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ゴラリ・エージェント  作者: Adrashika
第一章:絆の血 — 最初の遭遇
2/9

パート2

車はある屋敷の前で止まった。かつては華やかな結婚式や宴が開かれていたであろう、古風で重厚な洋館だ。人里離れた深い森の奥、静寂の中にその館は佇んでいる。

そこには、今もわずかな人々が息を潜めるように暮らしていた。タカオは、屋敷の周囲を囲むように置かれた松明やキャンプファイヤーの灯りを見て、言葉にできない違和感を覚える。

マヨラがタカオの傍に寄り、耳元で囁いた。

「いいか、正体を隠し通せよ……。それと、部屋の予約代が少し足りなくてな。お前から借りてもいいか? 後で必ず返すから」

タカオは呆然とした。エリート然とした立ち振る舞いのマヨラを上から下まで眺め、呆れ半分に笑いながら金を渡した。後で分かったことだが、彼らが借りたのは数部屋どころか、洋館丸ごと一棟だった。

「この地では、長い間チーターの影に怯えている。すでに何人もの命が奪われた……」

「今まで、捕まえられなかったんですか?」

「ああ。一度は捕獲されたんだが、住民たちは信じている。南から二頭目の『人喰い』がやってきたのだと」

一人のエージェントが料理人から情報を引き出し、マヨラに伝えた。タガヤ警視が彼らをここへ送った真の理由は、潜伏する『ゴラリ』の影を追うためだった。

夜が更ける。静まり返った館で、マヨラともう一人のエージェントが警戒に当たり、外では別の者が煙草を燻らせていた。

周囲には、獣の鳴き声ひとつしない不気味な静寂が満ちている。

ふと、微かな足音がした。

エージェントは煙草を揉み消し、闇の中へ目を凝らす。冷え込む夜気に、男の喉は恐怖で乾ききっていた。

だが、そこには誰もいない。

安堵の溜息を吐き出した、その直後——。

切り裂くような悲鳴と、誰かの絶叫が館の壁を震わせた。

マヨラは即座に銃を抜き、外へ飛び出す。背後からもう一人のエージェントが続いた。

現場に辿り着いた彼らが目にしたのは、肘のあたりで無残に千切れた「右腕」だけだった。

翌朝。警察のチームとタガヤ警視が現場を封鎖していた。

「やはり、あのチーターの仕業か……」

「なんて無慈悲な。人業とは思えん」

野次馬たちは口々に噂し合う。タカオはマヨラの傍らに立ち尽くしていた。他のエージェントたちは森の中やイベントエリアを捜索している。

「警視、これは間違いなく『ゴラリ』の仕業です」マヨラがタガヤに詰め寄る。「獣の襲撃なら、食い散らかされた遺体や激しい出血の跡が土に残るはずだ。だが、ここは不自然すぎる。まるで、血の入った小さな袋を二つ落としただけのような……」

タガヤ警視は重い溜息をつき、冷徹な目でマヨラを射抜いた。

「これは貴様の関与すべき問題ではない。我々の管理下にあることを忘れるな。分かったか!」

マヨラは静かに頷き、一歩退いた。

翌日——。

「我々から何かが隠されているのは明白だ。今は松明も持たずに闇を歩いているようなものだ。……だが、まずはあの怪物がどこから、どの方向から現れるのかを突き止めなければならない」

マヨラは残された七名のエージェントに問いかける。

タカオは部屋の隅で、怯えたように震えて座り込んでいた。マヨラはその様子を鋭く見抜く。

「タカオ、怖いのか?」

タカオは何も答えず、ただマヨラの瞳をじっと見つめ返した。

しばらくして、二人は屋敷の屋上に座っていた。

「自分でも分からないんです。時々、自分が信じられないほど冷静で、賢くなったような感覚になることがある。……でも、エージェンシーに来てから、ずっと怖いんです。先輩」

マヨラは触れもせず、ただ少年の言葉を飲み込むように静かに聞いていた。

「僕の人生は、最初から困難の連続でした。歩くのも遅かったし、言葉を覚えたのも七、八歳の頃です。学校に入りましたが、その間に父が殺された。……母が、苦労して僕を育ててくれました。僕を理解しようとしてくれた」

タカオが過去を語り始めた時、一人の志願兵がマヨラを呼びに来た。内密な話があるという。マヨラは頷き、タカオに休息を命じた。

マヨラが部屋に入ると、タガヤ警視が椅子に深く腰掛けていた。

「……さて、何を言おうとしていた? 先ほどはお前を叱責せねばならなかった。連中に、自分たちが正しいと思わせるために。そしてお前を大人しくさせるためにな」

タガヤとマヨラの密談が始まる。

深夜——。

誰もが眠りにつく中、タカオだけが目を冴えさせていた。脳裏に絶え間なく不穏な思考が駆け巡る。不意に、彼の記憶の断片が、彼自身を震撼させる光景を映し出した。

タカオは思考を巡らせる。

「もし、現場に血痕が落ちていなかったとしたら……。それは、その場所から少し離れた所に『真実』があるからじゃないのか?」

屋敷の外では火が焚かれていたが、一箇所だけ、警備の者が火を絶やした場所があった。

そこで立ち尽くす料理人がいた。料理人は喉を詰まらせ、あまりの恐怖に身を竦ませる。その時、背後で微かな気配がした。

「こんな夜更けに、一体何をしている?」

夜警のエージェントが問いかける。

「いえ……。警備の火が消えていたので、驚いて……」

二人が言葉を交わす中、料理人はふと視線を上へ向けた。

今度こそ、彼は指一本動かすことができなかった。そこにいたのは、彼が想像すらしていなかった「何か」だった。

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