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パーティーに行ってみた――6

 一悶着あったのち、俺と蓮華は落ち着くためにホールの壁際に移動して、ドリンクを口にしていた。


 ちなみに金木親子は、パーティーの主催者にたしなめられて、やんわりと追い出されている。今回の一件で、後継ぎに不安ありと考え、金木工業との取引を()める企業が出てくるだろう。


 金木社長には申し訳ないけれど、ナンパ男にはざまあみろと言ってやりたいな。


 蓮華のものとセットで持ってきた炭酸水で喉を潤しながら、俺は、ふん、と鼻を鳴らす。


 息子が勝手にやらかしたことなので金木社長に罪はないのだが、こればかりはどうしようもない。ナンパ男を反面教師にして、俺も自分の行いには注意することにしよう。


 それはそうと、蓮華には一言謝らなければならないだろう。俺が置いていったせいで、ナンパ男に絡まれたのだから。


 眉を下げながら、俺は蓮華に謝る。


「すまない、蓮華。きみをひとりにしたせいで、不快な思いをさせた」

「いえいえ、そんなの気にしていませんよー♪」

「……なぜ笑顔?」


 どういうわけか、蓮華は満面の笑みを浮かべていた。ナンパ男に絡まれて機嫌を損ねていると思っていたので、俺は面食らってしまう。


 わけがわからず首を捻っていると、リラックスする猫みたいにふにっと目を細め、蓮華が答える。


「だって、秀次くんが助けてくれたんですもん」

「そりゃあ助けるだろ。素直じゃないことは否定できないけれど、薄情ではないんだよ、俺は」

「そうですね、秀次くんは優しいひとです。愛情たっぷりです。わたしのこと、『私の妻になる女性(ひと)』って言ってくれましたもんね」

「あ、あれは……それくらい言わないと、あの男が諦めるとは思えなかったからであって、それ以上の意味は……」

「『ひとの恋路を邪魔しているのはあなたなんですよ』」

「止めろ! 蒸し返すな! 真似をするな!」


 過剰なまでにキリッとした表情で、俺の声真似をしながら、先ほどナンパ男に言い放ったセリフを蓮華がリピートする。恥ずかしくてたまらない。きっと、俺の顔は火が出そうなくらい真っ赤になっていることだろう。


「別にきみのことが好きなわけじゃない! 俺たちの婚約を広めてくるように父さんから頼まれていたこともあって、うっかり口をついて出てしまっただけだ!」

「はいはい。ツンデレツンデレ」

「ツンデレじゃない! 何度言ったらわかるんだ!」


 山吹秀次ツンデレ説をムキになって否定するが、蓮華はまともに取り合ってくれない。右から左に聞き流して、ニコニコと笑うだけだ。


 頭が痛くなってきた。なぜ俺はあんなキザなセリフを口走ってしまったんだ……。


 頭をガシガシと()きむしりながら後悔していると、花びらみたいな蓮華の唇が、俺の耳元に寄せられた。


「助けてくれてありがとうございます、わたしの旦那様」

「~~~~~~っ!!」


 蓮華のささやきがシルクのように耳をくすぐり、脳に電流を走らせる。極上のASMRに背筋がゾクゾクし、脳内麻薬でも分泌されたのか、歓喜と興奮が胸を満たす。


 俺はもう、本当にダメかもしれないな……。


 ドキドキと胸が高鳴るなか、俺は悪あがきみたいに溜息をついた。

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