0 天使○人間×
4月からずっと考えていた作品。
やっと解禁
「王女様、今日は何をされますか?」
「そうね。召喚魔法をやってみたい。やった事無いから。一番簡単なのでいい」
「ふむ……」
簡単な、と言われても……召喚魔法は難しい。そう心だけで呟いて、教師は考え込んだ。
ブレティスの端っこに位置するレミア魔術専門学院。魔術実技は一対一というこの学院では、国の第一王女と教師での実技が行われていた。
「では、簡単な天使でもどうですか、王女様」
「天使か。白とか、色って決められる?」
「ふむ……。確かに考えてみれば、最近魔術師の間で色んな色の天使を召喚しているとか……」
「じゃ、銀色がいいわ。教えなさい」
金髪の縦ロールに金目という整った顔立ち。白いブラウスに黒い棒ネクタイ。蝶結びにされている。黒いプリーツスカートに同色のニーソックス。それに黒い簡易ローブを羽織った出で立ちの少女は、胸の前で腕を組み不愉快そうに口を尖らせていた。
「一つ確認していいでしょうか?」
「何よ」
「王女様は、召喚魔法、使えるんですよね?」
「当たり前じゃない。あたしを誰だと思って?」
「……第一王女様です」
「宜しい」
更に不愉快そうに口を尖らせた。
「ええと、詠唱の確認をしますよ。銀色、ですか。最初は普通にやった方が……いえ、失礼しました」
愚痴る教師を眼力で押さえ込む。
「『我が名の下において銀の天使を召喚する。召喚!』はい、続けて下さい」
「『我が名の下において銀の天使を召喚する。召喚!』ですか?」
「流石ですね。それに動きを付けます」
教師は動きをやってみせる。
片手の外側を上に向けた状態で前に出す。その後真上までもって行き、真横に振り下ろした。
「ここで詠唱して下さい。……今すぐ出来ますか?」
返事の変わりに頷いてみせた。教師は嬉しそうに微笑んでいる。
さっき教師がやったのを真似る。前に、真上に、真横に。そこまでしてから大きな声で叫ぶ。
「我が名の下において銀の人間を召喚する。召喚!」
魔法陣は現れたが、何も出てこない。
「あの、王女様」
「何」
「……詠唱、間違えていますよ」
「…………」
もうすぐ昼になろうとしていた。