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AI百景  作者: 古数母守
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17.ロボットに適した職場

 巨大な倉庫の中を駆けずり回っている。携帯端末に指示された場所に行き、商品をピックアップする。完了するとすぐに次の商品とその場所、その作業に費やして良い所要時間が表示される。USBメモリ、3D-24H-17、期限まで35秒。急いで指示された場所に向かう。そんなことをずっと繰り返している。非人間的な仕事に違いない。私たちはシステムの指示した通りに動くロボットのようなものなのだ。文句を言ってはいけない。ここを辞めさせられたら、暮らしていけなくなる。代わりはいくらでもいる。そのことはよく承知しているが、やはり仕事はキツい。特に夏の作業は過酷だ。脱水症状や熱中症で倒れる者が後を絶たない。もちろん空調なんてない。こんな巨大な倉庫を快適な温度にしようと思ったら、とてつもない電気代がかかるだろう。雇い主が私たちのためにそんなことをするはずがない。この国の労働者の半数は似たような立場にある。時々、労働環境について聞いて来る奴がいる。潜入した雑誌の記者か何かだろう。関わって目を付けられるのも困る。そういう連中には帰る場所がきちんと用意されている。そして過酷な環境で働く私たちのことを飯のタネにしている。


「明日からロボットの稼働テストを行うことになった。倉庫の一部をロボットが動くので邪魔をしないように」

いつものように出勤すると突然、リーダーにそんなことを言われた。

「ロボットは時間に正確だ。遅刻もしない。指定された時間で正確に商品をピックアップする。雑誌の連中はロボットのような非人間的な扱いをしているなんて記事に書いているが、ここはまさにロボットに適した職場に違いない」

そんなことを言っているのが聞こえた。このままではロボットに仕事を奪われてしまうのだろうか? そんな不安がよぎった。私はロボットに負けないように必死になって働いた。そしてまた、あの過酷な夏が巡って来た。

「暑い。死にそうだ」

私はふらふらになって働いていた。脱水症状と熱中症による脱落者が相次いでいた。でも、がんばらないとロボットに仕事を奪われてしまう。そう思って、私はただひたすら商品をピックアップしていた。

「どうなっているんだ?」

ロボットが稼働しているエリアの近くにピックアップに行った時、リーダーの怒鳴り声が聞こえた。本部から技師が呼び寄せられているようだった。

「倉庫内の温度でロボットを稼働させるのは無理です。制御基板が持ちません」

どうやら暑さのためにロボットが停止してしまったようだった。技師はその原因をリーダーに説明しているようだった。

「ロボットの導入で効率が下がったなんてことになったら、私が責任を追及されてしまう。なんとかならないのか?」

「倉庫内の温度を下げてください。他に方法はありません」

それからしばらくして倉庫に空調設備が導入された。暑さが少しでも緩和されて私たちはロボットにとても感謝していた。

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