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目を開けたら草原でした  作者: 凍霜
2.夏休みまでの話
11/11

9 自己紹介と先生

久々なので話が繋がっていないかも

 この世界の曜日と、水姫の元居た世界での曜日はほとんど違う。

 この世界では、土曜日、雷曜日、風曜日、火曜日、水曜日、土曜日……という風に進められ、土曜日が休日と言うことになっている。土は土属性を、雷は雷属性を、火は火属性を、水は氷属性を表している。

 土曜日を休みとして、平日が四日ある。レミア魔術専門学院は四学年あり、一年生は雷曜日、二年生は風曜日……という様に授業を学年交代で受ける。その間他の生徒は、一対一で教えてもらったり、あるいは対戦したり、読書したり、技を磨いたり――とすることはたくさんある。


 要するには、だらけずに練習をしろと言う事だ。


 という事で、今日は雷曜日。入学式の次の日、一年生は初授業に望む。


「えー、今日は初授業なのですが――」


 ルカと水姫が所属する事になった、一年二組担当のシルク・デイビスは、水姫の後ろの男子生徒の横の空き席を見て嘆息した。

 ちなみに水姫は廊下側の一番の前に座っており、ルカはその横だ。


「一人いないですね」


 そう、一人足りない。

 まぁ、ここはお約束的に遅れて入ってくる女子生徒。息が荒い。走ってきたのだろう。


「ンナーシャさん、貴方は何故遅れてきたんですか?」


 勿論先生は理由を尋ねる。


「ああ、それはですね。父から貰った鉢巻を着けていたら遅れたんです」


 肩に付く程度の茶髪には、運動会で身に付けていそうな赤い鉢巻が付けられている。


「言い訳は要りません。早く席に座りなさい」


 初っ端から小さな騒動はあったが、何とか始まるのだった。



 自己紹介は、大抵恒例である様に、この学院でもあった。

 遅刻の生徒が座ってから、先生が軽く自己紹介をして、皆の自己紹介に入っていく。


「改めて私の自己紹介です。私はシルク・デイビス。魔物学を担当しています。これから一年間、宜しく。夏休みに入るまでは、今座っている席で固定です」


 何気なく断言された一言に、教室の所々から批判の声が聞こえた。


「……では、廊下側前から順番に。もしも有名な二つ名を持っていたら、恥ずかしがらず教えてくれると嬉しいです。年齢と名前は必須で。じゃあ若槻さんから」


 二つ名。自分で名乗る事も出来るし、他人からいつの間にか付けられている事になる。ある程度認知されている二つ名があれば、それ程有名になっているという事だ。だがそれも、この国ではあまり意味をなさない。戦闘等があまりなく、日常生活で二つ名を持っていても特に意味は無い。

 廊下側の一番前の席――といったら、水姫なので、そこから始まる。ゆっくりと立ち上がった。


「ええと、若槻水姫です。十五歳です。遠くの国で生まれたんですけど、色々あってこの国に流れ着いて、王女様に助けて貰って、ここに来ました。氷と召喚が得意です。宜しくお願いします」


 この自己紹介は、朝にルカが考えた。この世界について等、色々な事情があるが、水姫が分からないままこの文で固定された。水姫がルカに尋ねると『二年生から始まる歴史の授業まで居れたら分かる』と言って無視した。異世界人にこれは辛いので、後で優しそうな人にでも聞こうと思った水姫だった。

