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衝突






 (コイツ……まぁまぁ強いな)





 リベルの前に立つその男は、爽やかな顔立ちにスラリとした華奢な身体だが、その身体には確かな筋肉を秘めていた。芯の強そうな身体で、綺麗に背筋を伸ばして立っている



 リベルとアルフレッドはしばらくお互いを品定めするかの様に見つめていたが、アルフレッドが沈黙を破った





 

 「それでどうだい、リベル君。私がアーグの代わりに相手になろうか?」




 『お前……このデカい奴よりは随分強いな』


 


 「まぁ、アーグも十分強いがAランクだからね。私はSランクだ」





 ジッとアルフレッドを見つめていたリベルが立ち上がり問いかけると、アルフレッドは爽やかな笑顔のまま淡々と答えている


 Sランク冒険者だという時点で、アーグよりも実力は断然上なのだ






 (Sランク?……そう言えばなんかランクとかの説明で、Sランクからは次元が違うとか言ってたな。コイツがそうか)





 『ハッ、いいぞ。お前は少し面白そうだからな』





 リベルはそう言って、足元でアルフレッドを見つめ、呆けていたゲルダを壁まで蹴り飛ばした


 ゲルダは仲間と同じ様に壁にぶつかり気絶する。リベルは既にアルフレッドの方へ意識が向いていたので、ゲルダなどどうでも良くなっていた



 リベルにとってゲルダがそんな存在なのだと言うことなのだが、それで命が助かったゲルダからすれば幸運なことだろう







 『これでスペースができたな。さぁ、やるか』



 「いや、ここで戦うのはやめた方がいいだろうね。そうだろ?アーグ」

 


 「あぁ」





 アルフレッドの判断は正しかった。何故ならもしここで二人が戦えば、ギルド内の被害は凄まじいものになってしまったいた


それを避けたいアーグの心情をアルフレッドは察知し、場所の移動を提案する


リベルは顔を顰めてめんどくさがったが、それでも提案を呑んでいた。アルフレッドがここで戦う気がない様子なのは、リベルも気付いていたからだ


 アーグが地下にある訓練場なら大丈夫だと言い、リベルは案内しろと、ただ一言だけ言い放っていた

 




 

 「レイン!俺は二人と一緒に行ってくるから、ゲルダ達のことは任せたぞ!」



 「はい!」



 「それじゃあついてきてくれ」





 ゲルダ達を気にしている時間などないアーグは、レインに指示を出してから二人を連れて歩き出した


 アーグの後ろに、アルフレッドとリベルが並ぶ形で歩いていた。そこに会話など一切なく、ただアルフレッドがリベルを見ていただけだった



 ——少し歩き到着した三人は、訓練場の中心へと向かっていく






 「高ランク冒険者が使うことも考慮してあるここなら、ある程度の衝撃は大丈夫だろう」





 そこは何人もが同時に訓練出来そうな程広い、正方形型の場所だった。歩きながら広さを確認していたリベルも中心に着くと満足そうだ



 



『広くていいじゃねぇか。それじゃあやるか、Sランクとやらの力を見せてみろ』



 「分かった。その前にルールを決めようか」



 

 『ルール?そんなの、お前が耐えられずに死んだら終わりだろ』





 

 明らかに見下した様に笑うリベルに、アルフレッドは笑顔を崩さず返事をしていた。そして所持していた魔法の道具――魔法具から、ビンを一つ取り出して見せた






 「ハハ、それは怖いな。それじゃあこうしよ。ここにとても貴重な最上級回復薬(エリクサー)がある」




 

 この時アルフレッドが使った魔法具は、アイテムボックスを持っていない者でも、そのサイズ以上の物を収納出来る道具だった


 その性能だけにとても高価で、収納サイズの大きい物程値段は格段に跳ね上がる


 しかしSランクのアルフレッドからすれば、値段など然程関係のないことだろう






 「これは部位欠損などの致命傷も治るんだ。どちらかが致命傷を受けたら終わり、ということでどうかな?」




 『なんでも良い。どうせ使うのはお前だろうからな』





 最上級回復薬(エリクサー)はとても貴重なアイテムだ。貴重性と、部位の欠損まで治療するその性能から物凄い価値がある物で、アルフレッドも一本しか所持していないような代物だった


 



 

 『よし。ならどこからでもかかってこい』



 

 「さっきの剣を出さなくていいのかい?」


 


 『あぁ、それはお前次第だな』







 そう言って見下すようにニヤけるリベルは、構えもせずに仁王立(におうだ)ちをしている


 それは明らかにアルフレッドが格下だという態度だったが、アルフレッドは動じない






 「アハハ、それじゃあ頑張るとするよ。——アーグ、開始の合図を頼む」




 「あぁ、任せろ」






 アルフレッドは離れた位置に移動していたアーグに合図を任せ、腰の剣を抜き構えた。リベルとアルフレッドは三、四メートル程離れており、それは剣の間合いにしては遠い距離だった


 




 「行くぞ?それじゃあ——始め!!」



 

 ヒュンッ――

  



 『!!』



 




 アーグの合図が言い終わったほんの一瞬で、リベルは腕から少し出血していた



 理由は単純。アルフレッドがアーグの合図と同時に、凄まじいスピードでリベルに斬りかかっただけだ。リベルは仁王立(におうだ)ちしていた自身腕を斬り落とそうと向かってきた剣を躱しきれず、剣は僅かにリベルの腕を(かす)っていたのだ






 『ふーん、思ったより速かったな。それに……中々いい剣じゃないか』




 「これは私の相棒だよ。それに、お互いまだまだ準備運動だろ?」




 『ハハッ!思ったより楽しめそうだな!!』





 リベルは想定以上のスピードを見せたアルフレッドに気持ちが高揚していた。久しぶりの楽しませてくれる相手に満足していたのだ


 そしてそんなリベルの言葉を合図に、戦闘は更に激しさを増して行った——

 




*****






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