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護衛依頼

ジョッシュさんたちは予定通り、トト村まで行くそうなのでお願いして出発を一日だけ待ってもらうことにした。エイナやエマさんに協力してもらいアリアの服や靴、それから両親に村では手に入りにくい調味料や冬に向けての防寒具を送り、ついでに元気でやっている旨をしたためた手紙を届けてもらう為だ。


エイナとエマさんはそれは楽しそうに服を選んでいるが、すんません……上着はともかく肌着の類を選ぶ現場に男が居るのは拷問だと思うんです……


エマさんがこちらを振り返り

「妹さんたしか13でしたっけ?それだったらまだ背も伸びるでしょうし、少し大きめの物を選んだほうがいいと思うわ」


エイナも同意の頷きを返しつつ、手元に広げたロングスカート(藍染の生地にガーベラの刺繍がアクセントになっている)を確保しつつ、今度は毛糸のパンツを物色しているようだ。

「そうですわね。それと、これから冷え込んで来ますから保温に適した物を選んだほうがいいと思いますわ。足腰の冷えは大敵ですもの」


うん、ちゃんと実用的でかつ可愛い物を選んでいただけるのは非常にありがたいのですが、手伝ってもらう御礼に自分の分も選んでいいよと言ったら、二人して勝負下着を見せに来るのは止めてください……周囲の目が痛いんです……


送る分の買い物が終わって家に向かう帰り道、ふと露天の一つが目に留まった。豊穣祭でペンダントを買ったあの露天だ……あの時はエマさんの分は買ったけど、エイナのはよさそうな物が無くて結局お土産を買いそびれてしまったんだよな……

ふらりと立ち寄ると、店の親父が俺に気がつき声を掛けて来た。


「おや、あん時の兄ちゃんじゃねぇか。今日は彼女とデートかい?……」


後ろにいるエマさんとエイナを見て、親父が固まっているが……いやね、言いたいことは分かるんだけど俺を詐欺師みたいな目で見ないでくれる?


この親父さん露天やってるのが不思議なくらい細工が上手いんだよなぁ。並べられている物を見ていると、よさそうな物を発見した。

ハート型にカットされた宝石を柊の花が包み込むように装飾されたリングだ。宝石はそれぞれ『タンザナイト』と『レッドトルマリン』で『タンザナイト』の方が少し石も大きめでその分値段も上のようだ。

エイナに豊穣祭で買ってあげれなかったことや、決闘前の話し合い?できちんと我慢できたことのご褒美もかねて『タンザナイト』を、エマさんには普段からレインと協力して旨い物を食わしてくれているお礼として『レッドトルマリン』のリングをプレゼントした。


二人ともナチュラルに左手の薬指(こっちの世界でも結婚指輪はそうらしい)に填めてるし……まぁ実質はその通りなので問題無いっちゃ無いのか?


その後、やたらとご機嫌になった二人と腕を組み家路へとついたが、そこかしこから舌打ちが聞こえるのが非常に不気味だねぇ。



■□■□■□■□■□■□■□



荷物を託してジョッシュさんたちを見送ったあと、俺たちもギルドへと戻ったが、なにやらプミィさんから提案があるらしい。


「なぁロックはん、わしらもそろそろ護衛依頼を受けてもええんちゃうやろか?ロックはんもE+やし、試験の内容によっては野営する必要もあるかもしらへんし」


ふむ、今まではいろいろなパターンの連携を訓練する為に、近場の依頼を受けていたが、確かにそろそろそっちの方面もやっていいかもな。『無限の鞄』も買ったから、物資の制限がかなり緩くなったしな。

「そうだな、そろそろ受けてもいい頃合いかもしれないな。よし!なら良さそうな依頼が無いか探してみようか」


そう言って、プミィさんと共にクエストボードを確認していると、一つ良さそうな物が見つかった。


-----------------------

依頼:ファーウッド村への護衛

依頼者:ジョーンズ

内容:グラリアから2日半の位置にあるファーウッド村までの行商の護衛を頼みたい。

   森の近くの街道を通るため魔獣に襲われる危険あり

人数:4~5名を希望

   ※現在3名採用中(ギルド情報)

報酬:一人当たり一日銀貨3枚 食料などは持込とする

   途中のレスト村での宿泊費はこちらで負担します

期限:青の月1日まで

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ギルドからの追記では既に3名決まっているらしいな、俺たちで決まれば今日で赤の月が終わるから丁度いいかね。メモをはがしカウンターに向かうと、ニヤニヤ笑いの金髪ポニテさんが待っていた。


「うふふふー、ロック君見たわよ~エ・マ・の・く・す・り・ゆ・び!お陰で今日はエマが使い物にならなかったじゃない~」


俺は苦笑いを浮かべつつ

「ははは、エマさんには日頃からお世話になってますから……まぁあんまり弄り過ぎないようにお願いしますよ?」


金髪ポニテさんはけらけらと笑いつつも、いかにも分かってると言いたげな顔をしているが……あの顔は、分かってて弄る気の顔だ!!現にプミィさんが震え始めている!なんかトラウマでもあるのか?


