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ドアを閉めたイザヤは、ニヤリと笑う。
(脈あり、だな。)
部屋から遠ざかりながら、イザヤは仄かに光りだす。その光りから、女性が生まれ、片や男性が現れる。
『サ-シャを』
『承知』
それぞれが、それぞれの仕事へと動き出す。
ある者は、サ-シャのもとに侍女として、ある者は厨房へと動き出す。そしてイザヤのもとには翁がついて行く。
『イザヤ様、我が王よ。あの娘が王の心を射止めたのですか。』
イザヤは翁の方へ視線を送る。
『そうだ。サ-シャだけが我が心を動かす。』
『それはようございました。我が悲願である、王の御子を抱けますのですか。』
苦笑交じりに言う。
『それはまだ分からん。サ-シャ次第だな。』
『そんな弱気ではなりません。奪ってしまえば良いのです。』
翁に向けられていた視線を鋭く眇め、声が低くなる。
『我が欲しいのは、サ-シャの心だ。体だけではない。』
『失礼しました。そうですか、そうですか。』
翁が、嬉しそうに笑う。