天国?
白と金に彩られた空間にざわざわと喧騒が響き渡る、その様はまさに
「市役所のようだった!!」
鉄男はその様を呆然と見つめていた。
「はーい!みなさーん、一列に並んでくださいねーあーっとそこの魂さんはみ出さないでくださいーい!!」
拡声器を片手に列の整理を行っているのは、赤鬼だった。ただし……赤い肌と角を除けばどう見ても中年の公務員だったが…
「なんだこりゃ?これが死後の世界って奴なのかねぇ?えらい現代的つうか……お役所仕事つうか…」
ふと右手に目を向けると『初めての方はコチラ!!!』と書かれた看板が目に入った。
え?普通死ぬのって一回じゃね?と思いつつも、突っ立ていてもしょうがないと思い直し、そちらへと足を向けるのだった。
「すんませんー、たぶん初めてなんっすけど此処でいいんでしょうか?」
カウンターの向こうでパソコンを操作していた青鬼に向かって問いかけるとこちらを向き笑顔で応対してくれた。
「はいはい!!初めての方ですねー、まずは閻魔帳と照合いたしますので、出身世界とお名前それから死んだときの状況を教えて頂けますか?」
世界?地球以外にも世界あんのか?も…もしや流行りの異世界ってやつか!
「あのー聞いてらっしゃいますかー?」
「おっとすまねぇ。出身は地球だな、名前は土方 鉄男 死んだのは2017年6月15日に屋根の上で落雷に打たれたためだな」
「はいはい、少々お待ちくださいねー。 カタカタカタカタ ピー あら?変だなぁ該当はないけど類似項は出たってことは、申し訳ありませんが土方 岩男さんという方に心当たりはありますか?」
「あん?そりゃ俺の親父じゃねぇか、何でそんなこと聞くんだ?」
自分の死因からなぜ父親の名前が出てくるのか分からず首を傾げていると、ふと頭にひらめくものがあった。
死ぬ予定がない→身内の名前が出る→間違えてやっちゃった(てへぺろ)
「ま………まさか間違えたとかじゃないよな?俺まだ彼女も出来た事ねぇんだぞ!!」
「鉄男さん落ち着いて下さい。今追加情報が来ましたのでご説明させていただきます。まず結論から申し上げますと、貴方の死亡は確定しております。また死亡原因についてですが、ごく稀に死亡予定の方の周囲の方と寿命の移動が行われることがあります」
「え?てこたぁ俺は親父に寿命吸われたの?」
なんてこった……秘蔵のエロDVDやおやつなら兎も角まさか命まで取られるたぁなぁ…
「かなり特殊な条件のため滅多に発生しないのですが、これが行われると今後の魂の管理予定に混乱が生じるので此方としましてもあまりうれしくはない状態ですねぇ。とはいえ鉄男さんは既にお亡くなりになっていますから蘇生もできませんし、転生の手続きを行いましょうか」
確かに、死んじまったらジタバタしてもしょうがねぇわな青鬼の言うことも最もだし手続きを進めるしかねぇか。
「では、死亡確認が取れましたのであちらの転生希望先の世界窓口で手続きをお願いいたします」
「おう、さっきは怒鳴っちまって悪かったな」
「いえいえ、慣れておりますから」
慣れてるって……まぁそうだよなぁイキナリ死んじまった奴とか暴れたりすんだろなぁ。それに比べりゃまだ俺はましな方だったのかねぇ。
そんなことを考えながら窓口に向けて歩いていると、【地球窓口 最後尾】と書かれたプラカードを持った鬼が目に入ってきた。こういう仕事は下っ端がやるものだからだろうかなり若い鬼のようだ
「おう兄ちゃんもしかして地球だとえらい待たされるのかい?」
「は!はい!こちらの現在の待機人数は12,563,200,123となっておりまして250年ほどお待ちいただくことになります」
「なんじゃそりゃーーめちゃくちゃ多いじゃねぇか!つうか総人口より多いってどういうことだよ!!」
「地球はほかの世界でも人気の転生先でして様々な世界から希望者が殺到しているんですよ。って総人口しってるってことはお客様は地球出身の方ですね?連続で地球を狙うのはなかなか厳しいと思いますよ?」
ん?何でだよ普通に生まれ変わるだけじゃねぇのか?
「何せ今の地球への希望者が多すぎてくじ引きで転生が決まるんですが、なんと転生するだけでも千分の1、特に人気の国だと10万分の1位の確率ですから」
おいおい………どこの年末ジャン○だよ……こりゃぁ地球はあきらめて別んとこ行ったほうがいいかもなぁ。そんだけ地球に殺到してんなら今なら他は選び放題じゃね?
「そっか、じゃあ別の世界にすっかね。兄ちゃんなんかお勧めのとことかあるかい?」
「そうですねー、他の世界はどこも地球と比べると文明的に劣るのですが、希望に沿った世界をアドバイスしてくれる相談窓口があちらに御座いますのでご利用してはいかがでしょうか?」
ほう、そんなのもあるのかよマジで市役所みてぇだな、ならちょっくらいってみるとするかねぇ。
2012/12/12 誤字修正