 頭を下げると、最初だからか分からないが、大きな拍手が起きた。拍手の中に紛れ込んでゆっくりと座った。


「グレイ・アーバスト。十五歳。……通称炎の鞭。宜しく」


 金髪の少し逆立った髪と、緑目が特徴的な男子だ。実年齢よりも、二歳か一歳子供に見える。

 面倒くさそうに軽く言って彼の自己紹介はあっさりと終了した。教室全体が通称を聞いて歓声に包まれる。


「ルカ、アーバストって有名なの?」


 全体の反応で疑問が浮かんだ水姫は、(幼いくせに)物知りのルカに尋ねる。


「通称炎の鞭。元フロワティア王都東門警備隊火の鞭だったと思う。色々と有名だぞ」

「色々と?」

「ああ。逆らう者や騒がしい者は全て従わせ、大人しくさせて牢に突っ込んだらしい。炎の鞭の他に、教育上悪い言葉の通称もあるな。聞くか?」

「……」


 もしも、後少しあの門に行くのが早かったら、どうなっていたかと思い身震いした水姫だった。


 あれから四人くらいの自己紹介が終わり、前に帰ってきた。

 ルカの番だ。


「ルカ・メルヴィス。六歳。通称は氷塊(ひょうかい)の神童。その名の通り氷魔法が得意だ」


 ちなみに、ルカの席は丁度いい大きさだ。そこに席に座ったため、水姫はその隣を選んだという訳だ。

 それにしても全員簡単だなー、某ハルヒさんみたいな人出てこないかなー、とか水姫は思いつつ、聞きいる。


「エド・ンナーシャ。渾名はエドゥー。気軽に呼んでねー。氷と風が多少得意です。宜しくー」


 軽いノリで終えて、すぐに座って机に突っ伏した。


「ルカ、ここって氷の特化組だったりする?」

「いや、それは無いだろう」

「……ですかねー」


 自己紹介は何だかんだで進み、何事も無く終了していった。



 








 次の日――つまり風曜日。食堂で朝飯を食べた後に、水姫の魔術の授業が行われる事となった。

 ちなみに、一人の魔術学担当教師が、一日で一人数時間で四、五人の相手をする事になる。この学院の生徒が二百五十人で、計算すれば魔術学担当教師だけで軽く六十人はいる事になる。

 他の学の教師と比べれば膨大な仕事量だが、その教師達は見回りや他の仕事がある。とは言えども、あまり苦しくないので、給料もその分安くなるのだが。


「担当のルーク・デイビス」


 何も無い部屋。魔術如きでは中々壊れないようにされた壁と、木製の床。それに、硝子(ガラス)の窓。これに机と椅子、黒板と出来れば教卓もあれば間違いなく教室になるだろう。つまりは、机と椅子等という、教室の物を全て取り除いた状態だ。

 かくいうここは実習棟。最重要の科目、魔術学で一対一の授業をする為だけに作られた棟だ。その為、部屋の数は六十以上はあり、三階建てだ。廊下の東側にあるので、一階分に二十部屋ぐらいある事になる。水姫は一階の端っこ――それも、校舎とは遠い端っこだ。校舎の玄関から入り上靴(厚底パンプス)を履いて、着くまでに結構な時間を要する。入るなりその場に手を付いて息を荒らげた。ルークがまだ来ていないのが幸いだった。


「あ、はい。若槻水姫です」

「出身は隣国のアピティス。俺の専門分野は氷。副で召喚。宜しくな、異世界から来た若水。あ、一応学院長から事情は知らされてるからー。ほとんどの先生は知らないからねー」


 名前を略された上に、質問したかった部分を全て喋ってしまったルーク。

 水姫は顔を曇らせた。


「何や。言いたい全て言われたような顔して」

「……あの、一ついいですか」


 シルク・デイビス。

 ルーク・デイビス。

 苗字が共通しているこの二人。何か共通しているのかと疑った。


「何や。シルクは俺の嫁さんやぞ」

「読心術でも使っているんですか……」


 それを無視して、ルークはあぐらをかく。

 座るように促されたので、少し距離を取って座った。


「今日は初日だから、魔術についての勉強で終わるな。明日から魔術をビシバシと教えていくからなー。じゃあ、魔法の構成から――」


 眠くなりかけたのは言うまでもない。

曜日

 この世界での曜日。土曜日を休み、週初めとする。土曜日、雷曜日、風曜日、火曜日、水曜日、土曜日……の順で進められる。土曜日は、『全ての生の源』という意味で休みであり、大地讃頌とは何ら関係ない。


魔術学(全学年)

 最重要。実習棟で先生と一対一での実技。週一日の授業の日と、土曜日以外に毎日一回行われる。

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