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プロローグ
チリチリと焼け付くような日差しを放つ太陽の下、左腕に留まった蚊を右手の平でパチっと叩き潰すような感覚で人間たちは僕の友を殺してしまった。
背中に二枚の真っ赤な翼を持つ友は物心ついた時からの僕の憧れで、いつか自分もあんな翼を持ちたいと思っていた。
僕と違い強く逞しい友であったけれど、様々な凶器を振りかざした多くの人間達にはかなわず、最後は息絶え、人間が去った後の痛々しい友の死骸からは翼が根元からバッサリ切り取られていた。
この日、唯一人生存していた絶滅危惧人種「ソウラ」は地球上から姿を消し、およそ三月後に16歳の少女が首都ネルサンの長に就任したという風の噂と共に、少女が片時も離さず手にしているという世にも美しい真紅の扇の存在を僕は知った。