きみとぼく
きみと知り合えたのはいつの日だったのか
ピンクの色をした花びらが舞い散る日だったのか
深緑の木々が茂る日だったのか
光り輝く太陽に目を細めた暑い日だったのか
それとも稲穂の香りが漂う日だったのか
凛とした空気が澄んだ寒空の日だったのか
今となっては知る由もない
「大丈夫だよ」
満月と無数の星たちが輝いている夜空の下でぼくの横を歩いているきみは、明るい声でそう呟いた。
「泣きたかったら、泣けばいいのに」
時折り街灯の光で映し出されたきみの横顔は悲しみに包まれていた。
その顔を見ているのが辛かった。
「泣けたらいいのにね」
チラリと横目にきみはぼくに、困ったように微笑んだ。
ぼくがきみの立場だったとき、そう笑っていられるだろうか。
ぼくはきみのように笑っていられる自信はない。
きみはいつも一人で走っていた。
今いる距離は近いけど、それでもきみは、きみ自身の中で走っている。
ぼくはそんなきみに追いつこうとして必死に走るけど、近づいたと思った時は既に遠ざかっている。
「なにをそんなに慌てているんだい」
「もっと、、、もっとね、頑張らなくてはいけないの」
きみは何かを得ようと空に向かって手を伸ばす。
いつもそうだ。
きみは。
何もかもきみは一人で抱え込む。
何もかもきみは一人で実行する。
決して助けを必要としない。
いや、助けは必要としている。
間接的な助けを…
「もっと、もっと頼ってくれてもいいのに」
「なに?なんに言った?」
「えっ、いや、なんでもないよ」
無意識に呟いていたようだ。
「ふふふ、変なやつ」
ふっと、嬉しそうな顔が見えた。
ドキリっとした。
数年間一緒にいたぼくが初めてみる顔だった。
僕はこれほど、、、
この時間が永遠に止まってくれればいいと思った。
終
お読みいただきありがとうございました。