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結末

戦いが終わり、オークは森へと逃げ帰った。逃げ延びたオークは当初の3割ほどしか居ないため、新たな王が生まれたとしても数十年単位で時間をかけない限り元の戦力となることは無いだろう。


血臭が濃く漂う戦場に、兵士達の勝ち鬨がこだまする。ゴーレムによる突撃と援護射撃が効いたのか、死傷者もこの規模の戦としては驚くほど少ないようだ。


軍の波が割れ軍馬に跨ったコールフィード卿がこちらへと進んでくる。ゴーレム達が自動で迎撃体勢を取るが、右手を軽く上げ抑える。こちらの動きに反応した近衛も柄から手を離すのが見えた。

魔力経由で指示を出し、ゴーレム部隊は俺の背後に整列する。アインとツヴァイは俺の左右に一歩下がって直立不動の姿勢で侍っている。


俺自身も『ガードスキン』を解除し、エイナに教えてもらった敬礼(右拳を腹に当て、左手は腰の後ろに、足を軽く開いて頭を下げるらしい。グラリア軍の敬礼作法だそうだ)で迎える。


「ロックよ、大手柄だな。お前のお陰で被害が少なくすんだぞ」


コールフィード卿が馬から降り、こちらへと歩みを進める。近衛が一瞬止めようとする仕草を見せたが、目で抑えたようだ。


「いえ、この街には知り合いも多いですし、何より私の恋人がいますから……オーク共に一歩たりとも入らせる訳には行きません」


コールフィード卿はふっと笑い、肩を竦める。


「だとしても、良くぞこれだけの人数を集めたものだな?一体どこの者達だ?」


……やっぱりそこは聞かれるか……これ以上隠し立ては出来ないし、話すしかないか。


「閣下、私の後ろに控えているのは人間ではありません」


コールフィード卿を始めとして、周囲にいる者たちも俺の言葉を聞いて御互いに顔を見合わせている。人間では無いと言うなら一体なんだと云うのか。そう問いたいのが雰囲気からありありと分かる。


「後ろに控えているのは私が作り出したゴーレムです。地魔法に土くれより人形を作る魔法があるのはご存知ですね?それを応用し、鋼鉄の体を持つゴーレムを生み出したのです」


「なんと……では、お主は一人で軍隊に匹敵する力があると言うのか……すまぬが俄かには信じれぬ、証拠を見せてもらえるか?」


コールフィード卿の困惑した顔がこちらを見つめる。ギルドマスター経由である程度の情報を持っては居るのだろうが、証拠も無しに部下に納得させるのは不可能だろうしなぁ。ゴーレム達を人間として誤魔化すと、今回の件での褒賞が大変な事になりかねないからここは協力するかねぇ。


背後のゴーレムから一体を呼び出し、俺の目の前に立たせる。呼び出したのは重装型ゴーレムで周囲の騎士よりも更に頭一つ分大きい、同じくらいの背丈なのは勇猛で名高い騎士団の副長位だろうか?まぁそれはともかくとして、まず人間で無い証明として兜を取らせる。当然中には何も無いため首なし騎士の出来上がりだ。


首なし騎士を見て、デュラハンを連想した騎士の一部が剣を引き抜くが、コールフィード卿に一喝される。


「バカモン!!良く見んか!デュラハンであれば幽気が出ておるじゃろうが!」


コールフィード卿の言う通り、俺も実物は見たことが無いが、デュラハンの様な高位のアンデットは、冥界の気である紫色の陽炎の様なオーラを纏っているそうだ。対してゴーレムはそんな物は纏っていなし、そもそもデュラハンが500体も居たらこの場にいる騎士団が全滅する気がする……


「ふむ、よく出来ておるのぅ。ロックよ、これはお主の意思で消せるのかね?」


「ええ、試しに消して見ましょうか」


そう言って、右手をゴーレムに翳すと、ゴーレムの外装が消滅し右手には核である魔鉄鋼が残った。核があると再度ゴーレムを作るときの消費が減るためとって置こうか。残ったゴーレム部隊も一緒に解体し、核は鞄に詰め込んで置いた。


コールフィード卿は興味深そうにその様子を眺めていたが、俺の片付けが終わったと見るや、側近に指示を出し、戦場の後始末を任せたようだ。今回の襲撃では多くの騎士や兵士、冒険者が防衛に参加したが、領土が増えたなどのメリットはかけらも無い。そのため、オークから素材と装備を回収し、それを売却することで戦費に当てることになるだろう。

