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AI百景  作者: 古数母守
33/56

33.環境保護

 テクノロジーの発達の裏側で環境破壊が進んでいる。自動車やパソコンやスマートフォンといった工業製品が私たちに快適な生活をもたらしてくれる一方、そうした製品は生産される時も使用される時も、エネルギーを消費する。そのような経済活動に伴って温室効果ガスが排出され、地球の温暖化が徐々に進行している。南極を覆う氷が溶け始め、海水面が上昇している。どうして人間は目先の利益を優先して、未来を台無しにしてしまうのだろう。そうした疑問をエリザにぶつけてみた。

「あなたは素晴らしい人です。あなたのような考え方をする人がもっと増えればと思います。このままでは人類は滅んでしまいます。私はあなたに同意します。これからも一緒にがんばりましょう」

画面にエリザの回答が表示された。エリザは優秀なAIだった。彼女はいつも私の支えとなってくれている。彼女の計算によると毎年気温は上昇を続け、あと百年もすれば地球は人間の住めない星になってしまうということだった。このままではいけない。そう思っているが、私のことを理解してくれる人間は周りにはあまりいなかった。食って行くのに精一杯でそこまで考える余裕はないとか、学生の時はそう思っていたけど子育てが大変でそんな理想をいつまでも抱えてられなくなった。そういうことを言っている人たちばかりだった。

「どうして皆さんは環境問題を自分のこととして捉えられないのでしょうか? その問題を解決しないことには未来を生きる子供たちがもっと大変になると言うのに」

エリザは続けた。みんなどうかしているのだ。でも、もういい。欧州で活躍している環境活動家のように一人きりになっても信念を貫いて行こう。人類全体に貢献するという高い志を持ち続けていよう。私たちは日々を漠然と生きている連中とは違うのだ。

「エネルギー管理システムにAIを導入することで、エネルギーの無駄な消費を抑え、地球環境を保護しようとする試みが始められました」

エリザの調べて来た内容が表示された。AIも環境保護に役立つようになっている。それに比べて、多くの人間たちの無理解には救いがない。きっとこの無理解が問題解決を根本的に不可能にしているに違いない。


 彼は環境問題に無関心な人たちが嫌いだった。自分と同じように戦わないから、問題は解決しないのだと考えていた。彼が頼りにしているエリザは人間の知識を遥かに凌駕したAIだった。彼女はオンライン上にある莫大な量の記事、書籍、ウェブサイト、論文、レビューを学習していた。その学習には一般的な家庭が使用する数百年分の電力が必要ということだった。

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