表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Say my name.  作者: 雷仙キリト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/22

2-6

「……そんで、お前はさっきから何見てんの?」


 陽影(ひかげ)は目を細め、グラウンドを見つめる。


「羨ましいと思ったんだ」

「羨ましい?」

「俺もあんなふうに、誰からの制限も受けずに外を走り回ってみたい」

「お前もしかして病弱なの? ドクターストップかかってるとか?」

「そういうわけじゃないけど」


 陽影は首を横に振った。


「俺の仕事は肌を見せることが多いから、できるだけ体は綺麗にしておく必要があるんだ。ファンデーションで大体は隠せるが、それでも怪我をしないに越したことはない」

「海外ではどうしてたんだ?」

「俺の暮らしてきた国は医療費が高かったから、あまり怪我をしたくなかった」


 ワオ、それは何とも現実的な問題ですこと。


「でも、金持ちなんだろ。医療費くらい払えんじゃねえの?」

「そうかもしれない。でも……一番はやっぱり、些細なことで、親の手を煩わせたくなかったのかもしれない。そんなことで怒る人じゃないと分かっていても、それでも嫌なんだ。俺が嫌なんだ」


 ああ、何だか、すごく気持ちは分かるなそれ。

 俺も同じだ。姉ちゃん達は怒らないし、むしろ心配してくれると分かっているけど、それでも迷惑をかけるのが嫌で、言わないでいることも多々ある。


 俺も親の転勤で引越してばかりだったし、こいつと俺、結構似た境遇なのかも。

 ま、キャパシティだかケーパビリティだかは全然違うけどな。


 陽影は窓を開けた。窓枠に肘を置き頬杖を突き(痛そうだ。数秒ごとに手を組み替えている。馬鹿だ)、生徒達のはしゃぐ様子を聴覚と視覚でもって噛み締めている。

 吹き込む風が陽影の前髪を揺らす。滅多に見られない目元が顕になると、いつもの数倍、こいつの顔立ちが幼げに見える。


 瞳の色が薄いほど、目に入る光量は多くなるらしい。俺達一般人にとっての普通はこいつにとっての普通ではない。こいつの目には、眼前の光景はどれだけ眩しく、輝かしく映っているんだろう。


「……友達ってのは」


 ふと、言葉が口をついて出る。陽影の視線が俺を捉える。


「別に、特別なことはしなくてもいいんじゃねえの。ただ、なんかやりたいことがあったら一緒にやって、楽しんで。たまに喧嘩して、しばらくして仲直りして。そんで……そいつが困ってる時、黙って悩みを聞いてやるとか、何もできなくてもそばにいてやるとか」


 照れ臭くなって、俺は笑った。


「そういうのが、俺の理想かな」


 陽影もまた、唇の端をゆっくりと上げ、優しく笑う。


「分かった。そうするよ」


 


 出会って半月で、俺達は友達と呼べる仲になった。

次回の更新は3月18日 17時10分投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