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プロローグ
変な夢を見た。
一人の女の子が、まっすぐこっちを見ている。
笑っている。
すごくかわいい子だった。
俺はその子の近くに駆け寄った。
そして、何もしゃべらずに笑っているだけの彼女に触れようとした。
しかし、触れない。
理由はわからないが、触れないのだ。
「君は―――――」
俺は彼女に話しかけた。
その瞬間、彼女は悲しそうな顔をした。
彼女は右手の人差指を俺の口の前に立てた。
まるで「シー」と言っているように。
しかし、唇に触れてはいない。
俺が黙ると、彼女はまた笑った。
そして手を振った。
それがどういう意味なのかわからない。
しかし、その瞬間。
彼女は消えた。
俺は驚いて、目を見開いた。
彼女がいたところには、ただ空間があるだけだった。
俺は視界の端に何かが映っているのを感じ、その方向へ焦点をあてようと、目玉を動かした。
その方向とは、彼女がいたところの足元。地面だ。
そこには、三つ葉が落ちていた。
俺が下宿先に来た日の夜の夢だった。