に石や土が残るため苦情も多かったと書いてある。



あ?最後の魔法は何だって?『アースアジテーション』つまり耕す魔法だよ!手のひらから30センチ四方の土を撹拌するらしいが、作ったやつが実験したら30メートルほど耕したところで魔力が切れたってよ。


そんな訳で、『地魔法』ってだけで馬鹿にされるから、使えるのは隠すが吉だと……


だがそんなの知ったことか!!俺はどマイナーだとしても『地魔法』を極めて見せるぜ!!なーに、魔法のイメージなら我が黒歴史ノートに幾らでもあるんだ。その内すげぇ魔法を編み出して見せるぜ。


そうと決まれば、さっそく魔法の練習を始めるか!!


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