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目を開けたら草原でした  作者: 凍霜
1.入学までの話
8/11

6 優しい王女シエル、皮肉の王女ネム

全話を上げた覚えが全く無い。

 レミア魔術専門学院。

 深夜の談話室にて、王女と異世界人の話しが始まろうとしていた――。


「兵士も追っ払ったし、取り敢えず座らない?」


 王女が手本を示すように木製の椅子に腰掛けた。水姫もそれに習って続く。

 鞄は椅子の横に置いた。


「あたしは、シエルティス・フロワティア。通称シエル。王女候補よ。この学院の二年生」

「若槻水姫です。この世界では、ミズキ・ワカツキなのでしょうか?」

「砕けていい。あんまり、王女様扱いされるの嫌いで」


 薄ら笑いを浮かべたシエルは、どこか憂いを含んでいた。


「さてと、一つ謝らせてね。多分、あたしの手違いだから」

「手違い?」

「学年末に致命的な間違いを犯してね。それについて」


 シエルは諦めて、腹を括った様に肩をすぼめた。


「学年末に、何でもいいから召喚したいと思って、銀色の天使を呼び出そうとした。でも、間違えて天使の部分を人間って言っちゃって。その後に、銀髪の貴方の情報を入手した。もしかして、と思って、執事に頼んで、兵士に連れて来させた訳」



『我が名の下において銀の人間(・・)を召喚する。召喚(サモン)



「多分ね、途中で空間がねじれたのね。水姫、貴方はここの世界の住民じゃないよな?」

「あ、はい」


 素直に頷いた。

 元は、宇宙の中の地球の中の日本という国に居た訳で。


「やっぱり。魔法陣は現れたのに、肝心の召喚獣が出てこない。貴方のような人間を召喚する事って、あまりない。だから、ちょっと世界を繋げる空間が困惑でもしたんだろう。で、何処に落ちた訳?」


 記憶を辿っていく。辿り着いたのは草原だ。獣に追われたあの記憶が鮮明に思い出させられて、水姫は少し表情に出してしまった。


「えと、草原です」

「あの、大きい草原に? 大変だな、あそこは。国境だから」


 草原を越えた先には、この国と主義が違うために対立している国がある。研究が盛んで、人体実験なども行われていたりする、色々と危険な国だ。


「でね、あたしの方で、ちゃんと貴方を還してあげないと」


 そう言って立ち上がろうとする彼女を、水姫が指差して叫ぶ。


「あ、あの光線を発していた人……」

「ん?」


 水姫を元の世界に還す為に消去(デリート)を使おうとしていたシエルは、少しの間固まった。


「赤い獣を倒していた……」

「あ、あれ! 今、声で思い出した。ごめんな、王女だって知られたら、マズかったし、顔見せるわけにはいけなかった」


 ちなみに、見つかった場合は、即王都まで連行される。

 城が息苦しいシエルは、よく監視の門を潜り抜けて、近くの山などへ行き暇潰しに魔物を倒していた。


「じゃあ、行くぞ。我が召喚した者よ、元居た世界へと還れ。消去(デリート)


