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Day21 騒動の翌日(お題:朝顔)

 処分場の爆発騒動の翌朝、眠れなかった私はアパート近くにある公園を散歩していた。


 私が確認しようとしていた魔法道具は、爆発の衝撃で壊れていた。作った人は渾身の出来だと言っていたが、見るも無惨な状況だった。

 処分場の人間が作り手だったが、もはやこんな状況では、魔法道具の認可を取るために、いろいろと動いていたことなど、忘れてしまうだろう。

 局に戻り、事情を聞かされている間に、対策本部が作られていた。様々な課の人間たちが集まり、情報収集をし、原因を究明していた。

 魔法道具関係の一大事である。局としては助けられる命を助けられるよう、そして悲劇を繰り返さないように、奔走していた。

 下っ端の私が出る間もなく、夜には帰された。明日からも問い合わせがくるだろうし、爆発が起きたからといって、認可を出したい人が減るわけでもない。翌日以降に備えるために、早く帰されたようだ。


 だが、興奮と不安が入り交じった状態では、まともに寝れるわけがなかった。

 外の空気を吸おうと思い、公園内をぶらぶらと歩いていく。こうして何気なくこの公園を歩くのは初めてかもしれない。

 奥の方まで歩いていくと、古びた木造の建物を見つけた。その脇に落ち着いた色の赤や紫色の花がいくつも咲いていた。ツタが近くにあった棒に絡まりながら、上へと伸びている。

 その建物の近くにあるベンチで、グレンさんがぼんやりとした表情で座っていた。先輩の顔がこちらに向けられる。私と視線が合うと、目を軽く見開かれた。

 一瞬及び腰になるが、先輩が拱いてきたので、躊躇いながらも近づいた。

「お、おはようございます……」

「おはよう。朝から早いな」

「グレンさんこそ、早くないですか? 昨日、夜遅くまで局にいたんですよね」

 道具認可課の情報収集役の一人として引っ張られ、私が帰るときも忙しく動き回っていた。

 先輩は軽くあくびをしていた。そして口元をとっさに抑える。

「まあな。ただ、よく寝れなくてな。今日は早めに上がらせてもらう。ケイトも眠れなかったのか?」

「私もお恥ずかしながら、眠れませんでした」

「仕方ないだろう。あんな光景を見たら、誰だって記憶にこびりつく」

 グレンさんははあっと息を吐き出した。視線を横にある、あの花に目を向けた。

「あの花、朝顔っていうらしい。東洋の花で、朝しか咲かない花らしい」

「そうだったんですか。どうりで見たことがない花だと思いました。誰かが育てているのですか?」

 グレンさんは首を軽く傾げた。

「見かけたことはないが、棒とかあるところから、気にかけている人間はいるだろう。朝顔は意外と強い花だから、多少放置していても、成長するらしい」

「そうなんですか。可愛い花ですね。早起きして、少し得した気分です」

 表情を緩ませると、グレンさんも口元に若干笑みを浮かべた。それから先輩は逡巡した後に、頭をかきながら、質問してきた。

「なあ、十日後の夜、暇か?」

「休日の日ですか? いえ、今のところ、予定はありません」

「なら、少し出かけないか? 俺も今の仕事をどうにか片づけて、時間を作るから」

 突然の誘いに目を瞬かせる。グレンさんはあまり人と積極的に出かけるということをしない人だ。珍しい。

「いいですけど、どこに行く予定ですか?」

「気分転換になる場所だな」

 不敵な笑みを浮かべられる。先輩の表情を見て、少しドキッとしてしまった。

 


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