1日目 昼
辺りを見渡す
目が覚めた場所は森?の中だった
日本でよく見る森林って感じな雰囲気
といっても俺がいるのは森のど真ん中というわけではなく
右手側は木々の終わりが見え
左手側は木々の終わりが見えない
比較的端の場所
何かを探すとしたら森から出る方が早いだろうな
この世界が分からない以上むやみな探索は命とりだし
森は生き物の宝庫な可能性が高い
なら出た方が生存率が上がるかもしれない
その場から動こうとするととヌメっとした感触が右足から伝わった
「ゔっ!!」
背筋がゾワゾワっとする感覚
あぁ部屋の中で何か分からない物を踏んだあの感覚に似てる
驚きすぎると声も出ないって本当だ
虫じゃありませんように
視線を下げれば何やら緑色の動くナニカ
気持ち悪い感覚の正体は
生きている?草のようなものだった
完全に見た目は太めの蔓
色も黄緑、良く見慣れている
違うのはこの蔓は自我のような物があるらしく動くところ
見間違えだと思いたいが目も口もない
動かなければ完璧にただの植物
木の根から伸びているような所を見ると
擬態した動物ってわけでもなさそうだ
まぁ、俺の足の形を確認するかのように這いずり回っているが
敵意のような物は今の所ない
いや植物の敵意なんて分からないけど
なんとなく雰囲気的な話だ
小鳥がさえずるような
木漏れ日の満ちた神秘的な森の中に
みずみずしいちょっと動く植物に敵意を向けるほど俺は神経質じゃない
もとよりそんな元気はない
まぁ蔓の方から俺に接触してくると思わなかったがな
右足を見るとちょうどくるぶしあたりに蔓が巻き付いている
ひとつ懸念点があるとすれば捕食系の植物か否か?
今の所はただ巻き付いているだけで締め付けのようなものは感じない
痺れも眩暈も毒物のような症状もない
「悪いが早めにここを出たいんだ」
物は試しに話しかけてみる
傍から見たら変人間違いなしだが、ここは異世界
前の常識は捨てたほうが良い
右足に絡まるそれを暫くじっと見つめて居ると話しが通じたのか
蔓が離れていった
相変わらずヌメッとした感覚に鳥肌が立つ
粘液みたいな不思議な感覚
好奇心に負け少しテカった右足に触れる
ネバネバしてるかと思ったけど、思ったより粘度はなく
匂いも、、ない
色も透明
流石に舐めれないが今のところは問題なし
そもそも本当に植物に話が通じたのかが気になるが
今がチャンスには変わりないだろう
「ありがとう」
一応言うことは聞いてくれたし
感謝は伝えておこう
気を取り直して木々の終わりが見える方へ歩く
動物や虫がいるんじゃないかと思ったがそうでもなさそうだ
ニョロニョロっと動く蔓にはまだ見慣れないが
邪魔するつもりはないらしい
体感10分ほど歩いただろうか
早くも森の終わりにたどり着いた
目の前に広がるのは見渡す限りの緑の地平線だ
芝生とまではいかないが
均等な長さで生えそろう草原が広がっている
こういうのが自然の雄大さっていうのかな
俺がもう少し涙もろかったら感動して涙を流していたかもそれない
日本では見ることの出来ない
写真待ったなしの絶景だ
「あっ、携帯」
そういえばスマホは
いつも持ち歩いてるスマホと小さめの財布
休日出かけるときは電子かカード決済だからバックを持ち歩くこともなかった
とりあえず上着のポケットとズボンのポケットを探ってみたが
まぁ無いな
見た目で膨らみがなかったから期待もしてなかったが
この景色を記録として残せないのは少し残念に思う
ところで当初の予定だった知的生命体探しだが、、
建物すら見当たらない
今一番危惧すべきなのは食糧問題とこの世界についての常識
誰かに聞いてどうにかできればと思ったが、、
そうも簡単にことは運ばないってことか
うーーーん、、
手詰まり感が半端ない
こういう時は焦らないのが大事だ
とりあえず異世界系小説を思い出してお決まりのテンプレを試しておこう
「ステータスオープン!」
・・・
うん、、まぁだろうな何も出てこない
てかこれめちゃくちゃ傍から見ても恥ずかしい奴だ
人がいなくて本当に良かった、本当に、、
「これからは小説ベースの発言は控えよう」
少しあたりを見渡す
うーん、日がちょっと落ちてきたか?
どうやらこの世界にも朝と夜が存在していそうだ
何の準備もなしに夜を迎えるのはまずいな
夜と言えばモンスター
夜と言えば極寒
夜関連でプラスに働くことなんて見たことが無い
苦肉の策を取るしかないか、、
「なぁ、手を貸してくれないか」
目の前でクネクネと動く蔓
結局これしかないのか
いつの間にか俺は引き返し蔓に話しかけていた
どこからみても俺変人確定だな