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つぼみ ──ノライ──  作者: モリサキ日トミ


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解放されたもの

メアリの家の浴槽に住まうオスのノライは、その根を広範囲に広げ、この辺りの水脈をかなり網羅していた。

しかし、根を四方に伸ばすということは、彼より前から地中の水脈や川から水分を吸収していたメアリの両隣の家を基地にしているノライたちと縄張りを争うことになる。

「あなたが、のんびりと人を捕食している間にメスのノライはどこかに行ってしまったわよ」

メアリが家の奥にある浴室のドアを開けて、浴槽からはみ出した大きな蕾に向かって言い放った。が、彼は反応を示さない。

「もう、子孫を残すつもりはないんだ」

メアリがため息を吐く。彼女は密かにノライの種ができるのを楽しみにしていたのだ。

彼女が何を言ってもただの置物のように浴槽の上で鎮座して動じないでいる蕾だった。

「勝手になさい」

メアリは浴室のドアを閉めた。

その途端、若草色をしていた蕾がアメシストのような紫色に輝きだした。

意地悪なメアリに干渉されず、漂白剤をかけるような意地悪もされなくなると喜んだのだ。これからは自分の思うままに根をどんどん伸ばし、この星を覆い尽くし全てを自分のものにする。紫のノライは、抑えていた欲望を解放した。

手始めにこの家の両隣にいるという二つのノライを排除しよう。今までは争わないように向こうの縄張りに入らないようにしていたが、これからはどんどんと進入して全ての水脈を自分のものなるように奪い取ろうと動き始めた。

手始めに、右隣の家に巣くっているノライの縄張りを奪取しよう。

人を捕食してすっかり逞しくなった紫ノライの太い根は、今まで争いたくなくて遠慮していた水脈に入り込んだ。すぐに部外者を排除しようと、右隣の家の排水溝から伸びている根が攻撃を仕掛けてきた。紫ノライの根を締めつけようと絡み、圧をかけて潰そうとする。しかし人を捕食したことで根に弾力がついた紫ノライは潰れて千切れること無く自分の体力を温存していた。

そして──反撃に出る。今度は紫ノライの根が相手の根に絡みつき締めつけた。弾力の無い相手の根には亀裂が入りそこから蓄えていた水分が流出して縮みながら枯れていった。紫ノライは勢いを増し、相手の縄張りを奪っていった。

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