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王の最後

分割の3つ目です

オーク・キングの元に向かおうとする者共は、ゴーレム達の壁によって防がれていた。武装を突撃騎兵から重装歩兵へと変更し、周囲の圧力をことごとく跳ね返す。そして、アインは魔力越しにゴーレム達を指揮しつつ、オークの集団に潜む指揮官を縦横無尽に駆け回り的確に打ち崩していく。


ブギュルゥ


オーク・キングの口から威嚇と警戒の吐息が漏れる。まぁそうか……自らの乗騎を一撃で叩き割った相手ではなく、それよりも小さな相手が、たった一人で自らと対峙しているのだから警戒もするか……


腰の剣を引き抜き、盾を構える。今回は特別だ、武装も強化するか……『ガードスキン』の力場に剣と盾を取り込む、剣はヒヒイロカネを中心素材としてより柔軟にして頑強に、盾はアダマンティンを主として強度を重視する。

と言うか、オーク・キングの装備からして、たかが鋼鉄製程度で受け止めれるとは思えないしなぁ。


こちらの武装が変化していくのを見て取ったオーク・キングがより警戒を強くする。背負った大斧を引き抜き、頭上で振り回すと小手調べの一撃を振り下ろして来た。

流石にこの位置からならどうとでも避ける事は出来るが……あえて右斜め前方に駆け込む事で、避けると同時に間合いを詰める!!あれだけの重量物を振り下ろせば、大きな隙が出来る。そこに合わせて一撃を入れさせて貰おうか!!




だが、それは叶わなかった……振り下ろした大斧が地面に激突する直前、オーク・キングが在り得ない事をした……遠心力まで加えて勢いの付いた大斧を無理やり止めると、走りこんでいた俺の脇腹めがけて横薙ぎにして来やがった!

不意をつかれ、横薙ぎの一撃がヒットする。幸い柄の部分が当たった事もあり大きく飛ばされるが、きっちりと受身を取ったためダメージは無い。ふははは、伊達に長年プロレスファンはやってねぇぜ!!技の練習前にはみっちり受身の練習と柔軟、これ大切!


平然と立ち上がった俺に対し、オーク・キングが訝しげに首を捻る。まぁ相手からすりゃ当然かねぇ……ぶん殴った手ごたえはバッチリ有るのに、相手にまったくダメージが無いんだもんなぁ……


しかし……なんだあの力は、いくらオークが力自慢とはいえ……あのサイズの武器を苦も無く自在に止めるとは……少し深く観て見るか(・・・・・)


-----------------------

名称:オーク・キング

氏族:ゲランバル氏族


筋力:850 敏捷:117

頑強:633 魔力:152

器用:85


説明:『黒緑の森』のオーク氏族『ゲランバル』の王

   暗黒神の加護を受け、筋力や頑健さが増大している

   元々オークの中でもずば抜けた固体であったが

   加護を受け、その力は巨人族に伍する程である

   また、その身に纏う武具は森に入ったA+ランク

   冒険者を討ち破り奪い取った物でもある

-----------------------


……なんつう力だ、気による身体強化を含めても力じゃ負けてるか……まぁ俺は魔法使いだからなぁ。接近戦は苦手な部類だし!!地道に削り切ってやろうかねぇ!


再び剣を構え、今度はこちらから突っ掛ける。オーク・キングがタイミングを合わせ、前方全てを薙ぎ払うかの如く斧を振り回す。俺は斧が当たる直前で前転ぎみに斧の真下に飛び込み、そのままオーク・キングの股下をすべり抜けると同時に左膝に一撃を入れる。


ガキィン


甲高い音が響き、腕に痺れが走る……振り向き、膝を観察するが……薄っすらと白い線が入っているだけだった……あの鎧、無茶苦茶硬いな……察するに『アダマンティン』か『黒鉄鋼』と呼ばれるドワーフ族の秘伝より生まれる金属製だろうなぁ。

とすると、体への攻撃は効果が薄いか……なら狙いは顔面だが……当然警戒してるだろうしなぁ。


そこからは、体力勝負だった。強力な大斧を盾で逸らし、かわし、僅かな隙を見ては関節部を狙って少しずつダメージの蓄積を狙っていく。オーク・キングの戦法は一言で言えば『粉砕』、ただひたすらにその圧倒的な筋力でこちらを捕らえ挽肉にしようと、唸りを上げる斧が体の数センチ傍を走り抜けていく。

だが、攻めを受け流し、耐えるのはグラズさんとの訓練で慣れ親しんでいる。そして気魔法は身体強化や回復力のUPだけではなく、気の蓄積も行える。今までコツコツ練り上げ溜め込んだ気の総量は俺の通常時の5倍に匹敵する。これをスタミナタンクとして使う事で、体力の心配は要らない。更に放出した気の一部を周天にて回収する事で、消費を極限まで抑えることが出来る俺に、いくら体力自慢とは云え付いて来れるかな!!


