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迎撃戦

またもや流血表現があります。苦手な方は読み飛ばしを

ごちゃごちゃと纏りも無く好き勝手に動いているオーク達だが、村の周囲を囲む城壁に困惑しているようでブギィブギィと喧しい。オーク・エリートが一際大きく叫ぶとようやく少し静かになった。オーク・エリートは俺を指差しニヤニヤと厭らしく笑うと、ピギィーと甲高く鳴いた。どうやらまずは俺を甚振る(いたぶる)気らしいな……


ついでにチェックもしていたが、実のところ俺が壁の外にいるのは作戦の内だ。オークは目の前に獲物がいると理性が著しく下がる性質がある。まぁ馬の目の前にニンジンをぶら下げる様なもんだと思えばいい。つまり俺が囮になり罠の位置まで誘導することで敵の戦力を削る作戦という訳だ。

俺は。そのためにも恐怖に顔を歪めた振りをし、慌てて踵を返して逃げ出す演技を開始した。オーク・エリートとその護衛らしい2匹のオーク・ファイター以外は全て俺を追いかけて走り出したようだ……人間一人に全力とかさすがオーク!!


この村自体が森にかなり近い位置に在るため、彼我の距離は200メートルほどだろうか?このくらいの距離なら足がもつれる様に走れば丁度良さそうだな……



オーク達が最初の位置から、半分ほど走ったところで最初の罠が作動した。『ピット』を使って、地上から深さ2センチの位置から穴を掘り、直径3メートル、深さ15メートルの落とし穴を5つほど(時間の関係でこの数が限界だった)掘っておいた。更に穴底には『クリエイトマテリアル』で作り出したタングステン製の杭を15センチ間隔で満遍なく立ててある。

そこに先頭を走っていた5匹が見事に落ちたようだ、更に止まり切れず、もう2匹が落ちたが他は上手い事避けたようだな。


■□■□■□■□■□■□■□


穴底はまさに血の海であった、股間から脳天まで貫かれ即死したオークは運がいい方だろう。

あるオークは偶然にも致命傷は回避できたものの、手足や腹を杭で貫かれ身じろぐ度に大量の出血が起こっている……失血死となるのも時間の問題だろう。

あるオークは杭に喉を貫かれたが、有り余る体力が仇となり即死することが出来なかった。それ故気管を塞がれる事による窒息によりその生を閉じることになる。

そして同じ穴に落ちた二匹目のオークは、下敷きにしたオークにより致命的な怪我を負うことは無かったが、あえて土を緩く変質させていた壁面が落下の衝撃と地上を走るオーク達の振動で崩れ去りそのまま生き埋めとなった。


■□■□■□■□■□■□■□


門のすぐ近くまで走りより、今度は門扉を閉めようとする振りを行う。その上で間に合わないと諦めた様に門の奥へと走りこむ。オーク達は落とし穴に仲間が落ちたことで少し士気が下がったが、門が閉まらなかったことに再び興奮したらしい。どうせ村を襲った後の女のことでも考えているんだろう……オークやゴブリンなんかは基本的に女なら何でもいいと思っている奴等だ。同種族だけではなく人間や獣人、はてはリザードマンのメスも性の対象とかアグレッシブすぎるだろう……

オーク達も門のすぐ近くまで走り込んできたので、次の作戦が始まった。村の猟師や自警団で弓を扱った事がある者、あとはプミィさんと千鶴さんが城壁の上に姿を現した。それぞれが弓を構えバラバラに矢を放つ、猟師や千鶴さんの矢はそれなりの速度だが、他の矢はオークの分厚い皮膚に刺さらないものもあるくらいだ……皆休まず撃ち続けているが、威力が弱いことを感じたオーク達は斧で払うことを止め、再び俺の追跡を再開した。

