暖かいですわ。
そう思いながら、私は目を覚ました。
えっ。
何此処。やたらと豪華な天蓋付きベッドの中だった。
さらに、自分の名前どころか家族の事さえ思い出せない。パニックになりそうになり、はっと横を見る。
ベッドの横には、半透明の美麗な人物が静かに立っていた。美形の無表情は何気に怖い。
ちょっと怖い。が、聞ける相手?はこの方だけなようなので質問してみる。
「どなた様でしょうか、出来ましたら、私の名前なども教えてくださいませ。」
私の質問に、少し微笑み頷いた。
『私は其方の守護精霊だ。そして其方はサ-シャ・ベクトルだ。公爵家の次女で姉のプラ-ノに階段から落とされたのだ。』
驚いて、目を見開く。
「私は姉に嫌われていたのですか?」
『プラ-ノは、サ-シャに嫉妬心を燃やしていたからな。私の事も関係あるだろうが……。サ-シャ、出来れば私の事は、イザヤと呼んでくれ。』
ベッドの端に座り、イザヤはサ-シャをのぞき込む。
「分かりましたわ、イザヤ様。」
後少しで、唇を奪われそうで、反射的に答えていた。
『ところで、痛いとこはないか?怪我は大体治したが、服の中は見ていない。……………安心するといい。』
まるで残念な様子で言う。そんな様子に少し笑うと、イザヤはサ-シャに手を伸ばす。
伸ばした青みがかった腰まで伸ばした髪を一房取ると、優しい表情を浮かべ口吻る。
サ-シャはその仕草に、頬を染めるてしまう。
(恥ずかしいですわ。)
「と、処で私の家族は何処に?」
首をかしげる。それにイザヤは眉をピクリと動かす。
『もう、何処にもいない。』
「えっ、」
固まる私に、イザヤはクスクス笑う。
『冗談だ。此処は我が屋敷だ。安んじて休め、サ-シャ。』
ベッドから離れサ-シャを見つめる。
『躰が弱っている、いきなり治癒力を高め怪我を治した為だ。まだ一人では立てまい。我が配下の者をすぐに手配する。大丈夫だ。』
サ-シャの瞳に、イザヤが魅惑的に映る。
「わ、分かりましたわ。宜しくお願しますわ。」
サ-シャの答えに、イザヤが頷くと、背を向け部屋を後にする。
(嫌ですわ。何なのかしら?胸がドキドキする。)