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第3話 夢物語を編んでいく02



 それから数分後、暇を持て余していたキサキがあくびを一つした直後だった。


「ふぁ、……ん?」


 彼の視界に変化が起きた。


 キサキ達の現在位置は自分が通う学校の裏手。

 そこのほら穴の入口だ。


 内部には三十人ほどの少年少女がいる。

 皆一様に外へと視線をなげていた。


 それはキサキも同様。


 なぜなら、遠くから人が近づいてくる気配がしたからだ。


 キサキは目にした事実を口にした。


「ありゃあ、ミシバだな」


 声の主は少女。十代前半、幼さを残す顔立ちで髪と瞳は黒い。


「きゃあああああ――――! だーれーかー、助けてよぅー!」


 悲鳴を上げつつこちらに向かってくるその主は、ウサギを思わせる風貌の少女だった。瞳は大きくて赤く、白いストレートの髪は走る動きに合わせて飛び回っている。

 体格は平均よりやや小柄で、そんな少女が全力疾走していると、見ている側によりいっそう必死さが伝わってくる。


「お、おとり……じゅうぶ……んでしょ、はやく、助け……はぅっ!!」


 走り続けていたミシバは、そのままこちらへたどりつく事がなかった。結構な存在感を放つ足元の石に気付く事なく己の足を引っかけ、その場で躓き転倒したからだ。


「―――キュルルルルッ!」


 空転する歯車のような鳴き声を上げながら少女の後ろから異形の化物が追いかけてきていた。


 黒い体表と体毛をした四足の獣で、首には三つの頭がついている。

 それは自然界には存在しえない生き物……魔物だ。


 キサキが先程転倒した少女を見つめ、そろそろ動くか、と思った瞬間……そのミシバは背中に担いでいた砲塔を構えて、後ろに標準。トリガーを引いた。


「ううっ、いい加減にしろ、こんのクソ魔物ぉ――っ!!」


 砲身のまえで一瞬光がまたたいた後、野太い光線が発せられた。


 魔物は蒸発する。


 キサキは呆れて、天を仰いだ。


「やっつけちまった……。囮が敵をやっつけてどーすんだ」


 だが敵はそれだけではなかった。もう一体いた。


 キサキはとりあえず、こちらに合流するはずだった少女へと声をかけた。


「ミシバー、大丈夫かー?」

「のんきに言ってないで、早く……助けようよぉ」

「いや、だってもうちょっとこっち来てくんねぇと、打ち合わせ通りにはいかないだろ」

「キサキのどSぅ――っ」


 襲い掛かるもう一体へと標準を定めミシバだが、


「あわわわわっ、ちっ、近い近いっ!」


 接近してきた敵を見て抱いたらしい己の感情……恐怖と緊張から、武器の射線がぶれすぎだった。


 かなりの危機だった。


 しかし、


「おりゃあああああっ」


 そこを飛び込んできた、一人の少女が大剣でぶった切る。


 カオル、キサラギ。


 肩口までの長さのある真紅の髪を揺らし、野生動物のような身のこなしでをする少女だった。


 強い意志の光を、赤い瞳に宿していた。


 彼女がミシバを助けたのだった。


「大丈夫か? ミシバ」

「うっ、うん。ありがとうーっ! カオルちゃん!」



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