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ゴラリ・エージェント  作者: Adrashika
第一章:絆の血 — 最初の遭遇
4/9

パート4

翌日——。

「このまま座して待つわけにはいかん。もう三日だ。あの化け物の手がかりすら掴めないとはどういうことだ?」

ジンカイが焦燥を隠せずマヨラに詰め寄る。だが、マヨラはすでに準備を整えていた。タカオもまた、作戦の立案においてマヨラを全力でサポートしていた。

タカオは一人、頭の中でプランを何度も反芻していた。そこへマヨラが歩み寄り、隣に腰を下ろした。エージェントのスガロウも二人の傍らに立ち、静かに耳を傾ける。

「そういえば、聞いていなかったな。お前に『夢』はあるのか?」

マヨラの不意の問いに、タカオは少し間を置いて答えた。

「はい……小さな夢が。いえ、(一呼吸置いて)……ありました。今となっては、たとえ叶ったとしても、何かが欠けたままの夢ですが」

「どんな夢だ?」スガロウが尋ねる。

「チューニングショップのメカニックになることです」

「……いい夢じゃないか」

スガロウの返信に、マヨラはタカオの横顔を見つめた。そのささやかな希望の重さを、胸の奥で感じ取っていた。

「……マヨラさんは? ご自身のこと、何も話してくれませんね」

マヨラは一瞬躊躇したが、自嘲気味に口を開いた。

「俺のことなんて知っても面白くないぞ。……まあ、エージェンシーに入って一年の頃、タガヤ警視に気に入られて初めて家へ招かれたことがあった。豪華な屋敷だったよ。そこに、警視の娘もいたんだ。途中で警視に電話が入って席を外した時、彼女と二人きりになった」

「それで、どうなったんです?」タカオが身を乗り出す。

その時、一人の志願兵がやってきて準備が整ったことを告げた。マヨラは彼を下がらせ、タカオの期待に応えるように続きを話した。

「ああ……大したことじゃない。プロポーズして、速攻でフラれただけさ。『あんたみたいな男、行列ができるほどいるわよ』だとさ。……まあ、安いものには行列ができるもんだからな」

タカオはその言葉の裏にある皮肉を完全には理解できなかったが、マヨラはスガロウと共に館の最終チェックへと向かった。料理人や使用人たちはすでに避難させられ、洋館に残ったのはわずか六名のエージェントだけだった。マヨラは「作戦開始は夕刻」と告げる。

マヨラは、ゴラリを仕留めるための「切り札」を取り出した。1960年代に造られた、単発式の旧式銃。一発の衝撃が周囲の空気を吸い込むほどの爆風を生む。

用意された弾丸はわずか八発。鋭利な先端にはひび割れのような模様が刻まれている。純度100%のイリジウム製だ。

弾丸は各エージェントに平等に配られた。マヨラが銃を構え、ジンカイは作戦通りキッチンとホールの守りを固める。マヨラは正門から玄関までを、スガロウと他二名のエージェントは客室を。そしてタカオは屋上の視界を確保し、完璧なカバーポジションを築いた。

作業中、タカオの心にはある疑問が渦巻いていた。「なぜ、みんなあんなに楽しそうなんだ? なぜ、この状況で冗談を言い合えるんだ?」

やがてタカオの心は、鏡のように静まり返り、空虚になった。その瞬間、母の記憶が溢れ出した。一人の誕生日、母と祝ったあの最後の光景。彼は隅で膝を抱え、声を殺して泣いた。

マヨラが合図を送る。彼とジンカイはあの「穴」の前に立っていた。森は静まり返りながらも、不気味なざわめきを立てている。マヨラはロープを木に結び、穴の底へ投げ入れた。

マヨラが先に行こうとしたが、ジンカイがそれを制した。

「俺が先に行く。合図するまで、絶対に降りてくるなよ」

「……気をつけろ。必ず生きて戻れ」

マヨラの言葉に、ジンカイは短く返した。

「恐怖の限界点に立っている気分だ……だが、昔の傷が俺に力を貸してくれている。……約束はできない。すまない」

そう言い残し、ジンカイは穴の闇へと消えていった。

マヨラは、魂の抜けた抜け殻のようにその場に座り込んだ。彼の目から、静かに涙がこぼれ落ちた。

穴の底は、巨大な洞窟へと繋がっていた。ジンカイは銃を構え、慎重に歩を進める。足音一つ立てぬよう、極限の集中力で闇を睨む。懐中電灯の薄暗い光が、湿った壁をなぞる。

ジンカイは立ち止まり、目を閉じた。洞窟の静寂に耳を澄ませる。

……気配がない。

彼は深く息を吐き、体の震えが止まるのを待った。見間違いだったのか。彼は踵を返し、ロープの方へ戻ろうとした。

だが、何かが引っかかった。致命的な違和感。

彼はゆっくりと、頭上の「天井」を見上げた。

「……しっ(Shhhh...)」

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