オーク・キングとの殴り合いが始まって既に2時間が経っている。その間アインが指揮官を潰しまわっていた事、俺がオーク・キングをここに縫い止めていた事が功を奏し、軍隊ではなく……ただオークが大量に居るだけ……という状況は、騎士団の戦況に大いに役立ったようだ。周囲のオーク達が次第に潰走を始め追撃戦の様相を呈した様だな。

ここは可能な限りオークの数を減らしておきたい所だし、アインに命じてオークの足止めを行わせる。オーク達が向かっている森の前の地面を一時的に泥沼に変え、足首まで埋まった所で普通の地面に戻すとどうなるか……答えは足首が地面に縫い止められた上に背を向けたオークの集団と言う訳だ。


オークの軍勢に対しては決着が付いた……なら、オーク・キングとの決着も着けるとするかねぇ!!



オーク・キングの方でも周囲の状況を悟ったのか、それとも何時までも当たらない斧に苛立ったのか雄叫びを上げる。正直この距離だと鼓膜が破れそうな大音量だが……どうやら向こうも本気になったみたいだな。今まで無かった魔力の気配がして来やがった。


「ドウヤラキサマヲヤラネバ、テッタイモカナワヌヨウダナ。デ・ロイアヨリサズカッタチカラ……トクトミルガヨイ!」


そう叫びと同時、オーク・キングの口内に黒い光とでも表現すればいいのか……闇の塊が現れた。塊はオーク・キングの口から放たれると、一直線に俺の胸目掛けて飛び込んできた。咄嗟に盾で防ごうとするが……こいつの奥の手がたかが盾程度(・・・・・・)で防げる物なのか?

直感的に受けるのは不味いと判断し、ぎりぎりで半歩分、身をかわした……闇の塊は無音で盾と左肩の一部を削り取り、そのまま後ろに伸びていく。俺の背後で金属の塊が地面に落ちる音がする。背後のゴーレムに意識を共有すると、右肩とその周辺がごっそりと無くなっていた。


ゴリッ ボリッ


前方から異様な音が聞こえてくる……オーク・キングの口元が蠢き、何か硬いものを咀嚼している様だ……喉が動き咀嚼していたモノを飲み込むと


「ヨイテツヲツカッテオルナ。ナカナカニウマカッタゾ」


そう言って醜い面を更に醜悪に歪め笑うオークの王、あの魔法をなんと呼ぶべきか……さしずめ『悪食』とでも呼ぶとしようか。左肩の傷口は、盾の穴と比べても歪だ。俺自身の魔力による抵抗とミスリルで大分威力はそぎ落とせたようだ……なら、厚みを変えれば防げるか?


オーク・キングからの『悪食』が次々と飛び交う。弾速自体はそこまで早くないが、遠距離攻撃が可能だとなかなか懐に飛び込み難いな……


「グフゥ、マッタクスバシッコイヤツダ……キサマモセンシナラ、ドウドウトカカッテコイ!!」


……だが、断る!避けれるのに何で堂々と受けとめにゃならんのだよ……しかし、連射でかなり魔力を使った様だなぁ。疲労から全身がびしょ濡れになるほどの汗を掻いたが故に、足元から忍び寄る罠に気が付かなかった様だな。


「イイガゲンニクタバレ!!」


オーク・キングが叫び『悪食』を打ち出す!『ガードスキン』の比率を変え、ミスリルで分厚く覆われた盾に更に俺自身の魔力を込め、飛び込んでくる『悪食』をぶん殴る。


消し飛んだ奥の手を見て動きが止まった所を見逃さず、右手を上げ握り締める。


「お前の男は死んだ!!『ボールクラッシャー』!」


鎧を伝い、隙間から進入した泥がオーク・キングの急所を包み込む。汗とは違う違和感に気が付いた様だが、もう遅い!!泥は刃となり玉と棒を切り刻んだ。


あまりの衝撃に呼吸すら止まるオーク・キングに一気に肉薄し、右手の指を鎧の胸当ての隙間に差し込む、捻るように体を入れ替え、右足でオーク・キングの右脛を蹴り上げ、腰を跳ね上げる。サイズが違うため変則的な形だが一本背負いの要領でオーク・キングを宙に投げ飛ばす。

1トンを越す巨体がふわりと浮き上がり、本来であれば掴んだままの右手を途中で離すことで、空中に逆さまに投げ飛ばす。更に体勢を整え、右手に魔力を集中させる。地の魔力が俺の右腕を覆い、一つの形を作り出す。


それは、身の丈ほどもある杭とそれを支える発射台、先端を冷静にオーク・キングの頭部に合わせ静かに呟く。


『パイルバンカー』


その瞬間、凝縮された魔力を推進力として、巨大な杭が暴力的な勢いで打ち出される。杭は至極あっさりとオークの王の頭部を打ち砕き、超加速による水蒸気を発した。


数瞬遅れてオーク・キングの巨体が地に叩きつけられる。これで……決着だ!


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