 静かに佇み、一つ一つの語句を間違えぬように、力強く詠唱する。シエルの足元に魔法陣が展開されると、水姫の足元にも同じ魔法陣が展開され――


「あれ、おかしい」


 ――消えなかった。

 この世界と水姫の世界との繋がりはあまり無い為に、不安定だ。だから、中々空間が繋がらない。


「……ごめん、無理だ」

「はぁっ?」


 つい帰れると思っていた水姫は、相手が王女にも拘らず講義した。


「え、それって……」

「もうちょっと召喚魔力があったら、水姫を元の世界に還す事も出来たかも知れないのに……。空間の捻れ補正に、魔力が足りない――」


 悔しそうに唇を噛む。

 そして、思考をした後、王女は提案をする。


「そうだ。水姫、手掛かりを見つけるために、取り敢えず魔力計測でもしてみない? 貴方のいた世界では、魔法あった?」

「無かったです」

「敬語じゃなくてもいいのに。まぁ、大船に乗った気持ちで。生活は保証するから」


 そうは言われても、水姫には王女である事が既に分かっているし、やはり敬語を外す気にはなれなかた。


「……ええと、まりょく……? のある人で私を元に戻して貰う事は――」

「『我が名の下に』『我が召喚した者』。召喚した人物でないと、出来ない」

「そうですか……」


 水姫は肩を落とした。








「あの、シエルティス様――」

「様はいらないから。愛称のシエルと呼び捨てで呼びなさい」


 威厳があったので、素直にそれに従う。

 ランプも付けられていない部屋。月の光が窓辺から差し込んでいる。


「ええと、シエル。ここは……」

「何って、あたしの部屋よ」

「それはいいんですけど、この人誰なんですか?」



 夜中で生徒は既に寝ている時間だ。

 その時間帯にもかかわらずに、一階シエルの部屋にて、一人の少女が待ち構えていた。

 少女はシエルの後ろに恥ずかしそうに隠れる、水姫を興味津々と見つめた。


「あら、このわたくしをご存知でなくて?」

「そうよ。あたしが召喚したんだから」

「……そういえば、何この某使い魔小説風の展開」

「そうでしたの。大体、貴方が知りもしない召喚魔法を使うからでなくてよ?」

「五月蝿いわね。今日は、ここに泊めるわよ」


 強い意志を瞳に燈したシエルは、仁王立ちで少女に歯向かう。


「紹介が遅れましたわ。わたくしは隣国……アピティス王国の王女、ネム・グラウクスと申しますわ。どうも、わたくしの同室の者が失礼をお掛けしましたわね」


 片足を引きドレスを持ち上げる代わりに、優しげに微笑む。

 隣国とは言っても、人体実験が行われていない、また別の国だ。


「まぁ、ここにいられるのも後少しでしょうけどねぇ。魔力の無さそうな娘さんですのね」


 皮肉混じりに、ネムがシエルに挑発を仕掛ける。


「あら、悪かったわね。そういうアンタはどうなのよ?」

「銀色の天使さえも召喚出来ませんのよね? 残念ですが、わたくしはユニコーン程度は召喚出来ますわよ?」

「ユニコーン? ただ走るだけに特化しただけじゃない」

「舐めてもらっては困りますわ。ユニコーンとは――」

「はいはい、もうキリが無いし、水姫も困っているじゃないの」


 子供に叱るように語ろうとすると、シエルの方から、いつも聞かされていて呆れた様に歯止めをかけた。


「あら、そういえばお名前を聞いていませんわ」

「ミ、ミズキ・ワカツキ?」


 この国にあわせて名前を言ったので、慣れないためか疑問形になってしまった。


「何故疑問形なんですの? ……まぁ、たったの一晩ですが、宜しくですわ、ミズキさん」

「フン、きっと強い魔力を持っているに違いないわ。早く寝ましょう。……水姫、あたしの寝台使っていいわよ」

「あら、王女ともあろう者が落ちぶれたのですね」

「ここで譲らないと。あたしは優しい王女って事を見せ付けないとね」


 水姫は躊躇ったが、シエルの強烈な目つきには逆らえずに、寝台に潜り込み寝息を立てて寝てしまった。馬車の中で何時間も寝てはいたが、それから疲れてしまったのだ。

 水姫の寝顔が可愛くて、無防御で、シエル達は思わず二人してクスリと笑った。


「意外と可愛いものね」

「意外と言うのは、相手に聞こえてないからって失礼よ、ネル?」


 ……結局、シエルはネムのベッドで一緒に寝るという事になった。



           ☆



 その国は、人体実験をする国として、周りの国から非難を浴びていた。







「失礼します」

「どーぞっ」


 桃色で埋め尽くされた部屋に、ベランダが石造りで外にあり、とても異様な雰囲気を放っていた。その部屋に、一人の――いや、二人の少女がいた。

 一人の少女は王座に座らされており、もう一人の少女に櫛で髪を梳かれていた。髪を梳かされている少女は、操られているかのように、目から光が失われている。――精気が無い。


「楽しいよねぇ。好きよ、人形(ひと)で遊ぶの」

「……はぁ」


 少女の行動を見つつ、男が部屋に入り、少女の近くで跪いた。


「報告です。ルカ・メルヴィスを失ってしまったのは誤算でしたが、計画はあまり狂いません」

「あの親達は使える? 子供に負ける頭脳って、本当に笑えるわよね」

「まぁ……。使えなくは無いです」

「そう」


 これから先の未来を描いて、少女はどこか壊れたように微笑んだ。


「『国家の犬』計画――実験が上手くいくといいわよねぇ。祈っているよっ」

「ありがとうございます……」


 少女は男を見下ろし、王座の子の髪を梳きながら、心から(たの)しそうに笑った。

王座の少女

 俺妹の黒猫みたいなイメージが昔からあった。まぁ、髪が長ければ第5ドールでも姫路さんでも霧島さんでも真冬ちゃんでも何でもいいや。勝手に想像して下さいな。


何か位の高そうな少女

 銀様でいいや。もう。


ユニコーン

 ぶっちゃけて言うと、角が生えた馬。走る事ぐらいしかしてくれないが、その走りは一級。


意外と~

 言わせとけ言わせとけ。どーせ嫉妬なんだから

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