「えーと、これを受けたいのですが」


メモを手渡すと、金髪ポニテさんは手早く手続きをしてくれた。


「えっと、ジョーンズさんは、『商業区 3番街 17』にある『黄金の雄鹿亭』に居るそうだから、訪ねてみてね」


俺は頷きで返すと、ギルドを後にした。その足でプミィさんと共に『黄金の雄鹿亭』へと向かい、ジョーンズさんに会ってきたが、なかなかの男前だったな。独立したばかりだが、今までの実績を評価され、修行先の大店からレスト村とファーウッド村の販路を譲り受けたらしい。商人がただで販路を渡すわけが無いから、おそらく何がしかの利益になると判断したんだろうが、俺には想像がつかんな。

プミィさんがフェアリーであることと、俺が若いことで少し警戒されたが、どちらも魔法が使えることを伝えると採用された。

その後は、野営のための準備として、毛布や鍋、保存食なんかを買い込んでおいた。ロベルトさんたちと移動してたときは、見てるだけだったが使ってた物は全て記憶しているので、それらは一応全部そろえてみたが、俺たちの場合は使わない物とかあれば、減らしたりも検討する必要があるなぁ。


往復で5日掛かる為、依頼で家を空けることをエイナとエマさんに伝えたら、なぜか明日の朝のナデナデ時間が3倍に延びました……早起きしないとなぁ



■□■□■□■□■□■□■□



翌朝、集合場所に到着するとジョーンズさんが積荷のチェックを行っていた。衣類や食料品がメインぽいな……それと少量だが武器も積んでいるようだ。


「ジョーンズさんおはようございます」


ジョーンズさんは注文書に落としていた目を上げて、こちらに顔を向ける

「ああ、おはよう。これで4人だね、後はドルフさんだけかな?あっちに一緒に護衛をしてくれる二人が居るから顔合わせをして置きましょうか」


ジョーンズさんの先導で既に到着していた冒険者と顔合わせをする。

「小次郎さん、千鶴さん、こちらが一緒に護衛をして下さるチーム『豊穣の大地』のロックさんとプミィさんです。ロックさん、プミィさん、こちらが小次郎さんと千鶴さんです」


紹介された二人はどちらも獣人の冒険者だった。小次郎さんは狼族の中でも大陸の東に住む水狼族の男性のようで、名の通りアクアブルーの髪を後ろで一本に束ねている。武装は背にグレートソードを背負い鎧は着けていないようだ……澄んだ湖底のような瞳が特徴的な男性だ。ちょっと髭が似合ってないけど……

千鶴さんは黒猫族のようだ、黒猫族は南大陸を1年掛けて巡る遊牧民のような暮らしをしている種族だが……確か狼族とはかなり仲が悪いと聞いていたけど……まぁ何事にも例外はあるよな。容姿は黒猫の名の通り艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、前髪はぱっつんって言うんだっけ?日本人形のような感じで清楚な雰囲気だな。目は糸のように細く開いているのか閉じているのか分からんが、白雪を思わせる肌と相まって儚げな雰囲気だな。エイナやエマさんとは別の意味で美人な感じだ。


「おはようございます。俺はロックと言います。ランクはE+です。見ての通りロングソードとシールドを使いますが、地魔法も使えます」


続けてプミィさんも

「わしはプミィちゅうんや、ランクはE-で、見ての通りでフェアリー族やで。主に風と植物を操る魔法が使えるで」


プミィさんのフェアリー発言に少し吃驚していたようだが、小次郎さんから自己紹介をしてきた。


「拙者、小次郎と申す。D+の冒険者でござる、獲物はグレートソードで一撃離脱による戦法を得意としてござる。それと水狼族ゆえ僅かではござるが治癒術が使え申す。それとこっちが……」


千鶴さんがこちらに頭を下げつつ

「お初にお目にかかります。千鶴と申します。F+ではございますが此度は兄様と一緒ということで参加させていただいております。猫族ゆえ夜目が利きますので夜の警戒などでお役に立てればと」


へー、兄妹で参加かー……って兄妹なの!?種族違うけど……そんな視線に気づいた小次郎さんが補足する。

「ああ、千鶴と拙者は義理の兄妹でござる。幼き頃千鶴が親御殿とはぐれた様でして、以来我が家で預かって居たのでござるが……三月ほど前でござるか、村より千鶴が出てきましてな、冒険者になると言うので拙者が面倒を見ているのでござるよ」


千鶴さんは手を合わせ、少し頬を膨らませながら

「まぁ、兄様ったら、それでは私が迷惑だといっているように聞こえますよ?」


ふむ、先に独り立ちした義理の兄を頼って妹が冒険者にねぇ……小次郎さんを見る視線にあの態度、プミィさんも俺と同じ結論に至ったのか視線を交わし頷きあう。千鶴さんを応援しよう……と


しばらく待っていると、最後の一人がやって来た。ソロのEランクなのだろう大きな荷物を背負ったドルフさんだ。灰茶色の短髪で短槍を担いだ若い男だ。どうやら往復分の食料らしいが、保存食にしては大きすぎるような?まぁ同じEランクが注意するようなことでも無いかねぇ


全員そろった所で、移動時の配置や野営時の見張りの振り分けなどを話し合い、ジョーンズさんの号令の下出発することとなった。今回も平和だといいなぁ(練習的には駄目なんだろうけどな)


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