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初依頼は地味に

クエストボードの前で俺は悩んでいた。


最初は定番の薬草の採取や、ホーンラビットあたりの討伐依頼にしようかと思ったんだけどよ。

俺まだダガーすらもってねぇんだよなぁ。


依頼を受けてからダガーや袋を買いに行くのも、何かかっこ悪い気もするしここは素直にGランクの雑用を受けるかねぇ。

これなら道具は特に要らないと思うしな。


そう思い、Gランク依頼が貼り付けてある、ボードの左下のあたりを覗き込む。



うーん、結構いろんな内容があるもんだなぁ。

『弁当配達員の募集』とか『倉庫整理の為の作業員』さらには『掃除』なんてのもあるな。

確かにこれは、冒険って感じじゃないし受ける人が少ないわなぁ。


一つ一つの依頼を見ていくとふと目に留まる内容があった。

『屋根の修理してくれる方探しています。足が悪い為、屋根に上れず困っています。受けていただける方はサヴァロ孤児院まで 報酬 銅貨30枚』


ふむ、屋根の修理か久しぶりに大工仕事が出来るし、ちょっとやってみるかねぇ。


メモを剥がすとそれを持ってカウンターへと歩いていく。

依頼受諾の為の窓口へ行くと、先ほどのウサ耳お姉さんが座っていた。


「あれ?お姉さん、登録の窓口にいませんでした?」


「はい、登録を担当させていただきましたので、初めての依頼も続けて私が担当させていただきますね。」



よくはわからんが、そういう決まりでもあるのかも知れねぇな。


「そうですか。ではこの依頼を受けようと思うので、手続きをお願いします。それと申し訳ないのですが、今日この町に着いたばかりで、依頼主の場所がわからないので教えてくれませんか?」



ウサ耳お姉さんは、メモを受け取るとカウンターの下から一枚の紙を取り出した。

どうやらこの町の地図のようだな。


「ではギルドカードに依頼を登録しますので、カードを頂けますか?登録している間にこちらの地図で説明をさせていただきますね。」


懐からカードを取り出し、お姉さんに渡すとそれを例の水晶に当ててそのまま差し込んだ。

不思議だよな……なんで水晶に刺さるんだろう……


お姉さんがこちらに向き直ったので、地図を一緒に覗き込む。

まずこの町は少し横長の円形をしている、そして地図には円形の町をホールケーキのように6分割した線が引いてある。


「まず、このグラリアは領主様のいらっしゃる城砦がある地区を1番街とし、時計回りに6番街まで番号が振られています。更にその中で、区画を整理し番号を振ることで、住民の管理や郵便物の配達に役立てています。たとえば『市街区 4番街 12』となるとここになります。」


お姉さんが指差したのは、南門がある地区の東から数えて12個目の区画だった。


「へぇ、かなり整理されているんですね。これなら地図があれば行きたい所がわかりやすいですね。」


「そうなんですよ、おかげで場所の説明も助かっています。それで依頼の場所ですが『市街区 5番街 6』にある教会に隣接する建物がそうですよ。」


俺は場所を地図で確認すると、頷きギルドを後にした。



■□■□■□■□■□■□■□


ここ・・・かな?ずいぶんと古いがこのあたりに他に教会も無いし、まずは尋ねてみるかねぇ。


敷地に入ると、子供たちの遊ぶ声が聞こえる……どうやらここが孤児院で間違いなさそうだな。

更に奥に進もうとしたそのとき、一人の男の子がこちらを見つけて走りよってきた。


「おい!ここはしんせーなきょーかいのしきちだぞ!けーけんなしんといがいははいっちゃだめなんだからな!」


うん・・・たぶんあんまり意味はわかってなさそうだな、何にせよ孤児院の責任者に会わせてもらわないとな。


俺は、しゃがみこみ男の子と視線を合わせ

「お兄ちゃんは、ここの屋根を修理しに来たんだ。ここの偉い人がどこに居るかしらないかい?」


男の子は目を瞬かせると、思い当たることがあったようで、孤児院へ向かって駆け出した。


「しんぷさまーー、しゅうりがきたー!」


俺もそちらへ向かって歩いていくと、杖をついた50台ほどの神父服の男性がこちらへと目を向けてきた。


「どうも、冒険者ギルドから依頼を受けてきました。屋根の修理でよかったでしょうか?」


男性は頷くと、孤児院の裏へと案内してくれた。

その間に挨拶と自己紹介は済ませておいたが、神父さんはライン・ウェンストックさんといって、自分で直そうと梯子を上がっている最中に足を滑らせ落ちたらしい、そのせいで修理も出来ず困っていたそうだ。


「こちらの梯子で上に上がっていただけますかな?修理の場所は上がったすぐのところが雨漏りしている筈です」


俺は、道具箱と補修用の部材を担ぐと、慣れた手つきでスルスルと梯子を上がっていく。

屋根に上がると、確かにすぐそばの瓦がはずれ屋根板が腐り始めていた。


周囲の瓦も外し屋根板の点検を行うと、外れた部分から湿気が入り込んだ為か釘周りの痛みが激しく、この部分の屋根板を交換したほうがいいと判断した。

いったん下へ降りウェンストック神父に状況を説明すると、補修用に備蓄してある木板がいくつかあるそうなので、それをもってもう一度屋根に上り屋根板を交換し、瓦を設置しなおした。


「とりあえず、雨漏りがあった場所は修理しましたけど、全体的に痛みが出ているようですね。早めに点検と修繕をしたほうがいいと思いますよ」


ウェンストック神父は驚いた顔をしてこちらを見た。

「いやいや、お若いのにずいぶんと手際がいいのですね。そうですか……確かにこの建物もだいぶ古いですからね、いくらか蓄えもありますし、点検をしてもらうことにしましょう。今日は助かりました、報酬はギルドに預けていますので、こちらの受領書を持ってギルドで受け取ってください」


完了した旨を表す、サインの入った受領書を貰いうけ、俺はギルドへと戻っていった。


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