走り出すオークの最後尾で悲鳴がほとばしる。そこには眼窩より飛び込んだ矢じりが脳を貫き倒れ伏したオークの姿があった。さんざんに弱い弓を浴びせ油断したところに本命の一撃であるプミィさんの『ウィンドロード』を叩き込む、だがオーク達はそれをただの偶然と思いそのまま走り続ける。そのままプミィさんと千鶴さんの二人で矢を急所に打ち込み4匹を倒すことに成功した。


門の中は内壁で左右を挟んだ通路状となっており、奥は右側に直角に曲がっている。俺は通路の真ん(・・・)を走り抜け、奥へと飛び込む。奥側にも門が存在し、俺が門を抜けると同時に門扉を閉じ、(かんぬき)を掛ける。後一歩の所で俺を取り逃したオーク達が門を激しく叩いているが今は無視だ。

俺は門を抜けるとすぐさま城壁へと上り、外門へと走る。外側の空いている口を『ロックウォール』で塞ぐ事によって門の内側を密閉(・・)することに成功する。そう……この門は内壁の天井部分をガラスで覆っているため、一見するとただの内壁だが前後の門を閉じる事で、密閉された箱状になるのだ。


通路の内側は走り込んできたオークたちにより、地面に敷き詰めたある物が舞い上がり内部を白く染めている。走ったことで息が荒くなったオークたちはソレを思う存分吸い込むことになる……


数分後、そこら中でいびきを掻くオークたちの姿があった。


これは俺の黒歴史の内の一つ、「腹が減ったからとりあえず茸を齧ってみる」で中ったネムリダケの効果だ。この村でも睡眠導入剤代わりに少量の胞子が置いてあったので、プミィさんの植物魔法で促成栽培し大量生成した胞子を敷き詰めて置いたのだ、俺が走る予定の真ん中以外にな。

ソレをオーク達が踏み荒らすことで、大気中に舞い上げ門の中を密閉することで外に漏らさないようにした訳だ。城壁の上から覗き込みオーク達が寝ていることを確認したプミィさんが小次郎さん達へと合図を送り、口に布を巻きつけた小次郎さんと手に槍を持った男達が門の中へと入っていく。


手に持った槍をオークの耳の穴に当て、体重を掛けて一気に脳まで穂先を突き込む。下手に喉や心臓を狙うとオークは即死せず被害が広がる可能性があるので、男達には脳狙いで止めを刺してもらっている。

ただ、小次郎さんは両手剣でオークの首を両断出来るようなので、好きにさせているが……



とりあえずここまで、かなりの数を村人と共に倒したからな……これなら言い訳も立つだろうよ。あとは何が起こってるのか今一分かってないオーク・エリートをぶちのめせば、一件落着だな。

城壁から飛び降り、オーク・エリートに向かって歩みだす。オーク・エリートは一人でこちらに向かって来る俺を見て、馬鹿にされたと感じたようだ。盛んに甲高い声を上げている上に顔が真っ赤になっている。城壁の上では千鶴さんたちが不安そうに見ているが、オーク・エリートを俺が殺るのは俺自身が言い出したことだからな。


オーク・エリートはランクにしてC+、俺の身体能力はBランクに近いが技術面でどれほど成長できたのか……ソレを確かめるためにもオーク・エリートと一対一でやって見たいのだ。そのためにも先ずは側近のオーク・ファイターを除かないとなぁ。


『クリエイトゴーレム』


俺の左右の地面から2体のアイアンゴーレムが生まれ出る。身長は2メートルほどでアインやツヴァイよりも分厚い体つきをしているが、形状的にはレスラーに近い形だ。このゴーレムはいくつか作ったテンプレートの中で、主に格闘向けの能力を持つゴーレムだ。

唐突に現れた2体のゴーレムにオークたちは動揺するが、戦士としての本能が勝ったのかオーク・ファイターが襲い掛かってきた。それぞれが手に持った大斧を振りかぶり上段から力任せに振り下ろす。ゴーレムたちは振り下ろされる斧の中にあえて踏み込み、振り下ろす腕を掴み取ると、肘を掴んだ右腕を支点に掴んだ手首を外側に捻るように曲げ、関節を決めながらオークを投げ飛ばした。

