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第1話

同性に恋をした女の子のお話です。

「同性愛」と聞いて、どんな印象を抱くかは人それぞれだと思います。しかし、あくまで誰かを好きになる気持ちは同性でも異性でも同じだという視点で、純粋でどろどろした女の子同士の恋の行方を、最後まで見届けて頂ければなと思います。

私と梨々花が出会ったあの頃は、まだ平成の時代だった。今とは違う懐かしい街並み。どれだけ過去に戻りたいと願っても、戻れることはない。

当時の私でも分かったの。あの子と出会ったあの瞬間こそが、私の人生の分岐点だったこと。


────────────────────


 ガラッという音と共に、勢いよく部屋に入った。

今日は私が一番乗り。これでみんなに人気なおもちゃも独り占め。私は一人で遊ぶことも、何人かで遊ぶことも大好き。人数の少ない田舎の小さな幼稚園だったから、年長さんも年少さんも関係なくみんなと仲が良い。

一通りおもちゃで遊ぶのに夢中になっていたら、いつの間にかみんなが部屋に入ってきていたから、私は急いでおもちゃを片付ける。慌てて座ると、隣に座ってた友達がくすくす笑っていた。恥ずかしいからやめてほしいなぁと思ったけれど、そう思いながらも笑ってしまう。

「せがみ あいちゃーん!」

「はーい!」

先生に名前を呼ばれたら、元気よく返事をする。

歌を歌う時の声も人一倍大きい自信がある。朝の会が終わると、みんなで元気よく外で遊んだり、部屋で塗り絵をしたり。おやつの時間が私の一番の楽しみだった。ケーキが出た日なんて、もう最高。何度もおかわりしちゃうぐらい美味しかった。

家に帰ったら、飼っている金魚とインコに餌をやる。金魚はお祭りの金魚すくいですくっただけだけれど、目も体も大きいデメキンだったから、可愛くて可愛くて。

インコももちろん可愛い。鳥が好きだったし、小動物には優しくしたくなる。幼稚園児なりに、気を使って毎日お世話していた。

そんな平和で楽しい毎日。私が楽しく過ごす日々は、あっという間に過ぎていく。

 そんなある日、友達からある噂を聞いた。隣の県の都会から、ある女の子が転園して来るのだそう。しかも、クラスは私のクラス。私はあまりそういう子には興味がなかったから、そこまで心に留めては居なかった。

いつも通りの朝の会が終わった。と思ったけれど、違ったみたいだった。先生が口を開いた。

「今日からここに、新しいお友達が来てくれました!今からみんなにごあいさつしてもらうね。」

ガラッ。

みんなの視線が、部屋の入口に釘付けになった。

朝から噂になるくらいだから、よっぽどみんなもその子を見たかったのだろう。クラス全体に緊張感が走る中、多分、入口の方を見ずに手遊びをしていたのは私だけ。

その子が前に立った。私は一旦手遊びを中断して、前の方を見た。

先生は、「いけだに りりかちゃんです!みんな、仲良くしてね!」とだけ言って、りりかちゃんを座らせた。

びっくりしすぎて、声も出なかった。正直、予想の遥か上をいかれて、圧倒された。こんな子は色々なテレビ番組を見ていても、アイドルを見ていても、あまり見つけられないような次元の違う可愛さをしていた。可愛らしいパッチリとした二重の目。小さくてすらっとした鼻。口紅を塗っているのかというくらいに血色の良い唇。雪のように白い肌。長くて綺麗な黒髪に…もう数えきれないくらいに褒める所があった。でも、私はあんなに可愛くて人気者になりそうな子とは絶対に仲良くできないな、と思った。

休み時間。りりかちゃんの周りには、クラスのほとんど全員が集まって、質問攻めとか色々な事をされていた。「やっぱり関わる事なんてできないか、」そう思って呆れてしまったのか、私はりりかちゃんにあまり関心を抱かなくなった。

りりかちゃんは相変わらず人気者で、私の周りから友達はどんどん離れていった。私は毎日、一人で遊ぶようになった。別に一人も苦ではないから、そこまで気にはしなかったけれど。


そんな毎日もつかの間。私は変わった。


私がいつものように一人で園庭で遊んでいたその時だった。遊具の中腹で、ある子とぶつかった。

「あっ…」「わっ」 そんな声が響く。

「あ…ごめん…!」

透き通っていて、心に直接届いてくるような高い声。どこかで聞き覚えのある声。まさか、と思った。

そう。そのまさかだった。なんと目の前に居たのは、あの人気者のいけだに りりかちゃんだ。

「えっ?りりかちゃん…」

知らない子に名前を呼ばれてびっくりしたのか、りりかちゃんは目を見開いて口をぽっかり開けていた。

「あっ、もしかしてあいちゃん?」

私の名前…まさか、あの人気者のりりかちゃんが私の名前を覚えてくれていたとは思っていなかった。アイドルにファンサービスをされたような気分で、頬を赤らめてしまった。

「私の名前知っててくれたんだ!今私も丁度一人だったし、一緒に遊ぼう!」

え、うそ。まさかりりかちゃんに誘われるだなんて思っていなかった。私はとても嬉しかった。他の子達とは違う、特別な感覚だった。

都会から来た完璧な少女、「池谷 梨々花」。

梨々花に恋をした少女、「瀬上 藍」。

幼稚園時代に出会いを果たし、この後どんな結末を迎えるのでしょうか。楽しみにお待ちください。

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