研究No.5「価値」
私は戦争以上に大切なことを成し遂げようとしている。自分の家に帰ることだ。毒の素材も手に入れ、兵士も眠らせた。そして、今、私の為の捜索願いが出されている。
まったく…迷子になったとでも言うくらい壮大にだ。
自分で勝手に帰れるというのに…
やれやれ…基地は何をしたいのか…
そういえば、今日は私のパーティーがあると聞いていたな。あれは冗談だろう。戦闘後、直ぐに本部へ帰還して言われたことだが、気を緩めるためだろうと思っている。万が一、本当だとしても大丈夫だろう。主役抜きのパーティーでも、パーティーはパーティーだろう。
さてさて、そんなことを考えている暇は無い。今は自分の家にバレないようにどうやって帰るかを考えなくては…
この基地は外部から魔力を検知すると警報がなる。それなら、魔力を消したいところだが、兵士に見つかったら何も出来ずに終わる。だから、私が出す答えはこれだ。
「賄賂」
世の中は金で全て解決される。金という一見ただの金の塊が、人の命を奪うまでの価値を持っている。世の中で作り出された人工的な価値がここまでの自体を及ぼすなど、このシステムを作り出したやつはここまで考えたのだろうかな…?
兵士に賄賂を渡すとしても、どのくらいが良いのだろう?金の延べ棒くらいの、価値でいいのだろうか…?
私は分からないことは嫌いだ。完璧を求めるすべに不必要なことは分からないということだ。実験にしても、戦いにしても、分からないということは、負けを認めることと同等なのだ。だとしても、これは正解だったのだろうか?
私はコーヒーを飲む。
金というものは、厄介なものだ。人が求める価値は、人の心を読まなくてはならない。しかし、そんなこと人外でない限り、出来ないだろう。一応、魔法は使えるが、そんな無駄なことに使ってどうする?まぁまぁ、私は、自分の部屋に戻れたのだからもう忘れよう。
私は白衣に着替え、実験を始めた。
「本部に連絡する。門番が何者かにやられました。」
「なんだと!?ここに侵入者が入ったとでも言うのか!」
「現状わかりません。もしかしたら、現在行方不明のヒガン兵長の可能性もあります。」
「そうだとしても、門番を倒す理由がどこにある?ヒガン兵長が狂人だとしても味方同士でやり合う必要はあるのか?」
「そうですよね。けど、怪我を見るあたり、気絶させる程度です。そこまで深くはありません。」
「気絶させる程度だとしてもだ…ここはヒガン兵長に確認を取るべきだ。直ちにヒガン兵長との確認を頼む。」
「しかし、あの人はどこに」
「ヒガン兵長の部屋に行ってみろ。」
「了解です。」
ドアをノックする音が聞こえた。
「……なんでしょう?」
やはり…私はお金の価値が分からない。