転がった衝撃で斧を手放したオークを、それぞれのゴーレムが掴み上げ宙へと放り投げる。追いかけるように飛び上がった右のゴーレムは、オークを逆さに掴むと、首を肩に固定し、両の膝裏をがっしりと固定する。左のゴーレムは同じくオークを逆さにし、両わきを足で踏み足首を掴む。


わー……すげぇ見た事ある……自由にやらせたらとんでもねぇ事になったなぁ……この流れは、やっぱりアレなのかなぁ


予想違わず、キン○ドライバーのゴーレムBの上に○ン肉バスターのゴーレムAが合体する!!そして轟音と共にオークたちは止めを刺されたのだった……



ま、まぁ邪魔者は片付いたし……気を取り直して行くとしますか!!


ゴーレムたちを左右に退け、前へと進み出る。オーク・エリートは両腰に吊るしてあったバトルアックスを抜き放ち油断なくこちらを伺っている。先ほどまでの激昂は鳴りを潜め、冷静にこちらの戦力を分析しているようだ……さすがにエリートと呼ばれるだけはある様だな


しばらく睨み合いが続いていたが、オークが唐突に口を開いた。


「デ・ロイアヨ!!ワガショウリヲウケトリタマエ!!」


天を仰ぎそう叫ぶと、右手の斧を振りかぶり襲い掛かってきた。


オークが喋ったことに驚きつつも、左手の盾で斧の一撃を受け止める。盗賊やゴブリンとは比較にならない衝撃が走るが、鍛え上げた筋力と常に練り上げ循環させている気によって、よろめく事無く止めることに成功した。

よほど力に自信があったのだろう、オークは豚面を更に驚愕に歪ませながらも、体は次の動作へと繋げていく。水平に打ち込んできた左手の斧を、ロングソードで下から打ち上げる様に弾く、だがその頃には左の斧を振るった反動を利用し引き戻した右手の斧がこちらを狙っていた。

オークの振るう斧を時に受け止め、時に弾き、隙を窺うが……既に数十合も全力で打ち合っているというのに、まったく動きが鈍る気配が無い。まったくとんでもない体力だな……


オークの斧は切れ味は鈍いが、その分頑丈だ。こちらのロングソードも強度を重視した物だから持っている様なものの、これ以上の打ち合いは不味いかも知れんな……ごく僅かな隙を縫って多少の手傷は与えているが、この装備ではCランク相手はまだ厳しかったようだな……

仕方ない、少しばかり強引に行かせて貰うか。何度目かの両手の斧による一撃を受け止め、オーク・エリートの動きが一瞬止まる。さっきまでならここで剣による一撃を見舞うのだが……ソレを分かっているためか相手もこちらの右手に視線が集中している。


だが、今回はこっちだ!!右足を踏み込みオーク・エリートの左足の小指を踏み抜く!!ブーツの下から骨を踏み砕く感触が伝わり、オークの口から絶叫が上がる。痛みに耐え、斜めから打ち込んできた斧を盾の表面で受け流し、振りぬいて動きが止まった右手首目掛けてロングソードを振り下ろした。

鮮血を飛び散らせながら手首が宙を舞う。だがそれでもオーク・エリートは残った左腕を振り上げ反撃を試みる。体を入れ替えがっちりと盾で受け止めると、オークの左の膝を断ち割る。自重を支えられなくなったオークが膝をつき、横なぎに振るったロングソードがオーク・エリートの首を刈り取った。



ふぅ、さすがにC+ランクは伊達じゃなかったなぁ……返り血に染まった顔を拭い、周囲を探査するが……どうやらこれで終わりのようだな……後は連絡にやった早馬から騎士団が来るまで、見張りを続ければ問題ないだろう。


ああ、流石に疲れたなぁ。


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