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つぼみ ──ノライ──  作者: モリサキ日トミ


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15/21

必死に探すもの

夜、メアリは自宅の奥にある浴室にいた。

「最近は大人しくしてるのね」

大人三人が余裕で入れるぐらいの個人宅にしては大きな浴槽に浮かんでいる蕾に向かって話しかけた。

直径一メートル超の大きさに育っている蕾は静かに佇みメアリの言葉に無反応だった。

「本当に大人しい」

メアリが黄色味の強い黄土色の蕾に触れる。カサカサして張りがない。

「なんか老けたわね。いい水脈は見つけられたかしら」

最近メアリは浴槽に水を入れていない。蕾から伸びている白く太い根は水を求めて浴槽の底に穴を開けて家の基礎を突き破り地中深く水脈を探っている。やっと、一つ見つけられた。ただ、そこには先客が根を張り巡らせており、メアリのところからの根は、そこで水を吸収することはできず他の水脈を探すしかなかった。先客はメアリの右隣の空き家にいるノライの根だった。

再度新たな水脈を探す。最初に見つけたところから更に深く土の中を探る。だが、やっと見つけたそこも、メアリの左隣の空き家から根を伸ばすノライの縄張りだった。

更に新たな水脈を探すために固い地層をひたすら潜っていくしかない。土の中で水を吸収できていない根は必死に水を求める。浴室では浴槽に注げる蛇口に向かって根を伸ばしコックに巻きつき捻る。ジョボジョボと水が流れ落ち、やっと浴槽が水で満たされ始めた。ずっと水道の水は流れ浴槽に溜まりそうになるが、たくさんの太い根がどんどん吸収するのでそこから溢れ出ることはなかった。

その様子をしばらく見ていたメアリは

「ここから水を吸収したら、地下水脈が探せないじゃない」

と言って、コックを取り外した。もう、捻ることができず蛇口から水が落ちることがなくなった。

「早く水脈を見つけないとドライフラワーになっちゃうわよ。ああフラワーって言うよりルートだわね。ドライルート。大根だったら切り干しで美味しくいただけるのにね」

メアリは自分で言ったことにクックックと引きつるようにウケるわーと笑いながら浴室を出ていった。

大きな根っこは必死に地下深く新しい水脈を探した。

そして、ようやく左隣や右隣の巨大なノライが根を張っているのとは違う新たな水脈を探し当てた。それは、メアリの住む地域を流れる用水路に繋がっておらず、アヤカの住まいがある地域に伸びている水の流れだった。

誰にも邪魔されず根をおもいきり伸ばしたノライは何かを察知した。

微かなメスの匂いだ。この水の道筋を辿ればいつか見つけられる。ノライの本能がそう感じ取った。

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