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AI百景  作者: 古数母守
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8.無人の街

 路線バスに乗る。私の他に乗客は一人もいない。乗客だけでなく運転手もいない。そのバスが民家もまばらな道をゆっくり進んでいる。赤字の路線バスをなんとかしなくてはいけないということで無人化されることになったと聞いた。自動運転技術が進歩したおかげで廃止されずに済んだ。技術革新に感謝した方が良いかもしれない。この街では無人化が少しずつ進んで来た。無人のATM、無人の販売所、無人のコンビニ。初めはレジ業務を無人化していただけで、防犯の関係からなのか一人くらいは店員が残っていたが、今ではそれも無人化された。コインランドリー、アパレルショップ、本屋。いつの間にか、どの店にも人はいなくなり、人型のアンドロイドが見張りの役目を果たすようになった。アンドロイドは時々、外に出てじっとしている。太陽光を浴びて充電しているのかもしれない。久しぶりに人間に会えたと思って話しかけてみたら、アンドロイドだったということが度々あった。アンドロイドは私の声に反応して、振り向きざまにゆっくりと会釈する。人間の自然な仕草をプログラムされているのだろうか? ちょっと不気味な感じがした。もうずっと誰にも会っていない。いつからだろう? これは本当に過疎のせいなのだろうか? もしかしたら自分は人類最後の生き残りかもしれない。昔、読んだサバイバル漫画のことを思い出しながらそんなことを考えていた。すっかり世界から取り残されてしまったような気がした。だがそもそも世界は残っているのだろうか? 私の知らないところで最終戦争が起こってしまって、もう誰もいないということさえあり得るような気がした。そして私にそのことを確認する手段は何もないのだと思った。無人のバスはいつも定刻通りにやって来る。無人バスの運行を妨げるものは何もないようだった。きっと指示を出している人間がいるからバスは走っているのだと思った。無人のコンビニも誰かの指示があってアンドロイドが常駐しているはずだと思った。でも無人バスもアンドロイドも、主のいない空中都市を守り続けているロボットの兵士のように一度受けた指示をずっと忠実に守っているだけかもしれなかった。無人バスの運転計画を立てた人もずっと前にいなくなってしまったかもしれなかった。だんだんと不安になって来た。私一人が生き残っているなんてことがあるのだろうかと思った。もしかしたら私もアンドロイドではないかという気がして来た。ここは無人の街だ。人間は一人もいないのだから。

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