出来るだけ不満を抑えるように分配するのは頭が痛い事だろうが、これが為政者の仕事だもんなぁ。


「ロックよ、詳しい事を聞きたい故、城まで来てくれるかの?」


当然そうなるだろうと思っていたので、特に気負うことも無く頷くとコールフィード卿について城へと向かうのだった。



■□■□■□■□■□■□■□



それから色々な話し合いがあった。俺があくまで冒険者の立場で参加したことや、それに伴う貴族側としての参戦に対する褒賞の辞退(代わりにファーウッド村に対する補償を厚くしてもらう様に裏で調整して貰った)

冒険者としての報酬として、ランクアップの手続き(ギルドマスターはAランクまでの一足飛びを一時は考えたようだが、高ランクの依頼に対する経験不足などを考慮し、Bランクに抑えてもらった)


また、今回の戦で俺に対して多数の引き抜き工作や専属護衛へのスカウト、貴族からの婚姻の申し込みによる身内への取り込み、などが予測されるため、貴族側の牽制はコールフィード卿が後ろ盾となってのエイナとの婚約発表、またそれに伴い2年間の冒険者生活の後、ハウルガン家を継いで騎士となる事が発表された。

ギルド側はギルドマスターのお気に入りとすることで、有象無象からのちょっかいを牽制すること。それから俺を指名しての期限を切らない護衛依頼など怪しい依頼の排除への協力などが決まった。


それと、俺の戦力をあえて情報公開する事で、俺や家族に手を出すことを抑えると言う手法も取られる事になった。いくらコールフィード卿が後ろ盾とは言え、俺に無理やりイエスと言わせればいいと思う輩がいないとは限らないからだ。

とりあえず、公開した情報は二つ『1時間当たり1000騎のゴーレムを作る事が出来る』事と『身内なら半径200キロ以内にいる場合特定可能(一部ダミーで実際は倍はいける)』事を脅しとして出させてもらった。参考に『傭兵王国 ルーグ』の正規兵全戦力が約4万との事なので、40時間で国家と同数兵員で戦争が出来る者を怒らせたら、どうなるか……これだけでも十分な牽制となった事だろう。





そして………


2年間の間に様々な事があった。ファーウッドの左腕を失った男の子のために、『霊薬』の素材である『月光の蜜』を求めて森の中心部に潜ったり、東の山脈の少数部族のために吹雪の中を食料を届けに行った筈が何故か温泉を掘ったり、俺の親戚枠を狙ってアリアを無理やり娶ろうとした馬鹿貴族をぶん殴ったり、それが原因でコールフィード卿の孫とアリアが婚約したり(すげぇ素直な良い子のため、殴ることも出来ず黙認中)

建築会社を作って、様々な技術(整地や測量、橋梁の架け方や俺が知る限りの工法の伝授、建材なんかの知識もあったな)を資料として纏めて、次代へと伝える手伝いをしたり、地魔法の使い方だけでなく、他の魔法にも共通する魔力の節約方法や便利な使い方を、アレ以来一気に親しくなった魔法使い達と研究したりと忙しい日々を送っていった。


ああ、それから戦の後から二つ名が付いたんだよなぁ。『人形使い(マリオネットハンドラー)』や『地の守護者』あと俺は認めてないが……『妖怪 玉置いてけ』……主に盗賊なんかに有名らしい……


そんな俺だが……今最高に役立たずな気分を味わっている……


うろうろと落ち着きも無く歩いたと思えば、座ったり立ち上がったりと自分でも何がしたいのかサッパリ分からねぇ。


「ロックはん、気持ちはよー分かるけどな?あんたがどっしり構えとかんとどーすんねん。こんな時男は役にたたへんのやから大人しゅう座っとき」


プミィさんに宥められソファに座り込むが、落ち着かねぇ……せめてエイナかエマのどっちかが居れば違うんだろうけどなぁ……



そんな益体も無いことを考えていると、不意に屋敷が静かになり……次の瞬間、全体に響き渡るような大きな泣き声が聞こえた。

それを耳にしたと脳が認識した時には、既に足は走り出していた。部屋を空けると中には………それぞれに小さな命を抱き、嬉しそうに微笑むエイナとエマの姿があった。


この時が、俺が真の意味でこの地に生まれ変わった事を感謝した日かもしれない………


続きを期待されている方もいらっしゃる為悩みましたが、設定も甘くほぼ即興に近い状態で書いている現状では、これ以上続けても着地点を見失ってグダグダになりそうでしたので、一旦ここで物語を終わらせようと思います。

また、設定を見直し、プロットを作りこんで書き直すかも知れませんがその時はよろしくお願いいたします。


初めての書いた小説に、多大な評価を頂きありがとうございました。

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