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Day1 止まない雨(お題:傘)

 雨が絶え間なく降り続いている。

 いつ止むかもわからない雨が、私の日常を壊していく――。


 恵みの雨になるはずだった。

 ここ数ヶ月、まともに雨が降らなかった。だから雨降らしの魔法道具を使って、人為的に雨を降らそうとした。

 だが、道具は暴走し、普通の人間では止められなくなってしまった。

 既に二週間近く、本降りの雨が降り続いている。ようやく明日、道具の暴走を止められる魔法使いが来るから、もう少しの辛抱だと言われ続けているが――。


 町外れにある、数週間前はカラカラだった畑が流されていく。その近くには、一生懸命花を植えた花壇もあった。

 しかし、それらはすべて水の下。ここで過ごした楽しい日々が消えていくようだった。


 私は雨に濡れながら、その光景を呆然と眺める。全身ずぶ濡れだが、構わなかった。

 突然、雨が止まった。目を瞬かせて、視線を上げると、茶色の傘が私の頭上を覆っていた。傘の持ち主を見ると、二十歳前後の青年が立っている。彼の視線の先も、私の方向と同じだった。

「既に事が起きてしまったら、あとはそれを止めるしかない」

「……そうですね。明日には腕のいい魔法使いが来るらしいので、その人が止めてくれるはずです」

 起きてしまったことは仕方ない。そう思いたいが、まだ十三歳の私には、大人たちのようにその割り切り方はできなかった。


 なぜ、あの魔法道具を使ってしまったのか。

 なぜ、暴走を止められる人物を傍にいさせなかったのか――。

 頭の中で、同じ疑問が何度も繰り返される。


 顔がうつむいてきたところで、青年の手が私の肩に触れた。

「こういう欠陥があるかもしれない魔法道具を世に出してしまったのは、認可を出している俺たちのせいでもある。すまない」

 謝られても既に遅い。

 私は口をつぐんで、顔を背ける。

「……だから俺は認可を出している人間たちも、もっとしっかりしないと思っている。世に危険な魔法道具を出さないために」

 淡々と発していたお兄さんの声音に力が帯びてくる。顔をお兄さんに向けると、傘を力強く握っているのが見えた。

 お兄さんも悔しがっている……?

 お兄さんは空いている手で、私の肩を叩いた。

「俺はこんな悲劇を繰り返さないよう、さらに道具の認可の審査を厳しくする。そして、君のような人を増やさないようにする」

 そう言い切った青年は、傘を私の手に握らせると、雨の中を歩いていった。

 少しの間ぼうっとしていたが、すぐに我に戻って、お兄さんを追いかけようとした。

 だが、ちょうど雨足が強くなってしまい、視界が悪くなってしまった。

 お兄さんは走って、その場を離れていく。ちらりと見た目は、決意に満ちあふれたもののようだった。


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