フラグ!?
ロベルトさんの言葉がフラグだと思ったか!?俺もだよ!
実際、移動中に馬車が襲われるのは、お約束かと思ってたんだが………うん、すげぇ平和です。
今日で三日目だが、盗賊はおろか魔獣の類も姿を見せないため、非常にのどかな風景の中、移動を行っています。
ちなみに、護衛とはいえ徒歩で馬車に併走するのは厳しいため、普段は馬車に乗り込み御者台に一人、荷台の後方に二人が座り警戒を行っているようだ。
と言っても、今いる街道は周囲が草原のためかなり見晴らしがよく、常に気を張って警戒を行う必要が薄いためロベルトさんは俺と話をしている。
「それじゃあ坊主は、普段の着替えと雑貨くらいしか今は持ってねぇんだな?」
手持ちの荷物について聞かれたので答えると、そう確認されたので頷く。
「ならギルドで登録したら、当面の宿代を除いて必需品の購入に当てるべきだな。今から言う物は必ず買っておけよ?」
ロベルトさんに教えられたのは以下の物だ。
まずは、厚手の皮ズボン
冒険者は仕事柄山や森に分け入ることが多く、その大部分が人の手が入っていない自然そのままであること。
そのため、藪や茨、枝などに引っ掛けて怪我をする者が多いらしい。
俺が今履いているような、麻や綿のズボンでは枝が布を貫通してくるため多少蒸れるが、皮製のズボンを履くのは当然のことだ。
だが初心者や街の出身者の場合、そういった知識が無いためそのままの格好で仕事に行き、怪我をして動けなくなることもあるらしい。
次に、ズボンとセットで頑丈なブーツも必要だ
ズボンと同じくこれも、安全対策のためだ。
皮の靴程度では足裏を貫通して突き刺さる事もあるし、毒蛇などに足首を咬まれる危険もあるため、出来るだけ硬い素材のブーツは必需品だ。
次は、ダガー
これは予備の武器であると同時に、獲物の解体や剥ぎ取り、料理時の包丁の代わり、薬草の採取や山に分け入るときの枝払いなど実に様々な用途に使えるため、必ず一本は持っておけと言われた。
それから、袋を少なくとも三つ
これは、採取した依頼品を入れるための物や討伐証明の部位を入れる物、予備の武器や保存食などを入れるための物で分けた方がいいためだ。
まぁ考えてみりゃそうだよなぁ。
血まみれの薬草とか、緑色に染まった保存食とか出される方も困るよなぁ。
これらを揃えるのにだいたい銀貨2~3枚くらい掛かるらしいが、それは必要経費として我慢するべきだと言われた。
まぁ俺もそれについては異存は無いため問題は無いけどな。
それと、俺が武器や防具を持ってない理由だが、自警団で使っていたのはあくまで村の備品だからな。
持って行くわけにもいかんし、かといって村には鍛冶屋がいなかったから武器を作ってもらう方法も無かったんだよなぁ。
ジョッシュさんに武器を運んで貰う方法もあったけど、結局手間賃やらが掛かる関係であまりいい品質の武器は買えそうに無かったからな。
それだったら暫く武器の要らない仕事で稼いで、改めて買ったほうがいいと思ったわけよ。
「ん、まぁ初心者だったらだいたいこの位そろえりゃ良いだろ。むしろ坊主みてぇに冒険者になるために金を貯めてた奴の方が珍しいくらいだからな。最初から準備できる分上出来な部類だぜ。」
どうやら、田舎から冒険者になろうとする奴はだいたい無計画なやつが主流みたいだな。
むしろどこからその自信が出てくるのか、聞いてみたいくらいだが……
「俺の場合は、たまたま小銭を稼ぐ手段があっただけですよ。普通は家の仕事で手一杯でお金を準備する余裕は無いんじゃないですかねぇ。」
ロベルトさんは、その言葉に渋い顔をして
「確かになぁ、食っていくので精一杯でその生活から脱出するために街に出てきたような奴らなら、そんなもんかも知れねぇな。だがな、冒険者って奴は確かに厳しい職業だが上手い事いけばこういう物も買う事ができるんだぜ。」
そういってロベルトさんが見せてくれたのは、一見すると何の変哲も無い鞄だった。
「これは?」
「こいつはな、『無限の鞄』って名前の魔道具よ。実際に無限に入るわけじゃねぇが、見た目に反してだいたい小屋一つぐれぇの荷物が入る上に、重量は鞄の分しか感じねぇって一品でな」
おお!インベントリとかテンプレで有名な、亜空間バッグってやつかこの世界にもあるのかぁ。
これは確かに欲しくなるな。
「と言うことは、かなりの値段なんですか?」
「ああ、これ一つで金貨10枚はするからな、だが10枚分の価値は確実にあるぜ」
10枚って、1000万かよ!でも確かにこれがあれば採取なんかも、何往復もしなくて良くなるし価値は高いよなぁ。
その後も、グレッグさんやウィムさんが持っている魔道具を見せてもらったり、効果を説明してもらったりしながらグラリアを目指すのだった。