研究No.1「昇級」
「んっ…」ガサッ…
私は眠りから目覚めたがあまり疲れはとれていないことを悟る。
「筋肉痛が酷いな…」
誰もいない自分だけの部屋で独り言を語る。
コーヒーを1杯飲む。
眠気を覚ますのには友好的な手段だ。
「昨日は研究をするつもりだったのに急に戦闘への参加を要求されるとは本当に憎たらしい。なんて憎たらしいのだろう」
意味も無く語り続ける文句には敵も味方も関係無い自分の語りたいように語るだけだったのだ。
「こんなことを語っては、研究は進まない」
「さて、始めようとするか…」
コンコン
「誰でしょうか?」
「ヒガン兵長、わたくしラブ一等兵と申します」
ヒガン…あまり呼ばれたくない名前であるが仕方ないだろう。親とは時に間違ったことを正しいように言い聞かせてくる。ヒガンは可愛いお花の名前だと…何を言ってるよく調べもしないで言ってる事だ。死者の花でもあると言うのに…
「要件は?」
「オール大佐がお呼びです」
これはこれは…オール大佐と来たのか
私の研究成果が伝わったのであろう。皮膚に触れるだけで視力を無くす毒…私としては地味ではあるが戦闘面としてはとても役に立つと評価した。だが、視力だけでは足りない。感覚を全て奪わなければ毒とは言えない。
「私は研究で忙しいと伝えておいてくれないか?」
「昇級の話だそうです」
「今から行く」
なんとなんと…昇級だと…とても嬉しいことではないかやはり、いい上司はいい仕事をしてくれるものだ。
私は軍服の上に来ていた白衣を脱ぎドアノブに手をかけた。
「やぁ、ヒガン兵長」
「昇級の話と聞いてきました。本当なのでしょうか?」
「本当だ。軍装として任命する」
「ところで大佐、私はどういった理由で昇級なのでしょうか?」
「戦闘面だ。1人であの人数をやりきるのは過去に1人も見たことは無い」
やはりか…やはりか!研究での昇級を期待した私は馬鹿だった…
たまたま相手の視力を奪ったから殺すことが出来たというのに…
「大佐。私は戦闘面よりも研究の方で評価して欲しいのです。戦闘においてとても成果を成し遂げると思いませんか?敵の視力を奪うのですよ?」
「兵長。私としては研究を中心に評価はしたいところだ。しかし、視界を奪うだけでは弱すぎはしないか?あまりにも地味というか…」
あーあ、地味とか言われた。今から研究した毒をぶっかけてやろうか?
「そうですか…大佐、毒というものは地味ではありません。1度触れただけで死へ誘う、まさに死への切符です。私は毒に侵食されて恐怖で震える敵の顔見るととても興奮します」
ヒガンは口角があがる。
「希望なんて1つも無く、絶望だけしか期待することができる、あの状況。とても笑えませんか?」
ヒガンは笑う。
「兵長、あなたは凄いお方だ。しかし、時々狂気でもある。研究の途中であったのだろう?早く戻りたまえ」
「ありがとうございます。大佐」
私は研究のためにさっさと部屋を出た。